ゆめみ幕ら




第一幕はこうだ

ホテルの一室のソファに座っている俺の正面に君は膝まづいた

君はあと一枚 という下着姿だったから

俺は降って湧いたようなこの状況に驚きながらも

この後の展開を期待せずにはおれなかった


がしかし 君は何もすることなく立ち上がって

シャワールームの方に駆けて行った


そこで目覚めて 一回 舌打ちしてから

俺は確かに煙草を一本吸ったんだけど

すぐに訪れた眠気に身を任した


すると 第二幕はすぐに始まった

俺と君は 俺が幼少の頃に過ごした小さな街を歩いてた

そう どこかでお酒を飲んだ後に汽車に揺られ

駅で降りてからの帰り道を一緒に歩いていたんだ

お店かなんかの灯りが届かない場所になったら

君と手を繋いだり 立ち止まってキスしたり

そんなことを期待し始めた矢先に

君は俺の側を離れて

小さな本屋に入ったかと思うと

見ず知らない若い男を店外に引っ張り出して

そして 少し歩いた先にある美容室に入ったかと思うと

髪の毛の茶色い若い男を店外に引っ張り出した

どうやら 君は鬼ごっこみたいなことをしたかったようだ

若い男たちは逃げる君を追い掛け

君は まだ動いていた路線バスに乗り込んで行ってしまった


その様子を声も出さずに見守っていた俺は

ため息をついて

独りで歩いて帰るしかないことを悟って再び歩き始めた


すると 間もなく 大安売りと書かれた木の看板のところで

君の知らない別の女が俺を呼び止めた

前に少しだけ付き合ったことがあったその女は

黒とオレンジで彩られたアイドルが着る服みたいな恰好で

腿の終わりまで入ったスリットを俺に見せながら

憂鬱そうに俺に話し掛けてきた


しょうがない 君の代わりに今夜はこの女を抱くとしよう

そんなことを思った矢先

さっきはかぶっていなかった黒いキャップの君が現れて

俺とその女をひとしきり眺めてから再び立ち去った


振り返れば スリットの女も姿を消していたから

再び 俺は大きなため息をついて

最早 真っ暗になってしまった商店街を家に向かって歩いた

もちろん 君を抱けなかったことを残念に思い

君の代わりにスリットの女を抱こうと考えた自分自身に

自責の念を持ちながら歩いた


途中 何故か 白い大きなガードレールが道を塞いでいたから

どうしようかと思って佇んでいたら

無灯火のミニバイクがそのガードレールに突っ込んで

粉々に飛び散ったバイクの緑色のプラスチック片を

何故か そこに置いてあった箒と塵取りで運転手と俺が片付けて


そして 第二幕から目が覚めた




少し前に 雷が近くに落ちる夢を見て

次の日に 酷い雷になったものだから

この夢も正夢になるかと

君から何かアクションがあるのかと

誰にも言わないで こうやって待っていたけど

どうやら お門違いだったようだ


否 俺の知らない君の心の中で

俺をセーブしたり デリートしたりする作業が行われていた

のかもしれないけれど それこそ 俺の知る由もないことだ







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