第8話 里見、お前ロリ……

 宮本さんからの追及で僕の幼馴染について話すことになったんだけど、隠すことでもないので静香のことを思い浮かべながら特徴を挙げていく。


「金髪でピアスしてて身長が低い馬鹿だよ」

「えー、説明が短いよ。もっと詳しくぅ」


 思いつくままに言ったらダメ出しされた。


「今言った通りなんだけど」

「写真とか無いの?」

「あるけど、中学の時のだから今とはちょっと感じが違うかもだけど」

「いいよいいよ。見せて」


 スマホを取り出して写真フォルダを開く。

 うっかり変な写真を見られたらいけないので確認しておかないと。


 うん、大丈夫。

 変なのは無い。

 パソコンだったら絶対に見せられないけど。


 茶髪の静香が馬鹿みたいに笑ってピースしてる画像を表示して、スマホを宮本さんに渡す。


「これ、こいつが幼馴染の静香」


 中二くらいで突然茶髪にして、高校入学前に金髪になった。

 だから中学時代の写真を見ると、今よりは大人しい印象がある。


「わっ、可愛いじゃん。こんなに可愛いのに好きになったりしなかったの?」

「ないない。好みじゃないし」

「えーーーっ、この子でダメって椎名君ってかなりの面食い?」

「そんなことないと思うけど。宮本さんの方が全然可愛いじゃん」

「うぇっ!?」


 あっ、思ったことが口からそのまま出てた。

 言われた宮本さんは驚いた後、顔が赤くなった。

 マジ可愛いな宮本さん。


「私とか全然だし。この子の方が可愛いじゃん」

「いや、マジで宮本さんの方が可愛いよ」

「ちょっ、ちょっとやめてってば。マジで恥ずかしくなるからぁ」


 僕の顔も熱いから、多分顔が赤くなっているだろう。

 だけど言ってしまったからには、とことんいったれの精神で押して押して押しまくる。


「二人も黙ってないでなんか言ってよ」


 宮本さんが横の二人に救援を求めた。

 しまった!ここには藤沢さんもいるじゃないか。

 こんなに宮本さんにアタックしてたら藤沢さんの胸が揉めなくなる。


「気にしないで続けていいよー」

「見捨てないでリーナちゃん。里見君もなんとか言ってよぉ」

「いやー、椎名君って凄いなって感心しちゃってさ」

「感心してないで助けてぇ」

「ごめんごめん。もう言わないから大丈夫だよ宮本さん」

「本当?」

「うん。言わない」

「はーっ、もうあっつい。心臓もバクバクだよぉ」


 胸に両手を当てて宮本さんが心音を確認してるんだけど、その手には僕のスマホがあるわけで。

 ちょっと一旦返してもらえないかな。

 間接おっぱいタッチがしたい。


「他の写真も見て良い?」

「あっ、うん。どうぞ」

「どれどれぇ」


 まあ宮本さんがいろいろ見た後でもいいか。


「おおぉ、中学時代の椎名君の写真だ」

「変わらないと思うけど、ちょっと恥ずかしいね」

「私はさっき、もっと恥ずかしい思いをしたんだけどぉ」


 はい、スマホ越しの上目使い頂きました。

 可愛い。


「おっツーショット写真発見。並んでると身長差が凄いね。幼馴染ちゃんの身長ってどのくらい」

「140㎝後半くらいだね」

「ちっちゃくて可愛いー」


 胸も小さいんですよ。圧倒的に。


 ツーショットの写真は中学の卒業式の時のだろうから、他に新しい静香の写真は無かったはず。

 もうスマホを返してもらっていいかな。


「そろそろ『僕にも椎名君の幼馴染見せてくれないかな』スマホ……」

「はい」


 おっ(お前)、ばっ(馬鹿)、なっ(なんで)、おばなーーーーー。

 無情にも里見の手にスマホが渡されてしまった。

 里見、お前も間接おっぱいタッチがしたかったんか。

 あったかいか。宮本さんのぬくもりは。

 それが今生で感じられる最後の温もりにしてやろうか。


 握った拳を顔面に突き立ててやろうかと里見の顔を見ると、なにやら固まっている様子。

 どうした。温もり過ぎてオーバーヒートしたのか。


「か―――」


 ボソリと里見が呟いた。

 ん?なんだって?聞き取れなかったんだが。


「椎名君!」


 いきなり大声出すんじゃないよ馬鹿。

 どうしたってんだ。


「これ、この子が君の幼馴染!?」


 スマホの画面に映った静香を指して聞いてくる。


「そうだけど」

「へー、ふーん」


 なんだその反応。


「私にも見せてー」

「あっ」


 里見から藤沢さんが僕のスマホを奪った。

 なんで悲しそうなんだ、里見。


「やっぱりー、これは幸君のタイプだねー」

「そうなの?」

「こいつが?」

「幸君は身長が低くて、可愛い子がタイプー」

「リーナ!」


 それってお前、ロリ……。


「違う、違うよ」


 慌てんな!余計に怪しいわ。


「よく読んでる漫画にこういう子が出てるしー」

「また勝手に呼んだのか!?」

「どんな漫画?」


 なんでこんなに里見は慌ててるんだろう。

 ロリが出てくる漫画なんてかなり多いだろ。


「んっとねー、コミックL『あああああああああ』」


 叫んで藤沢さんの言葉をかき消そうとした里見。

 だけど声を出すのが遅かった。僕はもう察してしまっている。

 ロリコンが読むLから始まる漫画といえば、有名なアレだと予想ができる。

 成年誌のアレだろ、絶対。

 宮本さんは……、苦笑いしてるけど気付いているのか?

 まあ漫画好きならどこかで聞いたことがあるかも知れない。

 おっぱい好きの僕でも、ぺったんこが多い雑誌ながら知っているくらいだし。


 里見の肩を優しく叩いて、笑顔で頷いてやる。

 こいつがロリコンなら、藤沢さんに食指は動かないよな。

 安心したよ、僕は。


 慈愛の気持ちでした行動だったのだが、里見は机に突っ伏してしまった。

 バレて恥ずかしいのだろう。

 大丈夫だ。ロリコンだって口に出したりしないよ。

 里見が騒いだせいで周りから視線がいくつか向いているから、ここで言ってしまうと周囲に知られてしまう可能性もあるからね。

 そこまで僕も鬼じゃない。

 だというのに、「幸君はロリコンなんだよー」と藤沢さんが暴露してしまう。

 鬼である。

 周りに聞こえてないといいけど。聞こえていたら、ドンマイ!

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