君のいない夏

永倉圭夏

夏の放課後、告白 ――

 夏でも夕方になると幾分はましな気温になる。


 河の土手に腰かけて物思いに耽る。傾きかけた陽光は幾分優しくなり、河から流れてくる風は涼しくて、汗が一気に引いていく。


 僕はこの半年で信じられないほどのものを手に入れた。世界の誰にだって手に入れられないほどのお金を。そして名声。僕の名前を知らない人は世界広しと言えど今やどこにもいない。


 だけど、だけど、


 この世で誰一人手に入れられないほどの物を僕は手に入れたのに、結局僕は君の気持ちを手に入れる事はできなかった。


 永久に。


 あの夏の放課後に、あの場所に戻れたら、僕はもう一切のためらいを捨てて君に告白するのに。

 お金も名誉もいらない。全部捨てたっていい。僕は普通の高校生のまま君とふたりでファストフード店でだべったりテス勉したかっただけだったんだ。


 だけどもうそこには還れない。


 ここは千葉でも、日本でも、地球でもない。



 ここはベルエルシヴァール。


 還るすべは、もうない。


 救国の勇者になんかなるつもりはなかった。なりたくもなかった。


 お金も、宝も、所領も、称号も名誉も全然いらない。何一ついらない


 僕の望みは、たった一つの望みは、君と一緒に笑いながらジンジャーエールを飲むのが――

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