神宮寺湊の日常

授業には遅れずに

「今日から君はセミメディだ。

君の素質を見込んで6年生になった時には生徒会長を務めてもらうことになる、いいかい?」


「オッス!」


「良い返事だ、励めよ。それから、............しろ、

お前は............じゃない」



キーンコーンカーンコーン

キーンコーンカーンコーン


「......と! ......みなと! 神宮寺湊!!」


「............んー、ぁ? 渚か」


「渚か、じゃないわよ! 次は湊が体育! しっかりしてよね~、生徒会長!」


「ふぁいふぁい、わかってますよ!」


「欠伸しながら返事しない!」


「へーい......ったく、相変わらずな世話焼きだよな、アイツ......」


 俺は、神宮寺じんぐうじみなと、生徒会長をやってる。仁とは初等部3年の時からの付き合いだ。


仁とセミメディ以外には知られていないが、俺は神宮寺グループの次男だ。後継ぎと言えば聞こえは良いが、所詮俺は兄貴の味噌っかすだ。どこに行っても兄貴中心、両親も兄貴にしか興味がない。


仁に会ったのは、周りが兄貴中心に動いていることをちょうど分かり始めた頃だった。放課後に蒼たちとサッカーをしていたら、ピッチに不似合いなベストと革靴姿で


「おい、坊っちゃん」


と話しかけてきた。最初は、金目当ての誘拐をしようとしているのか、兄貴と間違われているのか、そんなことを考えながら、軽くあしらっていた。


でも、仁は俺に寄って集ってくる大人とは違った。一緒にサッカーをしてくれたり、宿題を手伝ってくれたり、ただ黙って隣にいてくれたり、会って間もないのに、俺のことを良く理解しているみたいだった。あの時、仁に会っていなかったら俺は今ごろグレていたと思う。


 初等部6年の夏、仁にメディエーターにならなかと誘われた。もし、なる気があるなら、そのまま中等部に進んでほしいとも言われた。


兄貴の身に何かあった時のために、俺も英才教育なるものを受けていたが、わざわざ偏差値の高い学校に通って高みを目指す気はなかった。それに、仁と同じ職業ならやっても良いかなとも思った。


半分くらい気持ちが固まった時、仁にメディエーターの仕事について説明してもらった。子どもながら、俺に合っている職業かもしれないと、ピンときた。


「にしても、仁はあの時、なんつったんだっけな。

あの時の仁、妙に寂しそうっつーか、悲しそうな顔してたんだよな.....まぁいっか、着替えねぇとな」



「あっらぁ~、色男が着替えてるわ~♡ 」


「......あ”? なんだよおネェ。勝手に入ってくんな」


「そんな怖い顔しないでぇ、蒼泣いちゃうっ!」


「............ハァ。そういや、今日は3組と合同だっけか?」


「そうよぉ、今日も勝つんだからっ♡」


「は? いつも勝ってるのは俺だろ?!」


「ん~、そうかしら? それはそうと、あなたボスのこと大好きよね~。さっきの心の声、外まで駄々洩れだったわよ」


「まじかよっ! っていや、確かに仁のことは尊敬してるし好きか嫌いかって言えば好きだけど!

俺の恋愛対象は、女だから!! それにアイツ、おっさんだしな!」


「あらっ!

おっさんじゃなかったら良いわけ~??」


「はあぁ?! なんでそうなる!!」


ゴツン!!


「いっったぁああ!!」


「お前ら、くだらん話してないでさっさとグラウンドに行け!」


「レディになんてことするのよ!!

蒼のキューティクルがっ! 暴力はんたーい!」


「......はいはい、失礼しやした。

おい湊!ボーっとしてないでお前はさっさと着替えろ!」


「オッス」


「じゃ、みなちゃんまたあとでねっ♡

ちーなーみに、勝負は24勝23敗1引き分けであたしの勝ち越しよ~、ウフッ」



「お前ら、まだサッカー勝負続けてんのな......。

ま、励めよ」


「おぅ」


 ......ん?


「あっ、おい仁! 聞きたいことがある!」


「おいおい坊ちゃん、その呼び方は学園内じゃ禁止だ。俺は教師、お前は生徒だ。

つーことで、またあとで、な? 学年主任様は忙しいんで......あ、勝負には負けんなよー、じゃあな~」


なんだよ、坊っちゃんって。俺はもう、グレかけてたガキじゃないんだぜ?


「......ムカつく。まぁ、また今度聞けばいっか。

それにしても、蒼に勝ち越されてるなんてな......

今日は勝つしかねぇな」




To be continue

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