電柱の下の女子高生②
「お邪魔しまーす」
上げてしまった。あの場で言い合いを続けて、近所の誰かに見られでもしたら俺の立場が危うい。明日の朝になったら追い出せばいいのだ。
「いいか。お前が泊めろって言ったんだからな」
「うん? そうだよ」
「誘拐じゃないからな!」
「はは、ウケる。分かってるって」
笑っている場合ではない。このご時世、男と女でトラブルが起こると大抵の場合男が悪役に仕立て上げられてしまうのだ。お互いに同意して家出娘を保護していたら誘拐事件として処理されていた、というのはよく聞く話である。
「部屋汚いね」
「男の一人部屋が綺麗なもんか」
「綺麗な部屋もあったよ」
女子高生の発言に、俺は慌てて振り向いた。
彼女は、あっけらかんとした様子で俺を見て、首を傾げた。
「なに?」
「……いや」
俺には、関係のない話だ。
こいつが今までどんな生活を送っていようが、どういった経緯でここに来ようが、関係ない。明日の朝になったら、追い出す。俺のすべきことはそれだけだ。
外出着のままベッドに横になる。
いろいろなことがありすぎて、今日はもう身体の疲労が限界まできていた。酒も手伝って、すぐに意識がぼんやりとしてくる。
「あ、寝ちゃうの」
「寝る……お前も好きにしてろ」
ぼんやりと返すと、女子高生はベッドにそっと腰掛けた。
「ヤらなくていいの?」
「何度も言わすな……ガキは好みじゃねえんだよ……」
「そうなんだ」
眠気が脳を支配してゆく。目を閉じて、意識を手放さんとしている最中に、またもや女子高生の声が鼓膜を揺らした。
「なにか、しておいてほしいことある?」
強いて言うなら、大人しくしていてほしい。朝になったら俺の財布がなくなっていた、とかいう展開も勘弁してほしい。
しかし、それは言葉にならなかった。
眠すぎて、身体も口もまともに動かない。
しかし、ぼんやりとする意識の中、強烈に自分の欲望に訴えかけてくるものがあった。
「味噌汁……」
気付いたら、それだけ口にしていた。
「女の作った味噌汁が飲みたい」
そう言ったところで、俺の意識は途切れた。
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