俺に関わらないでください!

ラリックマ

入学初日

第1話始まり

「それじゃあ次は12番の人、自己紹介お願いね」


 高校入学初日の自己紹介。どこの学校でも行われる一般的な自己紹介。クラス全員の前に立ち、そこで自分の趣味、特技、好きなものを紹介する至って普通のどこにでもある自己紹介。

 俺の学校にも当然のようにあり、そしてそれは俺の番までまわってきた。一つ深い深呼吸をし教卓の前に立つと俺は手短に、そして大きな声で。


「出席番号12番、菊池幸助きくちこうすけ。嫌いなものは、人間です。だから僕には一切関わらないでいただけると幸いです!」


 そんなことを言い、ぺこりとお辞儀をして自分の席に戻る。まあこんなことを言ったんだ。クラスは当然ざわついている。周囲から「何あいつキモ……」「あんなのと関わるわけないじゃん」などなど、数多くの罵詈雑言ばりぞうごんを浴びせられ、俺は一躍(悪い意味で)時の人となった。

 まあこうなることを予想してあんなことを言ったんだ。別に後悔はしていない。ふふふっと不敵な笑みを浮かべつつ、俺は世界の音を遮断しゃだんするように机に顔を伏せた。

 そして一週間が経過した……。何事もなく……なんてことはなく、毎日陰口のオンパレード。それでも嫌がらせやいじめなんて直接的なものがないだけマシだ。普通の人間ならこの時点で鬱になっているかもしれないが、俺はこの上なく喜びを感じていた。

 こうなることも、全て予期してあんなことを言ったんだ。正直いじめまで発展してしまうのではと懸念していたが、この学校の生徒はいいやつが多いらしい。それにこうなることで、俺はこの一週間誰とも話していない。父親には無理言って一人暮らしをさせてもらってるため、最後に声を出したのがいつだかも忘れてしまった。

 でも俺にとってはこの高校生活は順調そのものだった。そう……とても順調。誰とも話さないってのは気楽だし、毎日陰口を言われるのも別に、昔の苦痛に比べれば、今のこの現状なんて苦でもない。

 だから俺は、あの一週間前の発言には後悔していない……。かたわらで聞こえる俺の悪口も、俺は全然嫌じゃない。だから後悔なんて……。

 俺は自分のかけているメガネを机に置くと、ぎゅっと両目を押さえつける。










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