登場人物をいきいきと描くアニメーションのような文章

この小説は、灯台で暮らすミドーという少年が朝目覚める描写から始まる。朝の支度をしながら、空や海の様子を観測して、報告書をまとめる。
それがどんな意味を持つのかはさておき、ミドーが朝起きてからの習慣を描写する文章が良い。情景がありありと浮かぶ、視覚的な文章だと思う。
カーテンを開けて朝の光が差し込む様子、戸棚からあふれた小物の描写、椅子を揺らしながら報告をするミドーがはっとしてそれをやめるシーン。
視覚的な気持ちよさへの配慮が行き届いていて、それがきっちり文章へと昇華されている。後半で、ミドーの報告書が持つ意味がわかってくるが、その展開も、前半の文章あってこその展開なのではないかと思う。