第25話 氷の華




【4年前】


 その日は、特別な日だった。

 セージはいつも難しい本を一日中読んで過ごしている。

 僕も同じようにずっと本を読んで生活していた。異界の言葉で書かれている本も、セージに教えてもらって少し読めるようになってきた。

 それでも異界の言葉は複雑で難しく、なかなか覚えられない。

 そんな生活ばかりに耐えていたが、僕はその日はどうしても外に出たいと思っていた。


「ねぇセージ、今日は外に出てもいい?」

「近頃は外に出たいと言わなかったのに、どうしたんだ」

「別に……ちょっと外に出たいだけ」


 本当は、本ばかり読んでいるセージにもっと外の世界を直に見てほしいと思っていた。

 魔女に狙われているのは理解していたし、僕も不要な外出は避けていたが、その分の鬱憤うっぷんはたまる一方だ。


「以前、大きな音がしたのを慌てて見に行ったときにあの小僧を見つけてきただろう。あの一件で懲りたと思っていたが?」

「……僕はあの時から成長したし、子供じゃないんだからその話はしないでよ」

「外に出る必要はない。資材もそろっているし、食料も今は心配ない」

「そうじゃなくて……」

「ノエル」


 セージは読んでいる本をパタリと閉じた。

 そしていつになく真面目な表情でこちらを見つめてくる。


「外は危ない。お前は出る必要はないんだ。何度も言わせないでくれ」


 その投げやりなセージの態度に、僕は日ごろの鬱憤が爆発したのも無理はない。


「少し外に出るだけだよ! セージはどうしていつもそうなの!?」

「お前はまだ子供だ。私の言っていることが今は解らなくても、いずれ解る。あれだけ本を読んでいるなら、解るだろう。魔女除けを張っている家の中以外は危険だ」

「僕だってもう魔女除けを張れるよ! 子供じゃない!」

「ふふ、そうか? 未だに兎一匹をさばくのも躊躇ためらっているのにか?」

「そ、それは……」

「お前の魔女除けはまだまだだ。もっと精進してからにしなさい」

「……もう、いい。セージの許可なんかいらない!」


 僕は家から慌てて飛び出した。

 後ろから僕を呼ぶ声が聞こえたが、僕は無理に飛び出してしまった。


 そんな僕を追いかけるでもなく、セージはため息を吐きながら窓の外を見た。

 外は雪が降りだしている。その曇った白い外に、逃げるように走っている僕の赤い髪が揺れているのをセージは見つめた。


「まったく……困った。…………過保護にしすぎだろうか」


 セージは小さくつぶやいた。




 ◆◆◆




 沢山の本を読んできたけれど、僕は外の世界のことは何も解らなかった。

 花の絵を見ても香りは解らず、食べ物の写真を見ても味は解らず、風景を見ても温度は解らない。

 僕は外の世界にずっと憧れていた。

 安全だとはいえ、ずっと隔離されていても生きている心地がしなかった。


 雪が降ってきて、外はシン……と冷え込んだ。僕の肌に雪が落ちると、それは解けて水になって流れ落ちる。

 僕が読んだ本の中で『誕生日』というのを祝う風習が過去にあったという記述を見た。

 こよみという概念がほとんどない今はそんなものはないけれど、僕がセージに拾われたときのことは覚えている。

 雪が降っているのに、周りは火の海で熱く、雪も一瞬で蒸発していった。

 日の長さや高さ、夜の長さで時期は解る。

 僕はそれを計算し、今日が僕がセージに拾われてから丁度15年という節目の日であった。

 だから今日、セージに何かあげたいと僕は考えていた。

 誕生日には何か贈り物を相手にして祝うらしい。


 ――なのに、セージはいつもと同じで全然外に出してくれない……


 僕は冬に咲く花を本で読んで知っていた。

 その花はこの辺りに咲く花で、雪のように白い花。

 小さな花びらは雪の結晶のように美しく、月明かりが反射するとそれはもう輝いて見えて美しいそうだ。香りもよく、甘美な香りがするらしい。

 僕はその花を探していた。

 しかし、その花は見つからず時間ばかりが悪戯いたずらに過ぎていく。

 花を探している最中、僕はどうやってセージに謝ろうかと考えていた。


 ――僕はセージの本を破いたときも結局謝れなかったっけ……


 今日はセージにきちんと謝ろう。

 育ててくれた恩を感じていた僕は、せめてセージに喜んでもらいたかった。

 雪が積もり始め、その白い花を見つけるのは時間と共に困難になっていった。もう日が暮れ始めた頃、僕は諦めて帰ろうかと雪の中に自分の身体を投げた。


 ――あぁ、何もあげられなかったな……帰ってセージに謝ろう……


 その代わり、僕は自分の魔術で氷の花束を作った。

 それがあまりうまくいかず、まるで子供が作ったような酷い出来栄えになってしまう。

 僕はやはり造形魔術は向いていない。無理やりに氷の花びらを作って、それを花にしようとしてもうまくくっつかない。


 ――溶けてなくなってしまうけれど、花の命をいたずらに摘んでしまうより、いいのかな……


 僕は前向きにそう考えた。

 破壊する魔術ばかり上達して、セージはあまり嬉しそうじゃなかった。

 僕が魔術を使うこと自体、セージは良い顔をしない。

 セージは翼人なのに、まるで人間のような生活をしている。僕も同じように生活していた。

 火をおこすのにも一苦労だし、食べ物をとるのも、水をくむのも。水なんて大気中の水分を魔術で操れば簡単に生成できるのに、あえて大変な方法をとって生活している。

 僕も花を探すのに雪を全部溶かしてしまえば簡単だったかもしれない。

 セージは「苦労して手に入れるから意味がある」と言っていたが、僕にはその感覚は良く解らなかった。


 ――はぁ……寒いな……


 セージの家に着くころにはすっかり暗くなってしまっていた。家にはもう光がついている。

 僕は怒られる覚悟を胸に、家の扉を開いた。

 扉をあけると美味しそうな料理の匂いがして僕は安堵する。奥から物音がするのが聞こえた。


「セージ……」


 言い訳を一つ一つ考えながらも、僕は一歩ずつ部屋の奥へと歩く。それからゆっくり扉に手をかけて開こうと引き始める。


「セージ、あのね……僕――――」


 扉を開けている途中、僕は異常を感じ取った。

 何かが倒れている姿が見えた。それに、複数人の影が目に入る。何より血の匂いがした瞬間、背筋が凍りつく。


「あら、やっとおでましよ」

「ノエル……逃げなさい……」


 完全に扉が開ききった後、僕はその光景に言葉を失った。


「無駄よ。逃がさないわ」


 そこには僕が3歳のときに両親を殺したゲルダという魔女と、そのほかの大勢の魔女がその部屋にいた。

 セージは床に倒れ、体中怪我だらけで床には血しぶきがとんでいる。

 一番出血がひどいのは背中の部分だ。

 翼をむしり取られた痕があり、そのむしり取られた翼は当然その辺りに転がっていた。

 白い翼が血まみれになり真っ赤に染まっている。


「その手に持っているものはなに? ……氷の花? あなた本当に造形魔術が下手ね?」


 ガシャンッ……


 氷の花束を落とした。氷の花は粉々に砕ける。

 僕は何も考えられずにセージに駆け寄った。周りの魔女なんて僕には見えていなかった。僕の目に映っているのは倒れているセージの姿だけだ。


「セージ……セージ……!!」


 僕はセージの傷を氷で塞いだ。出血が酷かったが一時的にそれは収まった。


「逃げなさい……私に構わず……」

「セージ……ごめんなさい……」

「お前が悪い訳じゃない……」


 そう言って僕の頭を撫でてくれた。溢れてきた涙がセージに落ちる。


「私こそ……ずっと拘束してすまなかった……な……」

「うっ……うぅ……」


 僕が泣き始めると、周囲の魔女たちは笑い始めた。指をさして、お腹を抱えて、高笑いをしている。

 その声を聞いていて、絶望的な悲しみがやがてとめどない怒りに変わった。

 ゲルダを睨みつける僕の目からは、深紅の雫が流れ出す。


 すると、周りの物がガタガタと震えて空中に浮き始め、その状態に気づいた魔女たちは笑うのをやめて警戒し始めた。

 僕に向かって魔女たちは魔術式を展開したが、ロウソク立てが瞬時にその魔女へ飛んでいき、腕を串刺しにして魔術を阻止する。

 他の魔女も僕を攻撃しようとするが、ことごとく周りの物が飛んでいきそれを妨害した。ドロドロとした黒い液体が僕の周りに生成され、ゴボゴボと音を立てて高温で沸騰している。


「ノエル……駄目だ……」


 セージの言葉は聞こえず、ただ僕には魔女の悲鳴が聞こえていた。


 ドロドロしたその黒いものが魔女にまとわりつくと、身体を融解させ、その溶けた身体を取り込み、よりその量が増えていく。

 床に垂れたその液体は何もかもを溶かし尽くし、床も溶けてしまった。

 ゲルダの容赦ない魔術が僕に浴びせられるが、そのどれもが僕に到達せずに黒いドロドロに吸収され、エネルギー変換でドロドロはさらに増えていった。


「くっ……やっぱり化け物ね……」


 ゲルダに向かってその液体を仕向けるとゲルダは慌てて防御壁を構築したが、包み込むようにその液体が侵食し、黒い球ができあがる。

 僕はゲルダから目を離し、周りの魔女全員の移動能力を奪った後で、ゆっくりとその魔女たち一人ひとりその液体で脚の方から飲み込んでいく。


「嫌……助けて……いやぁああああああああああ!!」


 脚の方からゆっくりと、皮膚から筋肉、神経、骨をゆっくりと侵食していく。肉が変に焼けた匂いがすると、吐き始める魔女もいた。

 ゲルダは徐々に防御壁を溶かされ、ジリジリとその球体は小さくなっていく。


「ごめんなさい……ごめんなさい、逆らえないのよ……殺さないで」


 その声は僕には届かない。

 懇願する魔女に向かって僕は容赦なく手を向けた。

 辺りの金属が変異し、それが鋭利になって次々とその魔女の急所を外して突き刺さる。


「キャァアアアアアア――――」


 叫び声をあげた口から、黒い液体を流し込むと魔女の口はドロドロになって溶けてやがて声を出せなくなった。


 それもそうだ。

 もう絶命しているのだから。


 僕は残った魔女に声もかけず、次々と残酷な方法で殺していった。

 そのときの僕の表情は無表情で目を見開き、血の涙を流し続けている。目はどこも見ていない。


「痛い……痛いわ……」


 魔女の身体に手をかけて、鉄の刃を生成してゆっくりと皮膚をはぎ取っていった。

 その度に絶叫が部屋に響く。

 わき目もふらず、僕はただ意味もなく目の前の魔女の皮膚や肉を切り刻み、剥ぎ取り、むしり取ってく。


「殺して……もう殺して……もう……キャアあアアああアあアアああッ!」


 ゲルダ以外の魔女を殺し終わって、黒い液体がそれらを飲み込むと魔女の遺体も血液も何もかもが呑み込まれて蒸発した。

 嫌な匂いだけが残り、僕はゲルダの方にゆっくりと向き直ってその様子を確かめる。黒い液体に包まれてブクブクと泡を立てていた。

 手を突き出して開いていた手を、握りつぶすように閉じて拳を作るとその黒いドロドロした液体は凝縮し始めた。

 中から必死に抵抗しているゲルダの様子が手に取るように分かる。


「ノエル……私の話を……聞きなさい」


 セージの声がぼんやりと聞こえてきて、僕はセージの方を見た。

 そこでやっと、家の天井までもが崩れ去り、外の雪が部屋の中に降り注いでいることに気が付いた。


「セージ……?」

「ノエル、いけないよ……そんなふうに力を使っては……いけない」

「僕……何してたの……?」

「覚えて……いないのか?」


 僕は何も覚えていなかった。

 セージがそう言うと、僕はなんだかとんでもないことをしてしまったような気がした。

 先ほどまでいた魔女たちはどこにもいない。

 黒い液体がそこら中に飛び散っているのが見えた。

 自分が何をしたのか解らなかったけれど、恐ろしいことをしてしまったと僕は怖くなる。


「……セージ……死なないで……」


 怒りが悲しみに変わると、目から流れ出る液体が紅から透明なものに変わった。


「花を作ってくれたんだろう……? 嬉しいよ……」


 セージは溶け続けている歪な氷の花を握りしめていた。握りしめていた部分が解け、その花は折れて粉々になって水になった。

 水に血が混じり、赤くなっていく。


「僕が言いつけを守って家にいたら……! こんなことには……っ」

「いいんだ……私がお前をずっと閉じ込めてしまっていた……もっと外に出られる生活がそのうちできるように……なる……こんな残酷なことをしなくても済むように……な」


 セージはそう言って涙を流す。


「ノエルには……こんなことしてほしくないんだ……こんな残酷なことはしてほしくない……傷つけるより、殺すよりも……解り合える方法を探すんだ……」

「セージ……っ、どうしたら……いいの……セージがいないと、僕……何もできないよ……もっと色々教えてくれないと、僕はまだ子供だから……」


 僕が泣きながらそう言うと、セージは弱い笑顔を浮かべた。


「お前は……もう立派な大人だ……」


 そう言って笑顔のままセージは目を閉じた。

 僕はセージの身体の傷の状態や、心拍などを確認していて、心臓の鼓動がどんどん小さくなっていくのを感じた。


「セージ……?」


 セージの上に雪が降り積もっていたのを払いながら、冷たいセージを細い腕で必死に抱き上げた。


「セージ、目を開けてよ……セージ……」


 もう二度と、セージは目を開けなかった。

 死がセージを迎えに来たのだということを、僕は受け入れられなくてセージの身体をゆすり続けた。

 涙がとめどなく流れてくる。

 冷たい雪と僕の涙が混じる。


「お別れは済んだかしら?」


 僕は後ろから頭部を殴られて、気を失った。




 ◆◆◆




【現在】


 気が付くと、城は半壊していた。

 身体は血まみれだったが、身体に痛みも傷跡もない。部屋の概念もなく、そこかしこが溶けてなくなってしまっていた。

 黒いドロドロした液体がそこかしこに散らばっていて、煙を出している。


「ノエル……」


 名前を呼ぶガーネットの方を見ると、恐怖におののいた表情をしている。

 赤い龍は横たわり、もうかすかにしか息をしていない。リサは身体がボコボコと再生し始めているがかなりの傷を負っている。


「僕は……何してた……?」

「覚えていないのか…………」


 たしかに覚えていないが、そのセリフには聞き覚えがあった。

 セージが言っていた言葉と同じだと僕は思った。

 リサはご主人様を抱えて守っている。ご主人様は頭部から出血していて気を失っているようだった。

 それを見た僕は驚いて息が止まる。


「ご……ごしゅ……じ……」

「ノエル、早く……その身体についている血液で龍の……制約を解くのよ……」

「え……」


 リサが息も絶え絶えにそう言うと、自分の身体についている不愉快な血液の存在を改めて感じ取る。

 僕の身体にべったりとついているその血液は、どうやらゲルダのものらしかった。

 ゲルダは酷くボロボロに切り裂かれていて、徐々に肉体が再生し始めているのが見えた。

 翼の付け根の部分を中心に、肉がうごめいている姿はもはやなんの生き物なのか解らない。


「魔術式はあたしが作るわ。早く龍にその血を……」

「あ……うん」


 僕が龍に近寄って、その首元にゲルダの血を少しつける。

 すると、リサが魔術式を龍にかけ、制約を解いた。龍は息も絶え絶えだったが、僕の方を見て


「(乗って……)」


 と一言言った。


「そんな身体で……飛んだら……」

「ノエル! 来い!」


 ガーネットはご主人様をリサから引きはがし、龍の背に乗せた。僕の腕を引っ張り、強引に龍へ乗せる。


「リサは……」

「あたしは……ゲルダを食い止めるわ……行きなさい」


 龍は血まみれの身体で羽ばたいた。羽ばたくたびに龍の血が飛び散っている。

 それはまるで赤い薔薇の花びらが舞っているように見える。


「(城……外……仲間)」

「(理解……)」


 ガーネットと龍は異界の言葉で話をしている。僕は頭がぼーっとして何も考えられない状態だった。

 僕はただ、ご主人様の頭部の出血を押さえながら抱きかかえるしかない。


「白魔女!」


 ガーネットは龍に着陸するように指示し、城の外の外壁に降りさせた。

 シャーロットは驚いた目をしていたが、ガーネットに急かされて龍の背中に乗り込んだ。ガーネットはラブラドライトの身体を龍の背中に乗せる。


「ノエル……何があったんですか? その血はあなたの血ではないのですか?」

「うん……僕は大丈夫。彼の怪我を治して……龍の傷も……」


 僕は力なくそれだけ答えた。

 城から遠ざかる風景をぼんやりと見つめる思考がまとまらない。


「ノエル、大丈夫か」


 ガーネットは珍しく心配そうに僕の前にかがみこんだ。

 いつも僕を突き放すのに、よほど僕は酷い状態だったのだろうか。


「………………僕、何してた?」

「それは……憶えていないなら、思い出せなくていい」

「……でも、ご主人様が……どうして怪我を……ガーネットがついていたんでしょう?」

「……この男は、お前を助けると走って行った。私も追いかけたが、お前が傷を受けた際に足止めされ、行かせてしまった……」


 彼はバツの悪そうな顔をしていた。

 まるで僕に怒られることを受け入れているようなそぶりだ。しかし、僕はそれを聞いても怒りは湧いてこなかった。


「そう……」

「お前……本当に大丈夫か?」

「…………」


 シャーロットがご主人様の頭の傷を治した後、彼の血色の悪い顔に触れた。


「ノエル……この龍は…………もう助かりません」

「……どうして?」

「制約の負荷で魔術抵抗が強く、治癒魔術を受け付けません……」

「……そうか」


 僕は龍の背中の堅い鱗をさすった。

 そこかしこから出血している。


「ノエル、これ以上龍が持たないならどうやって移動するんだ」

「…………」

「おい、しっかりしろ!」


 僕が答えないと前後に揺さぶられ、ガクンガクンと前後に頭が揺れる。

 以前、僕がしたことや先ほどまで僕がしていたことが思い出せない。

 この返り血や、ぐちゃぐちゃになっていたゲルダや、やけに心配そうなガーネット、気絶しているご主人様。

 セージの心配そうな目。

 守るために力を使えと言われていたのに、僕は殺すために力を使った。


 ――セージ……


「あの化け物、まだ追ってくる。お前がしっかりしないと――――」


「ゲルダのことか? 追ってはこないぜ」


 いつの間にか龍の背中に乗っていたクロエが、ガーネットの言葉を遮ってそう言った。


「貴様……生き延びていたのか……」

「あぁ、流石にくたばるかと思ったぜ。おっと、俺に敵意はない。争うつもりはないんだ。その鋭い爪をしまえ」

「信用できるか!」


 鋭い爪でクロエの喉元を狙っている。

 シャーロットはクロエを見て震えているし、飛んでいる龍は不快感をあらわにして暴れ出しかねない。

 そうなったらご主人様も危ない。


「ガーネット……死にかけてる龍の背中で争わないで」

「賢いなノエル、流石俺の女だ」


 反論する気にもならず、僕は視線を逸らした。

 間もなく街の中部だ。しかし、龍は次第に飛行が不安定になり、もう飛べないというのは十分に理解した。


「ガーネット、龍に降りるように伝えて」

「あぁ……」


 ガーネットが龍と話している間、僕はご主人様を抱きしめ、振り落とされないようにしっかりと龍の身体を固定する。


「それがお前の大切な人間か」


 ご主人様に触れようと手を伸ばしたクロエの手を、僕は雷ではじき返した。

 クロエは自分の手をさすりながら笑う。


「触らないで」

「なんだよ、そんなに怒るな。お前はいつでも俺に連れないよな」

「…………」


 龍はやっとの思いで街の中部の噴水のある公園に着陸した。街の人間は恐れおののき、身体をのけぞらせながら後ずさりする。

 他の中階級の魔女もともに怯えている。この前の大惨事のときのトラウマがあるのだろう。誰も僕だと気づいても襲ってくる気配はない。

 全員が龍から降りたあと、僕はぐったりしている龍の目を近くで見つめた。


「(ありがとう……)」


 異界の言葉でそう言うと、龍は弱くうなる。


「(レイン……お願い……)」

「(わかった)」


 それを聞いて安心したのか、龍はそのまま目を閉じて息を引き取った。

 僕はその龍の鱗を一枚はぎ取った。

 赤く、硬い鱗は光に当たると僕の目と同じように輝いて見える。僕は法衣のポケットにそれをしまった。

 遺体を弔ってやる時間はない。せめて、せめて生きていた証をと、僕はまとまらない思考の中でそう思った。


「せっかく無理して助けたのに、無駄になっちまったな」

「ゲルダが追ってこないって、どういうこと?」

「……安心しろ。ゲルダはあの城から出られない」


 僕がクロエと話していると、ガーネットはクロエに容赦なく襲い掛かった。

 クロエはそれを簡単に避ける。それを見ていて僕はガーネットに向かって「やめて」というと、そのめいにガーネットは止まった。


「信用できない! ノエル! 貴様は今正気ではない!」

「僕は正気だよ。話を聞くくらい、いいじゃない」

「罠かもしれないだろう!?」

「罠って……お前なあのとき俺はお前たちを助けただろう? 俺はもう城へは戻れない。ゲルダに捨てられたんだよ。せいせいするぜ」

「それで、どうしてゲルダは追ってこられないのか教えて」


 ガーネットにそれぞれを抱えるように言った。

 ラブラドライトとご主人様を背負い、シャーロットはアビゲイルを背負って、僕とクロエは駆け足気味で街の外側に向かって移動しながら話を続けた。


「正確に言うなら、身体を維持する為の薬やら治療を数時間おきに行わなければならないから、設備のないところへ長時間はいられない。その間隔はどんどん短くなってきている。お前の魔力を防いだ時にかなり身体に無理を強いたせいもあって、今は特に出られない。もうあれが暴走するのは時間の問題だろうな……」

「……でも死ねないんでしょ」

「そうみたいだな……」


 そんな処置をしなければ生きられない魔女だが、それでも逆らうことすらできない程の強い魔女だということを僕は感じる。

 僕と同じ、癒しや構築以外の高位の破壊の魔術系統。


「片翼で翼の力が不安定だから、もう一対あれば力が安定して完全な身体になれると信じている。そう信じないと自我が保てねぇんだよ」


 ばかばかしいと僕は思った。

 この世の全てがばかばかしいと思った。

 僕がずっとこんな生活をしていたのも、全部ソレの為だ。ゲルダが僕の翼を狙い続けているせいだ。

 魔女がこの世を支配なんてしているせいだ。

 僕は再び悲しみが怒りへと変貌し始めると、また僕の意識は遠のき始めた。周りが揺れ始め、物が浮き上がり始める。


「おい、ノエル!」


 ガーネットのその呼び声で僕は意識を取り戻した。

 浮いていた物が下に落ちる。


「貴様……ノエルにおかしなことを吹き込むな!」

「ガーネット……ありがとう、大丈夫……」

「……お前、本当に大丈夫か?」


 クロエが心底心配そうに僕に尋ねる。


「うん……。それってさ、僕の翼じゃなくても良かったんじゃないの? 別に翼があるのは他の翼人も同じでしょ」

「あぁ、確かにそれも試した。対になる翼を求めて、あらゆる翼人の翼をむしり移植を試みたが、お前の翼の力が強すぎてすぐに拒否反応が起きて定着せず、移植はできなかった」


 翼人を皆殺しにしたゲルダの理由を一つ聞いて、僕は更に苛立ちが募った。憎しみが気が遠くなりそうになるが、僕は首を振ってなんとか正気を保つ。


「それなら……翼を身体から切除すればいいじゃない。外に出られない身体になってまで……つけておく意味あるの」


 冷たくそう言い放つと、クロエは「そうだな」と答えにならない答えをした。


「それは無理でした」


 僕とクロエの会話の中にシャーロットが割って入る。アビゲイルを背負いなおしながら懸命に歩いている。


「あの翼は……ゲルダ様……いえ、ゲルダの身体の中心部……心臓と強く複雑に結びついていて、それに翼の見える部分を切除したとしてもゲルダ本人の魔力を利用して、何度も何度も再生するのです。強引に深部の部分を切除しようとしたときは……その痛みと苦しみに耐えられなかったのと、物凄く複雑に融合していて無理でした」


 ――そんなこと……ありえるのか……僕の翼も僕の心臓と?


 そう考えたけれど、もしそうなら片翼をむしり取られたときに心臓も共にむしり取られて死んでいてもおかしくはないはずだ。


「翼人の翼は他の鳥類の翼とは少し違う構造をしていて、魔力を蓄える魔道孔が沢山あり、魔力に反応して蓄えようとするのです。ノエルの翼はノエルの魔力の質と量で安定するように生まれたときに作られているから何の問題もないのですが、ノエルの翼をゲルダが無理やり移植した為、のです。ゲルダについているノエルの翼は、ノエルの魔力の質と量を求め、彼女の魔力を器量を無視して蓄えようと、深く深く食い込んでいっているのです」


 何故ゲルダが暴走しているかが解った。

 確かにそんな状態では暴走しても仕方がない。


「それに、対なる翼を移植すれば確かに安定する可能性はあります。翼人は本来一対二翼で本来の力を発揮しますし、魔力の伝達のバランスが両翼間で調和がとれるのです。だからノエルが魔力を使うと、身体が痛くなったり怠くなったりするのではないですか?」


 シャーロットにそう言われて、思い当たる節があった。

 確かに、魔力を沢山使った後は、身体が痛くなっていたのを思いだす。今は痛みはないけれど、酷く頭がぼーっとする。

 痛みがないのはガーネットの回復能力で治癒力が上がっているからだろう。


「……確かに今までのことも頷ける」

「そんな身体であまり頻繁に魔力を使いすぎると、命を縮める結果になりますよ」

「そう……」


 それでも、ご主人様を助けられるならそれでいい……僕の命なんてどうなったってかまわない。

 僕はご主人様を見た。まだ目を覚まさない。

 そのまま僕らは急ぎ足で歩き続けた。


「クロエ」

「なんだ? 俺とあの夜の続きがしたいのか?」

「…………罪名持ちの魔女は何人くらいいるんだ」


 僕が無視するとクロエはため息をつきながら僕の質問に答える。


「お前が拘束されていた部屋にぞろぞろ魔女が行っただろ? 大体あれが全部だ。お前の拘束と翼の奪取は最優先事項だった。各地から魔女を徴収した」

「ふぅん……」

「お前たちが着ている法衣からして、全員始末したんだろ? どうやって誓約書をんだ?」

「それはキャンゼルが……」


 キャンゼルの名前を出したところで、キャンゼルがいないことに気が付いた。

 シャーロットと合流していなかったのかと考えたが、逃げろと言っただけでどこに行けとは言わなかった。

 城に置いてきてしまったか、あるいは上手く逃げられたか……――――


 ヒュンッ……


 何か、小さいものが飛んできて僕の脚をかすめた。


「っ……」


 石でも投げられたのかと思ったが、そうではなかった。

 振り返った瞬間、更に何かが飛んでくるのが見えた僕は重力で全部下に落とした。すると地面はビシャリと濡れた。


 ――水?


「ノエルゥウウウウウウウウウ!!!」


 笑っている顔は狂気に歪んでいる。アナベルの屍の方がまだしっかりと歩いていたように思う。フラフラと、まるで酔っているような足取りで歩いている。


 ロゼッタだ。


「ねぇ、見て? ここに来る間に面白いもの2つ見つけたのよ……ほら」


 両手に持っていたのは頭2つだった。ロゼッタは2つの頭を交互に僕の方へ投げてくる。

 転がった頭を見ると片方は金髪のボサボサの長い髪と、目と口を縫われた痕がある。首からボタボタと血と水が滴っている。


 ――リサ……


 もう片方はやけに不ぞろいな髪の毛の頭だ。前髪はきっちりと切られているのに、やけに他は不ぞろいな、良く見覚えのある顔。


 ――キャンゼル……


 姿が見えないと思っていたら、ロゼッタに殺されていたようだ。

 転がっている頭を見て、ロゼッタはゲラゲラと笑っている。


「あんたの大切なもの、一つ一つ壊してあげるわ。シャーロットも、クロエも、その人間も、あんたの周りの人間全員殺すの――――」


 ……ゴトッ……


「あれ……世界が……傾いて……」


 刃の魔術は、リサが得意だった。

 ロゼッタの頭はゴロリと床に落ちていた。

 首を切り落としても、数秒程度なら意識が残るらしい。


 にわとりで首を切り落とした後に3日生きていたという話を聞いたことがある。ただ、動いているだけで生きていたと考えられるかどうかは不明だが。

 断頭台での断たれた頭は切り離された自分の姿を見て、認識する時間はあるのだろうか。


「……なんも面白くないよ」


 そうつぶやいてロゼッタだったものに背を向けて、再び歩き出した。

 僕はガーネットとクロエ、シャーロットが自分を凝視していることに気づいていたが、何も言わなかった。

 他の魔女が殺すのと、僕が殺すのは結果としては同じなのに、僕がやったほうがずっと恐ろしいものを見るような目で見られる。

 何百人殺している魔女を恐れるのと、何百人殺している魔女一人殺すのは、意味が違うのだろうか。


 殺しは殺しだ。


 一も百も変わらない。一か、ぜろかだ。


「ノエル、もうすぐ街の端だ」


 街の外れまでなんとかやってくると、僕は頭がぼんやりしたままでクラクラしていた。

 ガーネットの回復力が落ちてきたのか、魔力の使い過ぎで身体が痛い。

 その痛みもガーネットは解ってくれていたはずだが、僕に特別言葉をかけてくることはなかった。

 あまり僕の血液を与えるわけにはいかない。ガーネットの身体に毒になってしまう。現に城ではガーネットの目が血走ったり、牙の更なる鋭利化などの副作用が目立っていた。

 必要以上に与え過ぎた。

 今は血を欲しがるそぶりもなく、ただ黙って弟とご主人様を運んでくれている。

 街はずれにきて、ここからどうやって町へ帰ろうかと僕はさえない頭で考えていた。


「どうやってここから移動する? まさか徒歩ではあるまい」

「何も考えてなかった……抜け出せるとも思ってなかったし」

「なっ……ノエル、死ぬ気だったのか!?」

「…………まぁ、そうかもね」


 色々言いたいことがある様子だったが、気の抜けた僕に何も言おうとしなかった。


「なんだよ、逃げる算段考えてなかったのか?」

「うるさい。必死で闘っている間に帰りの手段なんて考えていられるか」

「悪かったよ、そんなに怒るなって。シャーロットがいるんだ、即興で馬を改造して――」

「駄目だ」

「じゃあどうするん――――」


 生命を弄ぶような真似はできない……と考えていたときだった。後方から大きな爆発音が聞こえて一気に視界が明るくなる。


 ドォオオオオオオオオオオオオオオン!!!


 後方で爆発が起こる。

 凄い熱量と爆風で、僕らの後ろから熱風が吹き抜けた。

 再び空へ飛んでいった一線は雲を切り裂いて


「なに!?」


 全員が振り返ると、街の一部が燃えていた。

 何が起こったのか理解が及ばない内に、城から間髪入れずに高濃度の魔力のレーザーが四方八方に飛んでいるのが見えた。


「ゲルダ……街ごと全部吹き飛ばす気だな」

「ここにいるとマズイ。もう走るしかない。走れるか?」


 身体が痛いし、なにより疲れているがそんなことを言っている場合ではなかった。


「走るよ」


 僕は無差別に飛んでくるレーザーに対して魔術璧を構築した。

 しかしそのレーザーの威力が凄まじく、一度それが魔術璧の端をかすめただけで粉々になってしまう。

 街の人たちや魔女たちの悲鳴がそこかしこで聞こえてくるが、それも城から撃ってきているレーザーはおかまいなしだった。狙いがでたらめであったがために僕らは生きているだけに過ぎなかった。


「皆殺しにしてまで僕を殺したいのか……」


 何重にも魔術璧を重ねて防ごうとしたが、一撃当たるたびに脆くも崩れ去って僕はその衝撃で後方に吹っ飛ばされた。

 受け身は取れるが力が入らない。


 ――駄目だ……疲れすぎていてもうどうにもならない……


 そう諦めかけたとき、街の外の遠くから白いものが近づいてきているのが見えた。


「ノエルー!!」


 聞き覚えのある声だ。

 物凄い速さで、あのときのキメラ馬とレインが目の前に現れた。


「レイン!?」

「乗って!」


 僕は言われるがまま馬に乗った。ガーネットもご主人様とラブラドライトを乗せ、シャーロットとアビゲイルも乗る。

 定員が過剰であったが、馬の負荷を今は考えている場合ではない。普通の馬よりも少し大きい馬であったことが幸いだった。


「俺は?」

「自分で走れ!」


 クロエは馬に乗れなかった。

 クロエが乗らなくとも明らかに定員を超えているが、馬はそれでも速度を緩めることなく街から急激に離れていく。


 ――もう少し、もう少しでご主人様の病が治る……


 シャーロットがいる。

 妹も助けられた。

 後は治療してもらうだけだ。


 その希望だけで、僕は全力で防御璧を構築してゲルダが打ってきている魔術を防いだ。


「全員捕まってろ……!」


 何度も高エネルギーのレーザーを、全力の防御壁で何度も弾く。

 遠ざかるほどにレーザーの威力が落ちてきたけれど、それでも疲弊している僕には防ぐのがやっとだった。

 馬は瞬く間に街から遠ざかり、レーザーの届かないところへと連れて行ってくれた。

 あっという間の出来事だった。


「ノエル、やりましたね。逃げ切りました!」


 シャーロットは僕を後ろから抱きしめるようにし、嬉しそうに声を震わせて言った。よほど嬉しかったのだろう。

 そんな生き生きしたシャーロットの声は初めてきいた。


「ノエルー! ノエルー!! 会いたかったよ!」


 レインは僕の腕の中に納まり、嬉しそうに身体を摺り寄せてくる。

 鋭い爪や鱗が刺さって痛かったけれど、僕はレインを力なく撫でた。

 巻いている包帯がまたところどころほどけてしまっている上に、汚れていることに気づく。きっと必死になって僕を探してくれたのだろう。


「レイン、ありがとう……」

「馬鹿トカゲ……助かった。だがノエルにすり寄るな。鱗が痛い」

「お前は降りろよ! インケンやろう!」


 僕は喧嘩する二人のやりとりを笑いながら聞いていた。

 こんな風にふざけているのも、ほんの数日前の話なのに物凄く前に感じる。


 僕らはご主人様の家の近くまでやってきて、馬から降りて生き延びた事を噛みしめた。


「はぁ……はぁ……おい、ノエル。流石に早すぎるだろその馬」

「貴様、レーザーに打たれて死んでいればよかったものを」

「ノエルのペットは黙ってろ」

「ガーネット……喧嘩してないで、ご主人様を降ろして」


 ガーネットは不満そうな顔をしながらもご主人様を降ろしてくれた。

 僕は気絶している彼の肩を担ぎ、扉を開ける。

 そこには何も変わっていない彼の家があった。少し僕が出た時よりも散らかっている気がする。

 見慣れたご主人様の家を見るとなんだかホッとした。


「ご主人様……もう少しです……」


 ご主人様の身体に傷がないかどうか確かめていた。そこかしこに血がついている。

 これはご主人様の血だろうか。


 ――僕は、何をしてしまったんだろう……ガーネットも僕をなんだか気遣うそぶりだし……


 僕はご主人様をなんとかベッドに横にした。

 目を覚ましてほしかったが、しかしどう声をかけていいかも考えていなかった。


「みんなありがとう。少し休んで。ここはご主人様の家だから」

「あぁ」


 流石にみんな本当に疲れているようで、余裕もないようだった。

 僕はご主人様のベッドの横の、自分がいつも眠っている場所に腰を下ろした。


「レイン本当にありがとう。どうして場所解ったの?」

「ノエルが連れ去られたって町の人に聞いたの。それで一緒に行った街の匂いが残っていたから」


 無邪気に羽ばたくレインが、本当に愛しくなった。


「レイン……本当にありがとう」


 僕はレインを抱きしめた。

 小さな包帯だらけの身体。強く抱きしめたら折れてしまいそう。


「ぼくもノエルが無事でよかった」

「うん……」


 そのまま僕はパタリと倒れ込んだ。

 意識が急激に遠のく。


 ガーネットとクロエ、レインが僕の名前を呼ぶ声がする。


 ――ご主人様にも、名前を呼んでほしいな……


 まだ、一度も呼ばれたことはない。

 そして、彼の名前を呼んだこともない。


 僕は、彼の名前を知らない…………。


 そのまま僕は気絶した。



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