第3話 幼馴染のおっぱ…?

 入学式を終えて、母親の運転する車で帰宅した。

 明日からは自転車通学。

 普通に漕げば、大体四十分くらいかけて通学することになる。

 少し遠いので電車を使いたいところだが、高校は少し辺鄙なところに合って近くに駅が無いので仕方がない。

 その代わりに高校の敷地は広く、校舎も付属する施設も大きい。

 また広いのはそれだけでなく、門戸もまた広く開かれている。

 簡単に言えば馬鹿でも入れる高校。

 一学年で十クラスもある。


 少し自慢になるのだが、僕は特別進学コースの生徒として入学した。

 これは普通科の十クラスとは別に三クラスある。

 おっぱいばかりに気をとられて勉強をしていない訳ではないのだ。

 といっても県立や公立高には落ちて、滑り止めで受けた私立の学校なのでそこまで威張れることでもないのが悲しいところ。

 受験で近くの席に女子がいなければ違った未来もあったかもしれない。

 冬服に隠れたあの大きなおっぱいは忘れ難いものだ。

 だがそうしていたら今日出会った女子たちとも会えなかったわけで、どちらが良かったのかは僕のこれから次第になる。

 揉めるか、揉めないか。

 そこが重要なのだから。



「純、おかえり」


 過去に出会ったおっぱいをベッドに寝転びながら思い出していると、自室だというのに言葉を掛けられた。

 声の方向に目をやれば、そこには幼馴染の姿。


 平松静香ひらまつしずか

 隣の家に住む、同い年の我が幼馴染とは幼稚園からの付き合いになる。

 身長は低く140㎝台で、未だに小学生に間違われるくらいだ。

 それが嫌でか髪は金髪に染めて耳にはピアスをしており、初見では身長の低い不良と思われがち。

 だが性格が元気で明るく社交性があることから、見た目で敬遠されてもいつのまにか仲良くなり、怖がられるよりは可愛がられる性分をしている。


 そんな静香が部屋の扉を開け放ち、笑顔で仁王立ちしている。

 口を酸っぱくして「勝手に入るな」、「ノックをしろ」と再三注意しているが全く聞き入れる様子がない。

 うちの母親と仲が良いせいで、母親はストッパーにならずこうして部屋にずかずかと入って来る。

 以前恥ずかしい姿を見られたこともあるのだが、どうして改善されないのか。

 仕方なく起き上がり、ベッドに腰掛けながら返事をする。


「ただいま。んでそっちもおかえり」

「ただいま。入学式疲れたねー」

「ああ」


 静香も俺と同じ高校に入学した。

 違うのは普通科だという事。


「どう?普通科と進学科だと違うところあった?」

「いや普通科の様子も知らない俺にどうやってその問いに答えろと」

「そっかー」


 聞いての通り馬鹿である。


「何しに来たんだよ」

「ひっどーい。女の子が遊びに来てあげたっていうのに」

「はっ」


 僕は女性に優しいという自覚がある。

 何故なら女性にはおっぱいがあるからだ。

 男女平等クソ喰らえ!

 男に優しくするよりも女性に優しくあるべき、というのが僕のもっとうだ。

 だが幼馴染のこいつは除外される。

 どうしてかって?

 こいつにはおっぱいがないからだ。

 前から見ても勿論、横から見たってそこに膨らみが見当たらない。

 小さい頃に一緒にお風呂に入ったりもしたが、その頃から全くと言っていいほどに成長が見られない。

 なんて残念な奴だろうか。

 少しでも膨らみがあれば優しくしてやったのに。


「何よその態度は」

「胸に手を当てて考えてみろ」


 馬鹿正直に胸に手を当てる静香。


「そしたら擦ってみ」


 胸を手で擦る静香。


「そこに何がある」

「ん?」

「そこにおっぱいはあるか?」

「あるけど」

「いやないね。そこには女子にあるべきはずのものがない。あるのはまな板だ」


 黙り込む静香。

 言われたことが理解できなかったか。

 中学までは俺もここまで辛辣なことを言わなかったからな。

 何故なら成長することに期待していたからだ。

 だが高校生になっても未だ成長の兆しが見えないことで、僕は静香に優しくすることを止めることにした。


「なんでそんなこと言うの」


 虚無顔とでも表現したらいいのか、感情が見えない顔で静香が僕を見つめながら問うてくる。

 ちょっと怖い。


「僕はおっぱいが好きなんだ」

「知ってるけど。それが?」


 そう。静香は僕がおっぱい好きだと知っている。

 何故なら以前見られた恥ずかしい姿というのが、エロ漫画で自家発電している最中というものであり、その後見ていた本のタイトルも知られた。

 その名も『おっぱい百花繚乱~乳咲き乱れる禁断の園~』だ。

 親にチクられては敵わないと必死の説得を試み、映画代を驕らされたのは苦い思い出となっている。

 それなのに俺の言い分が分からないのだろうか。


「お前には期待していたんだ。僕がこれまで牛乳を飲め、キャベツを食べろと指導していたのにその始末。どうしてそうも真っ平まったいらに育ったのか。がっかりだよ」


 バチンっと乾いた音が響く。

 僕の頬が熱い。

 無言で近寄って来た静香にビンタをくらった。


って。なにすんだよ」

「私だって気にしてるのに、そんな言い方ってないじゃん」


 そうか。気にしていたのか。

 だが髪を掴もうとするのは止めろ。


 更なる暴行を加えてこようとする静香と揉みあう(乳ではなく)。

 優しくすることは止めても、乱暴を働く気が無い僕と構わず襲い来る静香。

 ベッドの上で組んず解れつ、ひょんなタイミングで静香の胸に手が当たってしまった。

 そのまま揉んでみる。

 これで高校の目標は達成か?


「ちょっと!?」


 顔を赤くしてベッドから飛びのいた静香。

 僕はベッドに仰向けで、天井に手を伸ばした姿勢のままだ。

 触った感触はといえば、ほんの少し柔らかかった。

 だが自分の胸にも手を当てて揉んでみると、似たような感触がある。

 おっぱいを触ったというのに、そこに幸福感も達成感もなかった。

 思わず溜息が漏れる。


「本当に成長していないな。お前の胸は胸のまま、おっぱいに成り得ていない」


 再度ベッドに腰掛け、両手を肩の高さまで上げてやれやれのポーズと共に感想を述べてやると、俯きふるふると震え始める静香。

 泣かせてしまっただろうか。

 だが俺は真実を告げてやっただけだ。

 

「純ママーーーーー!純が私の胸揉んだーーーーー」

「やめろーーーーーーーーーーーーーーー!!」



 母親に説教を受けたのは言うまでもなく、お小遣いを減らされるという厳罰まで受けてしまったのだった。

 固い胸を触っただけだというのに。

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