2 灯、見えども遠く/淀みない愚者

 “月宮”。

 皇族の遠縁。武門として、代々武勇を馳せた家系。


 その名前を重荷に思ったことは、一鉄はなかった。疎んだこともなかった。


 すり寄ってくる人間は疎ましかったが、それはそれでそういうモノだと納得していた。


 傍で思われているほどの権力は月宮の家名にはない、と、少し話せばすり寄ってくる者が気付く、と言うこともあるだろう。


 徹頭徹尾武人、なのだ。少なくとも父はそうだった。


 確かに皇族に知り合いはいる。いや、今となっては居た、になるのかもしれないが、とにかくそれは家名と言うより個人で武勇を馳せた末、戦友として知り合いになる、という事がほとんどだ。信頼関係はある。軍人として、父個人の権力はある。だがそれは息子である一鉄に自動的に引き継がれる類のモノではない。


 欲しくば己で為せ、だそうだ。父がそう言っていて、あるいはその父もそう父に言っていたのか。結果的に受け疲れては居たのかもしれないが、ただ奔放なだけの二世にそのまま権力が来るほど甘くはない。


 日が昇った森の中、歩きながら一鉄がそんなことを考えたのは……煩かったからだ。


「そこで私は言ったんだよ。勇気を出して上伸したんだ。私は財務の人間でね、私が言わねばと使命に駆られたんだ。陛下、良い君主になろうとするのはわかりますが、けれど軍事費を拡充した上で更にとなると僭越ながら現実的ではありません、と。今の時点ですら、と。いや、我ながら良く言ったと思うよ……」


 助けた尾形がひたすら煩いのである。

 昨夜、一鉄は尾形を助けた。少なくとも、尾形からすればそう見えたのだろう。


 案の上と言うべきか、月宮の名前にも食いつき、このまま戦域を後にする、と言う言葉も信じ、邪魔にならないところに連れ出すことには成功した。


 だが、……この男、ひたすら話し続けている。しかも、内容は自慢話ばかりであり、いつの間にやら親し気に一鉄くん、とも呼び出している。


 ……どこまでも政治寄りの人間なのだろう。他人に取り入る事と虎の威を借ることに特化したような人間なのだろう。


 うんざりする。それ以外に感想のない道中だった。竜もあまり襲い掛かっては来ず、来ても少数。そして、その度に金切り声の悲鳴が聞こえ、終われば捲し立ててくる。


 一鉄は碌に返事をしなかったはずだが、それでも尾形は話し続けている。

 ………壊れているのかもしれない。極度の緊張下に置かれ続けた民間人の馴れの果て、なのかもしれない。


 だとしても、一鉄は気遣ってやろうとは思わなかった。こいつは何度も、味方の顔をして妨害してきた。


 この些細で致命的な負担を一鉄が負えば、それだけ鈴音たちの負担は減るはずだ。


 *


 夜中行軍。この戦域の初めに、一鉄が怯えて逃げ延びたその行動の前に、帝国軍は特任大佐殿の英断で通信含め設備群を後方に置いてきていた。


 一鉄のお使いの、最後の一つ。その目的地が、置いてきた通信設備だ。それを介して、帝国の本国に増援を要請する。


 大分前――一鉄からしてずいぶん前に、その方針を統真から聞いていたし、何度もやり直し始めた最初の方に、一鉄もその行動を取ろうかと考えて、鈴音と一緒に、位置を見つけるまでは行ったことがある。


 だが、その時は……設備を利用する前に鈴音が死んでしまった。その時点でその周回に見切りをつけてやり直すことを優先した。


 結局、それ以降、一鉄は増援を呼ぶ手を選択しなかった。何度もやり直せば目の前の脅威ばかりが大きく見えてくる。余裕がなかったし、状況を整理もせず碌に誰かに相談もしなかった。盤上の駒だけ、もっと言えば自分の力だけでどうにかしようとしていたのだ。


 だが、扇奈達と作戦会議をした結果、その行動は絶対に必須、と言う結論に至った。


 知性体を殺してそれで終わり、ではないのだ。その後の雑魚をどう処理するか、その準備もしておく必要がある。指揮棒タクトを握りたいならそこまで考えておけ、だそうだ。


 とにかく、全体の方針はこうだ。


 知性体は俺がやる。

 鈴音、扇奈、奏波、統真――生き残りはひたすら生き残ることに集中する。


 そして、その後、増援によってこの戦争に勝利を得る。


 その為に、煩い道連れを連れて、半日近く歩き。やがて、俺はその場所に辿り着いた。


 昼を少し過ぎた頃――。


 *


 開けた場所に、竜が3匹――。


 特に感想もなく見えた瞬間に3匹ともただのシミに変えて、そして一鉄はその場に立った。


 車両群、だ。長距離通信用の指揮車が中心に、FPAの簡易整備機能の付いたトレーラが2台。食料、弾薬、武装の入ったトレーラが何台か。兵員輸送用のトレーラに装甲車が幾つか。


 野営用の設備もどこかにあるはずだが、広げられた様子はない。


 そもそもここにきて最初に特任大佐殿が言い出したのが、“帝国の威信を亜人間に示せ”“夜中威圧的に行軍し遭遇せよ”だからだ。


 一体特任大佐殿の頭の中でどんな図式が成り立っていたのか理解に苦しむ。横にいるが、聞きたいとも思わない。どちらにせよいらつかされるだけだろう。


「ここは……。そうか、トレーラで逃げるんだね、一鉄くん」


 ピカピカのFPA、“羅漢”――尾形はそんな事を言っていた。無視したいところだが……逃げてくれるならそれでも構わないと思い直し、一鉄は言った。


「はい。……俺はついていけませんが、特任大佐殿はここにある車両で脱出してください指揮車両を持っていかれるのは困りますが、装甲車なら構いません」


 そして、一鉄は尾形へと振り返ることもなく、指揮車両へと歩んでいった。


「な……待ってくれ、一鉄くん。ついていけない、とはどう言う事だ?一緒に逃げるんじゃないのか?」

「護衛ならもう必要ないでしょう。道さえわかっていれば、竜より車の方が早い。護衛無しの通常の車両で交戦区域を横断した、と言う話も聞いた覚えがあります」


 ……噂話として、聞いたことがある。嘘か真か、要人を連れてそれをやった奴がいるとか。実際、車両の方が速いのは事実だし、理論上は武装無しでも問題なく通過できるはずだ。ただ、相当の度胸は必要になるだろうが。


 そして、特任大佐殿民間人にどの度胸を求めるのは……やはり、無理なのだろうか。


「……騙したのか?私を帝国に帰してくれるんじゃなかったのか?なあ、私には娘がいるんだ。美幸と言ってね。今度結婚するとかで……」

「想い人なら俺にもいますよ」

「なら――」

「この戦場に、です。オニの部隊に。俺は、ほっといて逃げようって気にはなりません。まだこの戦域でやることがあります。特任大佐殿は、どうか、退避を」


 ……こいつに個人的な恨みもある。鈴音を殺しているのだ。何度も。

 だから、これは、一鉄にとって……精一杯の譲歩だ。


 立ち尽くした尾形――“羅漢”を置いて、一鉄は指揮車両へと歩み寄った。

 姿を消せる知性体を警戒する。もう、癖だ。同時に、車両の状態もチェックする。


 綺麗なモノだ。竜に破壊されたり、はしていないらしい。……この戦域で一度もまともに運用していないから、竜と尾形にはこれの価値がわかっていないのかもしれない。


 とにかく、幸運だ。一鉄は再度周囲を警戒し……いない、、としか言えないがこれ以上ただ何もせず眺めていても仕方がないと、一鉄は“夜汰鴉”を脱いだ。


 当然の話だが、指揮車両はFPAを纏ったまま操作するようには出来ていない。


 その設備を十全に利用できる程、一鉄は指揮車の扱いに精通してはいないが、帝国本国と、いや、近隣の基地とでも連絡を取れればそれで良い。


 一鉄は、指揮車両に身を滑り込ませた。

 これで、お使いは済む。……その、はずだった。


 *


「………クソ!」


 指揮車両後方。運転席とは違う、設備類のコンソール。広域通信もできるはずのそれを、一鉄は、苛立ち紛れに殴りつけた。


 ………応答がないのだ。


 本国に連絡を取ろうといくら試みても、ノイズばかりでまるで返答がない。


 竜がジャミングでもしているのか。いや、そんな技術があるわけがない。そんなピンポイントの異能を持った3体目でもいるか?……流石にないだろう。


 指揮車両の不具合、だろうか。流石にその修理をする技能は一鉄にはない。

 ……どちらであれ、連絡が取れない、という事は事実だ。


 一鉄は額を抑えた。

 本国と連絡が取れない。増援が呼べない。すると、……部隊の、鈴音の生存率が下がる。生きてここを脱出できる可能性が低くなる。


 ………かといって、諦める訳にもいかない。

 考え込みながら、一鉄は指揮車両を降りて、すぐそばの“夜汰鴉”を再び纏おうとした。


 と、そこでだ。


「……動くな!」


 金切り声が聞こえてきた。この場に、一鉄の他に、人間は一人だ。

 視線を向けた先に“羅漢”があった。あるいは、そこらにあったトレーラから持ってきでもしたのだろうか。その手には、20ミリが握られていて、その銃口は一鉄に向けられている。


 そして、銃口を向けておきながら、金切り声は言うのだ。


「私を護衛しろ!私を護衛して、帝国まで逃がせ!これは命令だ!」


 論理が破綻していることに、自分で気づかないのだろうか?護衛させたいなら一鉄に傷を負わせられないはずだ。

 とにかく、こいつに関わっていられる状況じゃない。


 だが、銃口はぴったり一鉄に向いている。尾形が生身なら、今の一鉄ならどうとでも出来たが、FPAを纏っている狂人を相手に無駄にリスクを取る気になれない。


 苛立ち紛れに舌打ちし、一鉄はその場で、両手を上げた。

 途端、金切り声の……笑い声が響いてくる。


「フフフ、そうだ……それで良い。私の言うことを聞いていれば良いんだ。月宮だからと信用しようとした私がバカだったよ……君も所詮知能の足りない蛮人だったんだね」


 聞くに堪えない。……もう、擁護のしようもない。この男はどこまでも、他人を見下して、利己的にふるまうつもりらしい。


 いや、あるいは、自分が何をしているのかをまともに考える事すらもう、出来ないのか。


 苛立ちを噛み締め、一鉄は、努めて冷静に、言う。


「尾形、特任大尉。自分が何をしているかわかっているんですか?護衛させようという相手に銃を――」

「――黙れ!私を見下すなッ!」


 ネジがいくつも外れている――そうとしか思えない銃を持った民間人は、そう、憤りの金切り声を上げた。


 と思えばくぐもった、引き攣ったような笑い声が、灰色の鎧から聞こえてくる……。


「フ、フフフ……。月宮……名前だけの若造が……。私を見下すなッ!暗殺など出来ると思うな!暴いてやる……生き延びてやる……糾弾してやる……独裁者め……」


 ……なんの話だ?独裁者?暗殺?


 訳が分からないと眉を顰めた一鉄の前で、不意に、依然銃口を向け続けたまま、ついさっきまでの妙に親し気な口調で、話しかけてきた。


「……そうだ、一鉄くん。どうだい?救援は?呼びたかったんだろう?呼べたかい?……呼べなかっただろうッ!?」


 かと思えば、次の瞬間には、金切り声は怒号に切り替わる。


 完全に壊れている。錯乱しているらしい。……民間人が突然責任を押し付けられた上で碌に訓練もなく前線へ送られた。尾形の境遇を考えれば、錯乱するだけの条件は十分そろっているのだろう。


 かといって、銃口を向けられてまで同情する余地はない。

 どうにか宥めて、“夜汰鴉”を纏って……クソ。何もかも無駄な時間だ。


 苛立ちに歯噛みした一鉄を前に、尾方は、また言う。


「……一鉄くん。君は、不運だったね。スケープゴートなんだよ。我々は死ぬためにここに送り込まれたんだ。増援なんて来るわけがないだろう?懲罰部隊なんだよ……」

「懲罰、部隊……?」


 思わず、一鉄は呟いていた。

 懲罰部隊。何か罪を犯した人間で構成された部隊。だが、……帝国にいた頃に何かやらかした覚えは一鉄にはない。


 錯乱した男の妄想じゃないのか……。

 と、……人を見下すことが大好きな知識人様は、一鉄が理解できないことに、気を良くでもしたのか。笑って、ぺらぺらと、しゃべり出す。


「そう、懲罰部隊だよ……フフ。私もね。陛下に睨まれてね。ほかにもいるよ。2年前のクーデターに組みしたが、証拠が出なかった、陛下にとって目障りな部隊……。それから、殿下と懇意な部隊とかね……政的になりうる存在の中核を担う部隊をここで浪費させようとしたのさ、陛下は!」


 旧クーデター軍?

 殿下……皇帝の妹、皇位継承者、……政的の中核になりえる部隊?


 一鉄には判断しようのない話ばかりだ。だが、現実に今、本国と連絡が取れていない。


 尾形特任大佐は、政治の人間だ。形ばかりとはいえ確かにこの部隊の指揮官でもあった。部下のプロフィールは把握しているだろう。


 ……事実なのか?見捨てられた?


「まだあるよ。陛下は殿下が怖いんだ。殿下は誠意を見せるのが上手いからね。軍閥が出来つつある。それに、オニとの交渉の正面に立っているのも殿下だ。オニとの間に陛下よりも強いパイプがあるんだよ……。その気になれば旗印になれる存在になりつつある……だから陛下は失敗させたいのさ。花形の。初めの。ヒトとオニが手を組む、その作戦を指揮する殿下を。しくじらせたいんだ、所詮女と……ハハ、知っているぞ私は!あの若造は!独裁者は!……自分が昔やったから怖いのさ。怖くなったんだ!やられると思うのさ!ハハハ……私は知っている!糾弾してやるッ!」


 ………この男は、何を言っているんだ………。


 一鉄にはまるで理解出来なかった。

 だが、同時に、理解できることもある。


 この男はもう、手遅れな程に、壊れ切っている。怖いと、人間相手に、一鉄は思ったのかもしれない。


 一歩、一鉄が後ずさりしたその瞬間に、尾形、“羅漢”、……生身ではどうあがいても勝てない、銃を手にした鋼鉄の鎧は、一歩、一鉄へと詰め寄ってくる。


 そして、銃口を向けながら問うのだ。


「わかるだろう、一鉄くん?月宮なんだろう?私と分かり合える人種のはずだ……。正義は我々にある。共に生き延びて正義をなそう?」


 猫なで声が寄り、恐怖を誘う。

 それは、勧誘や懇願ではない。完全な脅しで、命令だ。


 間違いない。一鉄が頷かなければ、この男は一鉄を撃つだろう。そんな確信があった。


 ……だが、一鉄は、頷く気にはなれなかった。


「……貴方が蛮人と呼んだ、ヒトに、オニに、自分は幾度も救われています。俺にとっての正義は、そこにある。助けが望めないのなら、その、仲間と、どうにかするだけです。……そもそも、“月宮”は、代々ただの武人(馬鹿)だ。お前(政治家)の話は理解できない」


 言いながら、一鉄は、尾形を、その銃口を――その引き金に掛かった指を眺め、睨み、言い切った。


「“月宮”を舐めるな、……無能」


 言い切った瞬間――尾形の、“羅漢”の、トリガーに掛かった指が、僅かに動く。


「……若いね。残念だよ、」


 その尾形の呟きの直後――。


 ――銃声が、鳴り響いた。


 *


 あの男、油断も隙もあったモノではない。絶対に許せない。


 セミの声も人間の声も騒がしい、そんなオニの陣地の片隅で、鈴音はそう思っていた。


 状況は移り変わっている。帝国軍の残党と合流したのだ。


 鎧が20体と、何人かの負傷者。……手遅れになっていない者だけ、連れて来たそうだ。それでも酷い怪我で、鈴音も彼らの処置を手伝ったりして、そして、それが終わった後である。


 帝国軍残党の指揮官、久世統真と言う男が、休んでいた鈴音を見かけて声を掛けてきたのだ。


『白い羽織……。確かに可愛いな、』


 とか。

 帝国軍にはナンパ野郎しかいないのだろうか、と白い眼を向けた鈴音を前に、統真は続けたのだ。


『そう警戒すんなよ。何もしねえよ。だってお前、あれだろ?月宮一鉄の女だろ?あいつそう言ってたぜ?俺の女、って』


 鈴音は真っ赤になって絶句した。

 ……と言うわけで鈴音はあの男絶対に許さないのである。


 何を言いふらしているのか。徹頭徹尾あの色ボケは戦争をなんだと思っているのか。

 公然と告白されたり、俺の女、とか言われてしまった方がどうなるか想像しないのか。


 とにかく、生暖かいのである。仲間たちからの視線が。


 オニからは妙にほっこりした視線を向けられ、帝国軍からは完全に好奇の視線である。


 しかも、それが妙に士気に繋がってたりする。気づくと凄い皆から守られそうな立場にされてしまっている。鈴音の見掛けが幼い事も関係しているのかもしれない。


 そしてその状況に鈴音を追いやった張本人はどっか行ってるのである。単身、竜の最中だ。カッコつけているのだろうか?それカッコ良いのだろうか?そんなカッコつけるより手の届く範囲にいてくれる方が何倍もありがたい。


 ……………。

 陣地の隅っこで、所在なく、座り込んで、鈴音は頬杖を付いて拗ねていた。


 陣地のそこら中では ……ヒトとオニが何か談笑している姿が散見される。平和な光景、と言えるだろう。戦場でさえなければ……そう、戦争でさえなければ。

 鈴音も、こうも気を揉むことはなかったのかもしれない。


 ちょっと時間をください、が確実じゃない場所なのだ。だからこそ、鈴音から見た一鉄のアプローチが毎回やたら突然と言うか、強引と言うか。割と力づくで意識させられる身にもなって欲しい。


 鈴音は、何とも、気持ちを整理しきれない。


 不思議な気分なのだ。

 鈴音としては、一鉄と会って、お慕い申し上げられ、何日かさ迷い、ここに合流し、協力して物資を確保して、ちょっと見直す気になって、そして昨夜、ちょっと呑んで、話しかけて、そしたらまた急に熱烈に……だけが、確実な記憶だ。


 けれど、昨夜、一鉄を見送った後、少しだけ眠った時に……変な夢を見た気がする。


 妙にリアルな夢だ。膝枕とかしてた。その前も………。


 ただの、夢なのか。

 それとも、一鉄ほど明確でなくても、一鉄と同じように……それは前回の記憶だったりするのだろうか。


 そのどちらであっても、夢に出てくるほど意識してしまっていることは確かだ。

 …………。


「……卑怯者、」


 鈴音は、この場にはいない誰かを、そう、拗ねた様子で罵った。

 ……次会ったら蹴ってやろう。蹴る機会はきっとあるはずだ。そんな照れ隠しのようなことを、それこそ無限ループのように。



 鈴音は、想っていた。

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