うちの子 短編小説【色々】

翡翠

第1話 惨蔵【昔の話 壱】

小鳥の鳴き声を聞くのが好きで、僕はいつも屋敷の外の近くの森に遊びに行っていた。

人里には彼らは集まらず、ずっと森の中に小鳥達はいた。

小鳥の鳴き声は可愛らしくて、落ち着く音がする。


僕はその声を聞いて、いつの間にかすやすやと眠ってしまった。

眠っている間、温かい手が自分の頭を撫でていたような感じがした。

とても、暖かくて心地がよく、お母さんに撫でられてるのかなと思った。


『サンゾウ、私の可愛い息子、これからもお前の成長を見るのがとても楽しみですよ』

って、いつもお母さんが言ってた言葉が頭の中で響き渡り不意に涙が出た。


「……かあ様……かあ様……僕は、立派な、……天狗になります、だから……」


離れないで、かあ様


そんな言葉を発することは出来ず、そのまま何事もなく僕の意識は遠のいた。


______そう言えば、僕の頭を撫でてくれた人は、誰なんだろう……?


と、夕方になった時、僕は目を覚ましながら思った。

そこには誰もおらず小鳥達は鳴く仕事を辞め、森は静かになった。


「……急いで帰らなきゃ」

僕は走って森をぬけ、人里に帰っていった。


途中、女の子とぶつかってしまった。


「わっわっ!!ごめんなさい……!!大丈夫……!?」


『あ、うん、……大丈夫です、よ、』と蝶々の髪飾りを両耳につけた僕と同い歳くらいの女の子が言った。


僕は急いでいたので、その場を後にした。


________

『……よかった、天狗様、元気になってくれたんだ』

ぽつりと呟いた少女の声は誰にも届かず、彼女もまた家に帰るのであった。

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