第4話<怪談>理科室のトイレの怪異

簡単に言えば、ここから話す体験談は、すべて今の霊感もどきが発症する前の話だ。

数をいったらきりがないので、ざっくり覚えている不思議体験をいくつかお話しようと思う。



はじめてのびっくりは、小学生の頃。


教室最寄りのトイレが使えなくなったため、理科室のトイレを使うよう担任に言い渡された私は、一緒にトイレに行ってくれる友達もいなかったため、我慢の限界とトイレに急いだことがある。


子供心に、人体模型や気味の悪いホルマリン漬けがある場所は不気味だったので、早く事を済ませようとトイレに足を踏み入れた私だが。


誰もいないはずの理科室のトイレから、すすり泣きが聞こえ始めた時には一瞬にして体が硬直したのを覚えている。


女性のように高い声が、泣きじゃくっているだと?

こんなにもタイミングよく?

よもや、よもや、である。


怯えていたが、このときの私は、極限まで生理現象を我慢していたため、引くわけにはいかなかった。


だから、勇気を振り絞って「誰!?」と叫んだのだが。


見事ガン無視であった。


遠慮がちに思えたすすり泣く声はトイレ全体に響きわたった。


だめだ。きっと何を言っても無駄だ。

そして私もほんとに限界だった。

びびりまくったまま、私は個室に入り、天井から誰かが覗くのではないかとおっかなびっくりしながら用を足し終えた。


その間も泣き声は止まなかった。


きっと人間だ。トイレを誰かが使ってるんだ。

そう言い聞かせたかったのは、怪奇現象と無縁な人生を送っていたからかもしれない。

怯えながらも、私はトイレの個室を一つ一つ扉を開けて確認し始めた。


もしかしたら、もしかしたら、きっと。

そう思いながら……


結論から言おう。

結局誰もいやしなかった。


女子トイレは無人であった。

これが一番はじめに体験したことだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る