🍎オレのまさかの溺愛狂想曲

ルミン

第1話 出会いは、屋上の空の下で


九条光寿郎、俺が?俺が結婚

ありえない

ありえない!

何の冗談か、って━━━の‼


働いては家に帰りピーチクパーチク

言ってるヒナに給料運んで

また会社へ飛び立つアハハハハハハ

子育ては燕に任せればいいサ


俺はヤダね!

そんな普通━━━━━な人生‼


かかあ天下に知りに敷かれ

挙句の果ては小遣い制

俺は一生、嫁は要らないって

彼女はいるけどナ━━━━‼


せっかく男に生まれたんだ

男万歳🙌‼




山梨結菜22歳

旅行会社に就職して、頑張って

いた。

某ウイルスのせいで中々海外への

渡航は少ない。


これは未だ某ウイルスの前のお話。

あの時代が早く帰ってきますように。


私結菜は、海外への赴任を夢見て

英語、韓国語、を取得して

今は中国語を勉強中


夢は大きくイタリア語、フランス語

まだまだやる事は山程


才能は無いからやる気で頑張るしか

無い‼ 毎日勉強、勉強


かといって直ぐ海外赴任の話など

入りたてのヒヨコには夢の又夢。


今はオフィスに座り込み事務作業

しかし、夢は海外

私の夢は海外



今はと━━━━━━━━い海外‼



📣お━━━━━━━━━━━━━い

いっか、みてろ━━━━━━━━📣

(スー息を吸う。)

🇫🇷🗼フランスよー

🇬🇧イギリスよー

🇮🇹イタリアよー

そのうちぃ━━━━仕事でぇー

いくからなぁ━━━━━━━www



大空に飛び立つ飛行機に叫ぶー

(この飛行機は国内線)


《《必ずぅー私はァー

乗るんだーぁゲホゲホ》》


待ってろぉー必ずいくからなぁー



ふう。

「あースッキリしたァー」

飛行機がよく見えるデパートの

屋上、このデパートの店舗に結菜は

いる。


屋上だけに高い柵があり

小さいけどカフェもある。




お昼休みの今の時間を狙って

叫びにくる。

多少人はいるけど誰も気にしない。


ストレス解消

(≧∇≦)あースッキリしたぁ



「全くアハハハハ元気ねぇー

面白い子ね。」


結菜の背後からくぐもった声がした。


ヾΘωΘノパッ☆と振り向くと

自販機の隣の某飲料水会社の

ロゴの入った赤い椅子に

70〜80歳近そうなお婆ちゃん

がニコニコしながら結菜を見ていた。


「アレッ、聞いてました?ヘヘッ」

結菜はバツ悪そうに、ポニーテール

をパラリと解いて又下の方で

クルッとくくりなおした。


「聞こえるわよ。

あんなに大きな声だもの、

普通に叫んでいるしホホホ」


何処か上品さを醸し出している

お婆ちゃんは少し白髪だけど

お肌もつやつや、かなりの美形


昔はモテただろうなーと結菜は思

った。着物も上品な山吹色にグリーン

の帯、黄色の帯締めが目を引いた。


「すみません、五月蝿かったですね。

ゆっくりされていたのに

ゴメンなさい。」


結菜はつい申し訳なくて

頭を下げた。


「いえいえ、久しぶりに元気な

お嬢さんに会えて私も嬉しくて

声をかけたのよ。」


お婆ちゃんはフフフと笑いながら

「あなた、お仕事中?」


「はい。

お昼休みなんです。」


お婆ちゃんはニコニコしながら

「私も考える事があると

ここに来るのよ。」


「私もです。」

何故か結菜は彼女が良い人に

思えていた。


女性としてしっかりしているように

みえて、凛とした面持ち

初めて会ったのに話していると

居心地がいい。



「奥様ソロソロお帰りになりませ

んと光寿郎様が、アメリカからお着きになります。」


後ろから60代位のふっくらとした

160センチ位の背丈の女性が

ニコニコしながら現れた。


「ああ、そうね!

帰らないとね。

光寿郎に叱られそうね。」


お婆ちゃんはスッと立ち上がり




向こうに何人かの男性が見えた。

黒服にメガネ?SP?

初めて見た。



「奥様なんだぁ

凄いな!ポカ-ン…」


すると結菜に振り帰り


「又会いましょうね。」


お婆ちゃんは一歩踏み出すと

何かを思った様に突然振り向いた。


「あなた、おなまえは?」


唐突に聞かれ結菜はつい

「山科 結菜です。」


お婆ちゃんはニコニコしながら

「そう結菜さんね。

私は九条 椿よ。

また会いましょうね。」


「あ‼みんな私の事ユーナと

呼びます。

だからユーナとも言います。」


お婆ちゃんは、いや椿さんは

おっとりと笑いながら

「そう、ユーナね、有難う。」


天真爛漫な、結菜は、


「椿さ━━━━━━━━━━ん。

またですね〜」

ブンブンと両手を高く揚げ

振った。


「ハイハイ、またね。」



そう言うと遠目で分からないが多分

4〜5人を引き連れて屋上を出て

行ったと思う。

またねとは言ったものの中々

一般人の結菜には、簡単に会えな

そうな人だった。


椿はデパートの入口近くに

回された黒いピカピカした車に

乗るなり


「さっきの子、調べて頂戴

できるだけ大急ぎで」


「はい、奥様。」

銀縁メガネをかけた身なりのいい

背の高い男は直ぐ何処かに電話を

していた。

黒塗りの高級車はデパートの

幹部の見送りを受けながら静かに

滑る様に走り出した。



ハァ…椿は溜息をつく。

九条光寿郎、九条財閥の跡取り

つまり椿の内孫が嫁も貰わず

もう直ぐ27、いや30と言ってもおかしくない!独身貴族を優雅に楽しんで

いる。


仕事は出来るし、見てくれもいい

しかし身を固めようとは

思っても居ないらしい。


頭の痛い事だ‼


光寿郎の遊び相手を、ことごとく

調べたが椿の、おメガネに適った

女性は1人も居ない。


椿も来年は80だ、ソロソロ曾孫の

顔も見て見たい。


長く生きて10年

もっと長生きして20年

曾孫といられる時間は限られて

しまう。


もう若くは無いのだ。

何時までも健康で居られる訳も

なかろう。


そんな事を考えて暗くなっていたら

もぎたての果実を思わせる

ピチピチの弾ける笑顔に会った。


これは神様が椿にくれた

ラストチャンスかもしれない

微かな期待に胸が踊った。


何より結菜の、幸せそうな笑顔が

椿の胸に染みてきた。


そう椿が笑ったのは

随分久しぶりだったのだから。

















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