転生したら世界樹の精霊でした~とりあえず人間目指して頑張ります~

leito-ko

第1話 この俺がトラックに轢かれて転生なんてそんn(


俺の名前はもり 誠樹せいじゅ。某有名大学を卒業した後に十数年の間勤めていた大企業をつい先程にクビになった我ながらハイスペックで残念な無職童貞だ。


理由は簡単。書類に大きなミスをした挙げ句、健全にお付き合いしていた女性は上司の嫁と発覚し、更には契約をパーにしてしまったときた。

二つ目に関しては俺からじゃなくあんたの奥さんからだから!!!と言ってやりたかったがそんな言い訳は通じない。泣いた。


あとクビにされるくらいならあの女にあんなことなそんなこともしときゃよかったと思っている。


え、何?いくらなんでも既婚に手を出すのは駄目だって?


そりゃあそうだけどさぁ....最後くらい女性と付き合って童貞卒業したかったわけよ。


そう、最後。最後くらい。


ここまで今俺が自暴自棄になっているのは、目の前に信号を無視したトラックが突っ込んで来ているからだった。


助かるわけ無い。

そう悟ってからは轢かれるまでがまるでスローモーションのように遅く感じる。


「童貞のまま死にたかねぇなぁ....」


そう呟いて俺の人生は幕を閉じた。






と、思ってた時期が俺にもありました。


目を覚ませば真っ白な何処までも広い空間。

身体に痛み一つ無く、なんなら運動を楽しんでいた学生の頃のように軽い。


「....いや、俺トラックに轢かれたよな...?」


死んでねーの?

ぺたぺたと自分の頬を触ったりつねってみたりと感覚を確かめるが、確かに手の温もりや触感、つねった痛みは感じた。


はて、何が起きたのやら。


困惑と混乱が一周回ってまだ俺は生きているのでは?と考え始めたとき、声が聞こえた。



『 あなたは死にましたよ 』


老若男女全てに当てはまらないような、不思議で無機質な声はそう告げる。

いや、理解させてくる。

その声は俺の脳に直接響いていた。


こいつっ、直接『 そのネタは聞きあきました 』


おやまぁ聞きあきたときたか。


『 何百年も転生の手続きをしている中であなたのように混乱からかネタに走る方は何人も見ましたからね 』


俺みたいな奴いたんだ。


『 ええ、近年よく聞いた言葉です 』


『 それは兎も角、あなたはちゃんと死にました。あなたの世界で言うブラック企業で働かされ、毎日毎日寝る暇もなく働いた結果運転中にうつらうつらしてしまい、居眠り運転をしてしまった人のせいであなたは死にました 』


その説明を聞いた俺にどうしろと!!!!!

そんな悲しい裏話聞かされたら俺を轢いた相手を責めて理不尽さを発散することもできない。

あぁそうだ、そのブラック企業の上司を恨めばいいのか!

我ながら迷案にも程があるがそんなことを考えないとやってられない。

なんせこちとらいきなり死んでいきなり謎空間に飛ばされてんだ。



『 ですがそんなあなたに朗報です 』


ま?


『 あなたは転生する権利を得ました 』


ほうほうほう!俺おっさんだけどそういうの信じちゃうし大好きだよ。


『 場所は....そうですね、あなたがたまに読んでいたような異世界にでも転生させましょう。偶然にも空席になって困っていた場所がありますからね 』



たまに読んで....あ、ラノベか。読んでた読んでた。

俺はよく本を読むタイプの人間だったが、中でも現実逃避にはよくラノベを読んでいた。愛読していたネット小説の更新がもう見れないのは残念だな。

因みに健全なお付き合いはあっても不健全なあれそれは全く経験することなく30後半まで人生を過ごしていたせいか、ハーレムでムフフな感じの............そう、女の子といちゃこら出来るえっちな転生系を愛読していた。


神様、俺は美女といちゃいちゃしてぇ。


『 あなた、はいすぺっくなわりに正直で残念な性格ですね。....まぁ頑張り次第では美女に囲まれることは出来るんじゃないでしょうか。あなたが転生する空席は少なくとも強さは保証できますから 』


....本当?


『 ええ、強いです 』


ほんとの本当?


『 勿論 』


例えばどんな力があるとか聞いても....?


『 あまり言えませんが....らのべとやらで言う魔力はちぃと級にありますよ 』



魔力!

ファンタジーだファンタジー。その単語だけでファンタジー感が増してきた。

いいねぇ、やりようによっては美女といちゃこらできる魔力チートとなると1度死んだ身としては万々歳だ。

ありがとう神様。

あれ、神様だっけ?


『 あなたの世界の神ではありませんがね 』


神は神なんですね....ありがとう神様....


『 ....申し訳ありませんがそろそろ時間が来てしまうので、あなたの転生先に飛ばさせてもらいます。悔いの無いよう第2の人生を歩んでくださいね 』


俺がいまだにチート付き異世界転生にはしゃいでいる内に、神様のその言葉を最後に目の前は光に包まれた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





........眩しい。

神様とやらが最後に見せたような光ではなく、瞼越しに感じる純粋な太陽の光。

気持ちいい風を感じながら瞼を開いて辺りを見回すと、そこには簡単には大きさを例えることの出来ない大樹が生えていた。


「....うわ、でっけぇ」


見上げると首が痛くなりそうなその樹は如何にも森です!というような木々の間に意図的に空けられたかのようなど真ん中に生えている。


「あ、その前に転生つってたけどこの視点の高さに声は元の俺...........じゃねぇなぁ!」


大樹に気を取られ過ぎて全く違和感を持たなかったが、今の自分の足は比喩などではなく確かに青緑色の透けていた。


まて、待てよ、鏡がほしい。


幽霊じゃないよな?


幽霊とか転生もくそもねぇじゃん?


焦った俺は慌てて大樹から離れて歩き回ろうとした。

その時、


バチィッ


弾かれるようにして俺は大樹側へと引き寄せられ、その場に座り込んだ。


「なんだよこれ........結界?流石はファンタジー」


嫌味を込めた独り言を呟きつつ、それから何度も出られないものかと試したが大樹から一定距離以上離れると同じように弾かれてしまった。


早々と諦めた俺はせめてこの大樹に何か無いものかと大樹へと歩み寄る。


よく見れば大樹の幹に人が寝泊まり出来そうな空間があり、裏へ回れば祭壇のようなものまで設置され様々な供物のような何かが置かれていた。


もしかするとヤバい木だったりする?


そう頭によぎったものの、背に腹は代えられないからなぁ、と供物の中に使えるものがないかと漁る。

すまん、これを捧げた人。....いや人かもわからんけど。


「お、鏡あるじゃん。助かったぁ....」


今世の姿も分からないなんて何も始まらないからね、と何気にわくわくした気分で鏡を覗き込むとそこには_______




前世の俺の顔立ちをした長い黒髪に緑の瞳の、一見質素だが自然で作られたかのような冠を被った足の透けた青年がいた。


誤解のないように言っておくが俺は緑色の目なんてしていなかったし、髪は短く切り揃えていた筈だ。

あと青年と言うほど若くない。

顔は、まぁ、うん、整ってる方だと思いたいなぁ。


転生というにはあまり変化のない顔に首をかしげ、次に頭に被った謎の冠を手に取る。

ギリシャ神話などで出てきそうな草の冠が俺の記憶じゃ一番似ているが....あれなんて言うんだろな。生憎そこら辺の知識は無いためわからない。

だが着ている服も長い布を纏ったような感じで本当に神話に出てくる系統だと思う。


膝辺りから青緑に変化して透けた足を除けば。



「おいおい....種族も分かんない転生なんて聞いてないって神様...」


俺は転生初日、全てにおいて頭を抱えた。



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今日のまとめ


トラックに轢かれて死んだ

転生した

服装が神話のお偉いさん

種族が分からねぇ(ここ大切)

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