寒い夜暖かい彼女と

 由美「ねえ陽介、ちょっと飲み直さない?

    ちょっと寒くなってきちゃった」

そういえば夕方に比べて夜はかなり冷えてきた

着ていた上着を脱いでそっと肩にかけた

 由美「ありがと。陽介のそういう優しいとこ

    ほんと昔と変わってないね。」

と、くしゃっと笑う。

ああ由美のこの笑顔が好きだった。

大好きだったといまさらながら思い出した。

  俺「いや、変わったよ俺は。クズになった」


察してくれたのかそれについては何も言ってこなかった。

 由美「なんか懐かしいね。二人でこうやって

    並んで歩くの。」

中学、高校の時家が近いというのもあって

たまに夜2人で散歩して最近あった出来事や

ふと思ったこと友達のことや好きな人のこと

どうでもいいことまでたくさん語り合った。

  俺「懐かしいな。あの時が人生の中で

    一番きらきらしてたと思う」

そう。あの頃が一番楽しかった。

由美がどう思ってたかはわからないが

俺からすれば好きな人と一緒にいるのだから

そりゃあ幸せだったし、本当にきらきらしてた

 由美「あーあ。あの頃に戻れればいいのになあ」

なんてカップルみたいにはしゃぎながら

コンビニに寄りお酒と適当なおつまみを

買って家に帰ることにした。

いつも通る家までの帰り道も由美と2人で

歩いているからなのかいつもと違う道に見えた。

そして、気づけばあっという間に家に着いた。

ギシギシと音のなる錆びた鉄製の階段をのぼる

手すりにはいつからかコケが生えていた

そういえばこの家、なかなかに古かった。

まあ、俺の収入で住める家なんてそうないのだから

ありがたく思わないといけない。

いつのまにか由美は俺の部屋に入っていた

 由美「なんだ結構ちゃんと綺麗にしてるじゃん」

由美はすこし?いや、なかなかの綺麗好きで

昔、俺の実家の部屋に遊びにきた時はいつも

勝手に部屋の掃除をして、ゴミじゃない物までも

捨てて、よく言い合いをした。それが嫌で、

いつも自分なりに片付けてはいたがそれでも

全然納得ができないらしかった

「ああ〜」とおっさんみたいな声を出しながら

床に座ったと思えばコンビニの袋から

まだ冷えている缶ビールを取り出し、飲み始めた

昔に比べて、かなりガサツになったとは思うが

いまはそれぐらいが丁度いいように感じた

 由美「あれ?陽介は飲まないの?」

  俺「はいはい、飲みます飲みますよ。」

と言い缶を取り出して飲んだ。たくさん飲んだ

気づいた時には空き缶が10缶以上転がっていた

どうやら由美は最近仕事が忙しいらしく

えらくストレスが溜まっているみたいだった。






   

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