愛すべき幽閉⑥

『さーて、エレナ。覚悟はいいかしら?』

『お、乙音さん……? なんだか手の動きがイヤらしいんですけど……』

『気のせいよ。ほら、もう大人しくしてなさい』

『ちょっ……! なんで服を脱がすんですか!』

『当たり前じゃない。服を脱がさなきゃ制服着れないでしょ?』

『そ、そうですけど……、ひゃっ!? ど、どこ触ってるんですか!』

『え〜? 私は普通に着替えさせてるだけだけどな〜? 一体エレナちゃんはどこを触られてると思ってるのかな〜?』

『な、なんですかそのわざとらしい──んっ……!』

『ふふふっ、いい声出すじゃない! こっちはどうかしら?』

『ちょっと、乙音さ──あぁんっ!』

「「「………………」」」

 扉の前で待つ俺たちの間に気まずい空気が流れる。

「お、お二人は乙音先輩のパートナーなんですよね?」

 いたたまれなくなった俺は気を紛らわそうと二人に話しかける。

「え、えぇ、そうよ〜」

 向こうも同じことを思っていたのか、話に乗ってくれた。

「そういえば自己紹介がまだだったわね。私は高島一花タカシマ イチカ。よろしくね」

 そう自己紹介してきたはキリッとした雰囲気を持つ女性だ。

「私は伊藤 明日花イトウ アスカよ〜。よろしく〜」

 こちらは先程の女性とは対照的に随分とおっとりとした雰囲気を持つ物腰が柔らかそうな女性だ。

「自分は赤井 恋次です。こちらこそよろしくお願いします」

 二人に挨拶をする。

「へぇ、君があの赤井くんなのね 。噂は聞いてるわ」

 噂と言われても噂をされる程のことをした覚えがないので頭にはてなマークが浮かぶ。

「あっ、私も聞いたわ〜。なんでも、恋戦の途中で乱入してきた子と濃厚なキスをしてそのまま勝っちゃったんでしょ〜?」

 まさかこの前の恋戦のことがここまで広がってるなんて。

「いやーその……。まぁあながち間違ってないというか……」

 事実と言えば事実なのだが濃厚なキスはしていない。

 だが、否定をしたら根掘り葉掘りと聞かれそうなので反応に困ってしまう。

「ふーん、君たちって強いのね。もしかしたらいつか私たちと戦うことがあるかもしれないわね」

 一花さんがニヤリと不敵に笑う。

「え!? い、いや、別に俺たち乙音先輩から何かを得ようとか交渉しようとするつもりもないですし、そんな機会ないですよ!」

 恋戦なんてこれ以上する機会もないし、するつもりもないからな。

「それだけが恋戦の機会じゃないわよ」

 気になることを一花さんが言ってきた。

「ねっねっ。それよりこの前の恋戦のことどうだったのか聞かせてよ〜」

 一花さんに今の話を詳しく聞こうとしたら明日花さんが話に入ってきた。

「え、えぇ……。といっても特に話すようなこともないんですよね……」

 ほとんどが火燐に任せっきりだったので俺が話せることは少ない。

「そっか〜。じゃあじゃあ! 今のパートナーとの馴れ初めを聞かせて〜!」

 明日花さんが結構ぐいぐいと突っ込んでくる。

「馴れ初めって言う程じゃないんですけど……。俺たちって幼なじみなんですよ。幼い頃からよく一緒にいたんですよね」

 ポツポツと俺と火燐について話し始める。

「だから正直言ってパートナーになるなんて考えたこともなかったんですよ。その関係でつい最近本人を悩ませちゃって……」

 タハハと照れ笑いしながら話を続ける。

「今回このショップに来たのもそいつに贈り物するために来たんですけど……、ちょっと浅はかでしたかね」

 俺が話してる間、二人は真剣に話を聞いてくれていた。

「そんなことないわよ。貴方は真剣にパートナーのために悩み、行動しようとしてるじゃない」

「そうよ〜。その気持ちがきちんと相手に伝わるようにしてあげればいいのよ。あま〜い言葉と魅惑的な行動でねっ♡」

 二人に励ましの言葉をもらって目頭が熱くなる。

 俺がここに来たことは無駄な事じゃなかったんだ。

「そうですね……! ありがとうございます!」

 二人に対してお礼を言う。

「あらっ、なんだかみんなして仲良くなったみたいね」

 その時奥の扉から乙音先輩が出てきた。

 ──顔を真っ赤にさせて俯いているエレナを連れて。






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