第23話 死への冒涜




 昔から随分ゲルダは精神的に不安定だったようだが、その所業をみて尚更どうかしていると思わざるを得ない。

 実験をするにしてもこんなに酷い状態にできるのは、よほど何かの“タガ”が外れているに違いない。そんなことなど最早どうでもいい。

 ゲルダの精神状態の分析をするよりも、この状況をどうするかを考えなければならない。


「キャアアアアアアアアアアアッ!! アビゲイル!!!」


 シャーロットは泣きながら叫んで妹の名前を呼んだ。

 これからどうするのか話し合う余裕もなく、話が通じる状態ではない。

 僕は困惑する3人を下がらせた。

 シャーロットは僕の言葉が耳に入っていないようで、僕は身体を後ろから抱きかかえて無理やり下がらせる。


「アビゲイル……アビゲイル……ッ!」

「落ち着いてシャーロット……」


 改めてアビゲイルと呼ばれた彼女を見ると、ぐにゃぐにゃの肉の塊からアビゲイルの上半身が生えているような形になっていた。

 大きな部屋の三分の一ほどの大きさのあるその肉の塊は、重量を支えるのにやっとな数の手や足が奇妙に動き回り、僕らからゆっくりと遠ざかるように動いた。

 アビゲイルの頭部から胸部の途中まで、かろうじて彼女の部位だということは解るが、胸部から下は完全にその肉塊と同化してしまっている。


 ――まだ幼い子供の魔女にこんな惨いことを……


「お姉ちゃん、ごめんなさい……」


 小声でそう言う彼女は、その小さくて細い身体を震わせている。


「っ……違うの……アビゲイルは……悪くないわ……」


 声にならないような声でシャーロットはそう言う。

 痛ましいその姿に、なんと声をかけたらいいか言葉を失い、変わり果てた姿のアビゲイルの姿を見つめた。


「ノエル、なんだこれは……」

「……解らない」

「どう助けるというのだこれを」

「…………」


 その酷いありさまを落ち着きを取り戻した僕は見た。最悪上半身だけなら助けられそうだと考えが浮かぶ。


「あら、やけにうるさいと思ったらシャーロットじゃない」


 第三者の声が聞こえて、僕らは身構えた。

 声のする方向を見ると、肉の塊の後ろからやけに血色の悪い女が一人出てくる。ほぼ下着しかつけておらず、その挑戦的な黒い下着に収まりきらない身体を白衣の一枚で包んでいる。


「シャーロット、このお客さんたちは誰? 扉を無理やり壊すなんて穏便じゃないわね」


 その魔女は棒付きの飴を舐めながらこちらに近づいてくる。

 みどりの光に照らされた彼女は酷いクマを目の下に作っており、髪の毛もボサボサだった。


「あぁ、解った。そろそろ始末するから最後のお別れに来たんでしょう? いいよ。そっちの魔女たちは付き添いでしょ? テキトーにしてて」


 どうやら彼女は僕が何なのか解っていないようだ。

 恐らくこの緑の光のせいで僕の髪は赤く見えないのだろう。

 僕は彼女に聞こえないように小声で泣き崩れているシャーロットに耳打ちした。


「シャーロット、最悪彼女の上半身だけなら助けられる。覚悟を決めて」

「そんなこと……できないです……」


「じゃあどうするんだよ」と声を荒げそうになるが、僕は泣き言を言っているシャーロットに向かって提案を続ける。


「じゃあ、シャーロットがあの得体のしれない肉の塊とアビゲイルの肉体を分離させて、元の状態に戻して」

「そんな……っ……そんな……こと……」


 泣いているシャーロットを強引に向き直させて、顔をあげさせて僕と無理やり目を合わさせた。

 色は解らなかったが、充血していることだけは解った。


「いい? 死ぬか生きるかの選択肢しかない。アビゲイルもこのまま放っておけば始末される。あの魔女が言っていたでしょう?」


 未だ現実を受け入れられていない彼女に、焦りも混じり僕は強い口調で彼女を諭す。

 ショックなのは勿論だが、思いやるよりも焦りが先行していた。優しい言葉をかけて慰める余裕がない。


「やるしかないんだ。しっかりしろ」


 やっとシャーロットは覚悟を決めたようで、戸惑いは拭えないまま返事をした。


「はい……」

「僕があの魔女と話をしている内にやってくれ」

「……彼女と話しなんてできないわ」

「どうして?」

「物凄く変わってるのよ……アナベルって魔女で……」

「なんとかするからやっててくれ」


 ガーネットにはご主人様についているように目配せし、僕はアナベルという魔女と話をしようと近寄った。


「なぁ、少し話がしたい」

「あたしと?」

「僕が向いている先に、他に誰がいるの?」


 少しきつめの口調だが無理やり笑顔をつくって彼女に言うと、彼女は不気味な笑顔で笑った。


「ふふふ、確かにね」

「あっちの奥で話したい。いいね?」

「いいよ」


 僕は肉の塊の奥にあった小さな部屋に彼女を少し強引に押し込んだ。

 そこは異臭が漂い、いくつもの臓器サンプルや死体らしきものが置いてあった。僕は反射的に眉をしかめる。

 アナベルは僕にゆっくりと向き直って僕を見つめた。


「随分積極的なのね? いいわよ」


 アナベルは白衣をその辺に脱ぎ捨てた。僕は彼女を一瞬見たあと、その後もう一度見た。


「なにしてる?」

「あたしとんでしょ?」


 僕に近づいてきて彼女は僕の手を掴み、自分の胸を触らせようとしたが、僕は慌てて振り払う。


「違うよ。話がしたいって言ったでしょ」

「なんだ、あっそう」


 アナベルは脱ぎ捨てた白衣を早々に羽織って、椅子に座り込んだ。背もたれが大きく後ろに倒れ、アナベルは退屈そうに飴を舐める。


「で? 何の用?」


 まるで何事もなかったかのようにアナベルは話し始めた。


「あ……あぁ、あの肉塊は何なんだ?」

「尋問しに来たの? 失敗したあたしの処遇に対して話に来たの?」


 ――失敗した?


 法衣からか僕のことを上位魔女だと思っているようだ。ボロを出さないように聞かなければならない。


「なにをどうしたらあぁなってしまうんだ」

「んー、そうねぇ……根本的に『魔女の心臓』を作るなんて計画は無謀だったとしか言いようがないわ」


 ――魔女の心臓の再建? 無茶だ。そこらの魔女がどうこうしてもどうにかなるとは思えない


 アナベルは棒つきの飴をねっとりと舌で弄びながら話を続ける。


「ゲルダ様に言われた通り、魔女や人間をいくつも使ったけれど、イヴリーン程の魔力がない魔女の心臓をいくつ集めても、作れないみたい。だからあたしのせいじゃないわ。そもそも以前の魔女の心臓よりも圧倒的に大きなものを作ろうなんて無理なのよ」


 ――大きな魔女の心臓を作り出して、ありとあらゆる魔女をがんじがらめに縛るつもりだったのか……?


 欲張りが過ぎる。

 というよりも、常軌を逸している。


「元々あった魔女の心臓は肉を剥いでも再生したけれど、それはイヴリーンの再生能力があったからよ。そこまで再生能力がある魔女はそういないわ。唯一その可能性のあるシャーロットはゲルダ様の治療にかかせない存在だったから、その血統の妹を使ってみたけど、あの状態よ」


 アナベルは舐めていた飴をガリガリとかみ砕いて、その棒をその辺に投げ捨てた。棒は部屋の隅に落ちた。よく見ると何本も飴の棒らしきものが落ちている。

 ある意味では失敗して良かったと言える。

 もし成功していたら全てがゲルダの下に自由など全くなくなってしまう。

 寒気のする話を、死臭漂う部屋で聞いていたら僕は当然気分が悪くなってきた。

 それに追い討ちをかけるようにアナベルは草食動物を狙う肉食獣のように舌なめずりしている。


「失敗して当然だと思うけど、あんな酷いものができあがるとはね」


 僕は適当に話を流しながら、彼女から視線を外し、その異質な部屋の横たわっている死体の一つ一つを確認した。

 魔族であったり、魔女であったり色々な死体が何体も横たわっている。


「あぁ、そう言えばリサだけど、リサはどうするの? もうあたしの手には負えないわ」

「リサ……」


 ――僕に酷い執着を見せていた魔女か……


 あの魔女が今出てきたら大変なことになってしまう。

 アナベルは手に持っていた医療機器を落とした。それを再度拾い上げる。その仕草を僕は目で追いながら彼女に問う。


「今どうなってる?」

「そうね……もう限界まできてるわ……」

「限界?」


 アナベルは自分の指の爪をガリガリと噛み始める。


「ええ。毎日幻聴と幻覚のノエルと話をしているし、最近はノエルに毎日ご飯作ってあげてるらしいわよ。手枷がついてるし料理なんてできるわけないのに、どうしたらそうなるのかしら……」


 それを聞いて僕はゾッとした。

 ご主人様がいた町にいた統合失調症の患者と症状が似ている。現実を受け入れられずに現実と乖離かいりして妄想の中に生きているのだろう。

 さすがにそれは可哀想だと僕は思った。

 このままここでそのままにしてしまっていいのか考えてしまう。


「…………」


 リサは僕を欲しいがために吸血鬼を傷つけ、殺そうとした。恐ろしい嫉妬と憤怒の魔女だ。

 それを許すことは難しい。

 結果として僕はガーネットの弟と子供を作る実験は免れた。しかし結果としてラブラドライトは死んでしまった。

 それが許されるかどうかといえば、許されない。

 しかし、実際に殺したのはロゼッタだ。リサじゃない。


 そう複雑に考えている内に、僕は気になるものを見つけた。

 金色の綺麗な髪がやけに目につく。

 それはやけに見覚えのあるものだった。

 顔は縫い痕や変色で元の顔と大分異なっているが、それを見た時に僕はヒヤッとした。首のところは外科的な治療で丁寧に縫われている。

 唇をめくろうと触ると冷たい感触がして、少し硬いと感じた。唇の下には鋭い牙がならんでいた。


「この吸血鬼は?」

「あぁ、それは貴重な吸血鬼なの。死んじゃったから廃棄予定だったけど、私のしもべにしたわ」

「しもべ?」

「ええ」


 アナベルが魔術式を発動させると、吸血鬼はその武骨な台から上半身を起こし、目を開いた。

 勘違いであってくれと願ったが、その吸血鬼の美しい青い色をみればはもう確信に変わった。


 ――この吸血鬼の死体……ガーネットの弟の……


「珍しいのよ。青い目の吸血鬼」


 まるで操られている姿は生きているように滑らかに動いた。しかし瞬きもしなければ、どこを見ているかどうかも解らない。


「あー……この吸血鬼は僕がもらっていく」

「え? なんでよ!? あたしのお気に入りよ?」

「だから、その……えーと……――」


 ガシャン!

 ドンドン!!


 部屋の外が何やら騒がしくなって僕とアナベルは扉の方へ急いだ。

 物凄く嫌な予感がした。




 ◆◆◆




【アビゲイルがいる部屋】


 ノエルがアナベルと共に別の部屋に消えてから、シャーロットは泣きながら狼狽ろうばいしていた。

 一方妹の方は悲しそうな顔をして、その肉塊をゆっくりと動かして姉のシャーロットに近づいていった。

 何本も何本もある腕がシャーロットに触れようと手を伸ばす。


「お姉ちゃん……ごめんなさい………」

「そんな……こんなのって……ひどすぎるわ……」


 シャーロットがしゃがみ込んで嘔吐し始めたのは、流石にガーネットも見るに堪えなかった。


「お姉ちゃん、泣かないで?」


 自分も泣いているのに、アビゲイルはシャーロットを慰め続けた。

 よほど妹の方がしっかりしているように見える。


「時間がないんだ、すぐにやれ。ノエルとあのアホの魔女が時間稼ぎをしているのもいつまで持つかわからない」


 ガーネットに急かされてシャーロットはアビゲイルの身体の様子を見た。

 泣きながら歪んだ視界で自分の妹と肉の塊の境目を懸命に探す。


「どこがアビゲイルの細胞なのか解らない……無理です……」

「ここで妹が死ぬのと、多少乱暴にでも助かるのだったらどっちがいいのだ。このまま放っておいたら間違いなく、この魔女の意識は肉塊に捕えられて失われてしまう」


 ガーネットがそう言うと、アビゲイルは恐怖に顔を引きつらせ、姉に縋(すが)った。

 ずっと怖い想いをしながらも耐えてきたのだろう。その感情がせきを切ったようにあふれ出す。


「うっぅ……お姉ちゃん……助けて…………」


 アビゲイルにそう言われ、シャーロットは涙を袖で拭い、アビゲイルの状態を魔術式を構築して確認し始めた。

 ひどく残酷な光景だが、ガーネットとノエルの主は黙ってそれを見ていた。


「うっ……っ…………解りました。やってみます」


 シャーロットは精密な魔術式を展開し、その肉塊から少しずつアビゲイルを分離し始めた。

 アビゲイルの上半身は胸の上まで肉塊の中に埋まってしまっていたが、徐々に身体が肉塊から分離を始め、彼女の華奢で幼い身体が肉塊から出てきているようだった。

 足や手がゆっくりと分離し始める。


「いいぞ、その調子だ」


 泣きながらそれでも着実に分離をしていった。

 施し始めてから数分経ち、もうほぼ分離が済んでいたが、胸の部分――――つまり、心臓の部分はまだ分離できていない。

 他の部位とは異なり、物凄く複雑に融合してしまっているようだった。

 心臓部分の分離を始めた時、アビゲイルに変化があった。


「おねえ……ちゃん……なん、か……変……あっ……あぁああ…………!」


 アビゲイルと同化している肉塊の手足の方が不気味に動き出し、アビゲイルの頭を沢山の手が掴み、内側へと引き込んでいこうとしていた。


「なんだ……!? まずい、引き込まれるぞ!」


 肉塊の部分がジタバタと暴れ始め、机やその上に置いてあった怪しげな機材などがなぎ倒されて床に叩きつけられた。

 ガーネットは抵抗される間もなくノエルの主を抱え、暴れまわっている肉塊に押しつぶされないように逃げる。


「何事だ!?」


 そこにノエルが現れた。




 ◆◆◆




【キャンゼルの部屋】


 キャンゼル自身、本当は理解していた。

 ノエルは自分を見殺しにすることくらい。

 それでもあの場で殺されてしまうより、それでも少しは長く生きながらえることを選んだ。それに、もしかしたら助けに来てくれるかもしれない。


 ――そんなわけないか。だって2回も裏切ったんだもの……


 一度はエマに情報を渡したこと。

 もう一度は魔女の心臓の誓約書を再現してノエルをおとしめた事。

 自分の立場は解っている。


 自分は大した魔女ではないこと。


 幼いころからろくに育ててもらえなかった。自分を生んだ母は魔族を扱いきれずに魔族に殺された。

 幼かったキャンゼルはそのまま路頭に迷った。

 強い魔力の魔女からは迫害され、人間からも勿論疎まれた。それでも魔術が使えるから殺されずには済んでいたし、人間たちから奪った食べ物で飢えをしのいだ。

 何の楽しいこともなく、そのまま成長した。

 最近魔女の本部の方でかなり女王が荒れているという話は聞いたりもしたけれど、自分とは縁遠い存在だと気にも留めなかった。

 そんな退屈で、何もないある日に赤い髪の美しい魔女が現れた。吸血鬼を従え、困ったような表情で歩いていた。

 そんな彼女にキャンゼルは声をかけずにはいられなかった。


 ――声……かけなかったら良かったかな


 キャンゼルがもし、ノエルに声をかけなければ今頃、あの町でなんの代わり映えのしない生活をしていたかもしれない。

 そうすれば命を危険にさらすことなくいられたはずだ。


 ――でも、それでも私はノーラが好きなの……


 必死なノエルの姿を見て、自分も必死になるということを見出した。

 力を持っているのにそれを誇示しない態度が好きだった。

 自分を一人の魔女として扱ってくれることが嬉しかった。

 魔女や人間、誰にでも優しいところが美しいと感じた。


 ――ノーラの為なら、死んでもいいかな


 一人でいると余計なことを沢山考えてしまう。

 色々な分岐点があったはずだが、キャンゼルは選択してこなかった。いつもその場の安定を求めて、一歩踏み出すということをしなかった。

 その罪が今悔やまれる。


 ――あたしは罪名持ちなんてなれないけど、あたしの罪は『怠惰』かしら


 そう考えていると、扉が開く音が聞こえた。


 ――ノーラ……!


 期待を胸に顔を上げると、キャンゼルは凍り付いた。


「大人しくしていたかしら? ノエル」


 そこにはクロエとゲルダの二人が立っていたからだ。

 キャンゼルは悲鳴を上げそうになったが声を出すとバレてしまうので声を押し殺し沈黙を守る。

 女王のゲルダを間近で見るのは初めてだったが、その恐ろしい風貌や残忍さを思うとキャンゼルは吐く息も震えた。


「…………」


 黙ってクロエとゲルダを見つめると、クロエは満足そうにキャンゼルを見ていた。


「ゲルダ、本体は俺がいただいていいだろ?」

「まだそんなことを言っているの? いつまでノエルに執着するつもり?」


 ゲルダが幻影のノエルの翼に触れようとしたとき、キャンゼルはもう駄目だと目をきつく閉じた。


「話が済んでないだろ。俺の話聞けよ」


 クロエがゲルダの腕を掴み、幻影のノエルの翼を触れようとする手を抑えた。

 キャンゼルは荒くなりそうな息を気づかれないようにゆっくりと呼吸する。心臓の音が相手に聞かれてしまいそうだと汗が噴き出てくる。


「いいの? あのことを言うわよ?」

「いつまでもそのことで俺を縛れると思うなよ」


 なんで揉めているのかキャンゼルには解らなかったが、なにかクロエがノエルに知られたくないことをしたということはキャンゼルにも解った。


「ふふ……いいわ。じゃあその反応を見て楽しむのね?」


 ゲルダはキャンゼルに向き直って不敵な笑みを浮かべた。

 キャンゼルはゲルダの顔を見つめて、何を言われるか身構える。


「まて、俺が自分で言う」

「好きにしなさい」


 クロエがゲルダに割ってキャンゼルの前に立つ。

 クロエはいつもよりも落ち着かない様子だったが、普段のクロエを知らないキャンゼルは落ち着きのない男の魔女だと思っていた。


 ――なんなの?


 中々話し始めないクロエに、ゲルダはトントンと指を組んだ腕に打ち付けている。

 クロエはひたすら話しづらそうに口を開きかけては閉じたり、目をしきりに泳がせている。


「わざとじゃなかったんだ。それは解ってくれ。いいな?」


 キャンゼルは声を出さずにゆっくりと頷く。


「俺は、お前にもう一度会いたくてお前たちのいた小屋に戻ったんだ」


 キャンゼルは黙ってそれを聞いていた。


「俺はお前に誤解されたままでいたくなかったんだ。あの晩のことは謝るよ。俺は……お前のことが……なんつーか、やけに……他の魔女とは違って見えて……」


 クロエはなかなかハッキリと言えない様子だった。

 キャンセルは緊張で話がよく頭に入ってこない。


「お前とをしたかった。お前はまだガキで意味も解ってなかっただろうな。俺も知らなかった。でもお互いもう意味は解るだろ?」


 ――クロエとノエルは子供のときに何かあったの……?


「クロエ、そこはどうでもいいでしょ? 早く言って」

「時間はあるんだからいいだろ」

「はぁ……」


 ゲルダはため息をついて顔をそむける。


「俺はお前と過ごした時間がずっと忘れられなかった。いや……俺はお前が忘れられなかった。俺のことを嫌っていても、男としてじゃなく、一人の魔女として扱ってくれただろ? だから……もう一度会いたくて小屋に行ったんだ。そうしたら……お前の髪の毛が落ちてた。それを持って帰ったんだ…………それを追跡魔術としてゲルダに使われて…………お前は捕まった」


 ゲルダはじっとクロエの方を見ていた。クロエはノエルの幻影しか見ていない。


「俺のせいだ」


 クロエはキャンゼルの頬に触れた。キャンゼルは黙って話を聞いていたが、触れられた瞬間一気に緊張が走る。


「お前が拷問されていたことは知らなかった。会わせてもらえなかったんだ。本当はお前と逃げようと思った。でも……この話をゲルダにばらされて、お前にもっと嫌われるのが嫌だった……」


 頬に触れていた手がゆっくりとキャンゼルの身体の方へ滑って行く。首筋やそのしたの胸の辺りまできたところでクロエは手を止めた。


「今は俺が嫌いでも、そんなことは時間が解決する」


 クロエは再びキャンゼルの頬に触れた。今度はなぞるようにではなく、しっかりと顔を上げさせるようにした。かなりクロエの顔が近い。


「これからお前は翼を切除したあと、俺のものになるんだ。そうすれば殺されたりしない。毎日俺が可愛がってやる。お前の眷属も一緒で良いし、人間のほうも殺さないでおいてやる。いいな?」


 クロエが身体を密着させ、キャンゼルに口づけしようとする。

 キャンゼルは目を閉じてそれを受け入れるべきだと判断し、目を閉じて自ら顔を上げ、クロエに口づけしやすいようにした。


 そこから、数秒経つ。


 キャンゼルはいつになってもクロエが自分の唇に触れてこないことを不審に思って目を開けた。

 クロエの顔は目の前にあった。それを見てキャンゼルは思わず息が止まる。


「お前、ノエルじゃないな?」




 ◆◆◆




【アビゲイルのいる部屋】


 僕は先ほどまで大人しかった肉の塊がジタバタと暴れ狂ってるのを見て何事かと思った。

 ご主人様の方を見るとガーネットがしっかりと守っている様子が見えたので、ひとまず安心するが、全く望ましくない状況だ。


「何してるの!? やめなさい!」


 アナベルは魔術式を展開した。

 話をしていた部屋の死体たちが一斉に動き出した気配を感じる。


 ――マズイ……


「アナベル、最後の実験だ。失敗したものから再構築できればもう一度実験できるだろ?」

「そうかもしれないけど、物凄く暴れてるわよ!?」

「いいからしかばねどもを一度部屋へ戻せ!」


 ビタンビタンともがくように暴れている肉塊を僕は拘束魔術で拘束しようとしたが、物凄い力と尚且つ対象が大きすぎて完全にはできなかった。

 かなり魔力を拘束に使っても、完全には抑えられない。

 抑えているのに無理に暴れようとするから、その肉の塊のところどころが裂けて出血し始めた。

 長く持たないと考えた僕は強引にアビゲイルとその肉の部分を切り離そうか考えたが、これだけ暴れていると下手をしたらアビゲイルまで真二つになってしまう。

 アビゲイルだけじゃない、この部屋にいる全員が危険だ。


「シャーロット、まだかかるのか!?」

「心臓の部分が複雑に融合していて……もう少しかかります……」


 ブチブチと自分の肉が裂けて出血しているにも関わらず、肉の塊は動くのを辞めようとしない。

 大気の水分を氷に変えてその肉の塊の足元を固めた。

 しかし、勢いがそれで収まることはなく、肉塊は暴れまわり足を引き千切ってまで僕らの方に向かおうとする。


 ――駄目だ、抑えていられない……!


 殺さないようにするには難しい。

 足元の氷を重ね掛けする。水分だけではなく、部屋にあるあらゆるものを絶対零度まで温度を奪い、足止めに使った。

 肉の塊も徐々に凍り付いて動きが鈍くなってきた。


 バキバキバキッ!!


 氷や、自分の凍った部位を砕きながら暴れている。


「シャーロット……まだ……!?」

「今……やっています!」


 肉塊が僕の腕を掴んだ。折られることを一瞬で悟って僕はそれを切り裂いた。

 肉塊は苦しそうにビタンビタンとのたうち回って暴れる。

 肉塊は千切れた部分から血が吹き出ている。端からどんどん凍てつき、動きが大分抑えられてきた。それでもまだシャーロットは終わりそうにない。アビゲイルは痙攣してビクンビクンと身体を震わせている。

 やっとのことで肉塊の身体がガチガチに凍り付き、やがてやっと動かなくなった。

 僕は拘束魔術と氷の魔術を一先ず解いて一息ついた。ガーネットとご主人様にかけていた幻術も気が散ってしまった段階で解けてしまった。


「あんた、何者なの……」


 驚いているアナベルを僕は肩で息をしながら一瞥した。

 肉塊が暴れて落ちた薬品同士が反応し、発火した。オレンジ色の光が部屋を照らす。


「あ……」

「……なに?」

「その赤い髪……!!」


 僕の髪の毛がその炎の光で赤く見えていることに自分も気が付いた。

 アナベルは僕に魔族のゾンビだちを飛びかからせた。それを切り裂くのは簡単だったが、その中にガーネットの弟が混じっていると思うとそうも簡単にできなかった。

 ゾンビの一匹が僕の腕に咬みつく。顎の力がすさまじく、僕の腕の肉はすぐに持っていかれてそこから血液が噴き出た。


「あぁっ……!」


 僕はソレがラブラドライトではないと判断すると、すぐさまその口から血の滴っている低級魔族のゾンビを粉々に粉砕した。

 腐った肉が散らばり、異臭が漂う。

 しかし一体だけでは済まず、次々に僕の身体にまとわりついて僕の身体を噛みちぎってくる。腕、脚、首、あらゆる部位に激痛が走り、僕は一々確認しながら一体ずつに魔術をかけた。

 しかし間に合わず、僕は噛み千切られる。


「あぁああっ!!」


 ゴキッ!

 ブチブチブチッ!!


 その嫌な音が自分の身体からしている訳じゃないと解ったのは数秒後だった。

 ガーネットが周りの屍を僕から引きはがし、屍の首をむしり取っている。屍の群れから僕を担ぎ出し、首の傷からあふれる血液に口をつけた。

 ガーネットが食事を済ませると、僕の傷はみるみる塞がった。


「何をしている!? さっさと一気に始末しろ」


 ガーネットはシャーロットの近くに着地した。


「ガーネット……」

「ぐずぐずす――――」


 ガーネットは言葉を途中でやめた。

 その嫌な予感は、外すことを知らない。ガーネットの視線の先を見ると、彼の弟が立っていた。

 濁った青い目と、首のつなぎ目、死人の肌。


「ラブラドライト……」


 ガーネットは動きを止めた。

 僕は唖然としているガーネットから離れ、困惑しているご主人様の手を引いてシャーロットの元へ行った。

 ご主人様は言葉をなくしていた。

 僕もこの状況でかける言葉をどこかへなくしてしまった。


「まだ……!?」


 それでも、シャーロットに対する言葉は滞りなく出てくる。

 震える声で僕は尋ねた。


「もう少しです……」


 ガーネットの方を見ると、以前目を見開いて弟のゾンビの方を見ていた。


「おい、ラブラドライト、私だ……お前の兄だ!」


 震えている声は弟の方には届いていない様子だった。どこを見ているか解らない目を見つめている。

 ガーネットは拳を強く握った。彼自身の爪が自分の手の平に食い込み、血が出る。


「あははははははは、無駄よ。死んでるもの。あたしが動かしてるだけ」

「!!」


 ラブラドライトはガーネットに飛びかかった。ガーネットの身体に鋭い爪が食い込む。


「あ゛ぁあ゛あ゛ぁぁあ゛ぁ!」

「やめろ! ラブラドライト!! お前は操られるだけだ!」


 ガーネットが脚でラブラドライトの腹部を思い切り蹴ると、弟は壁の方へ飛んでいった。


「ガーネット、落ち着いて。彼はもう死んで――――」

「黙っていろ!!」


 蹴り飛ばした弟の方へ走って行き、弟を押さえつける。

 腕を押さえるが、暴れている弟を強く押さえるほど、暴れている弟の肉が裂け、骨がむき出しになる。吐き気を催す悪臭が立ち込めることもガーネットは感じないふりをした。


「白魔女! 私の弟を治せ!」

「無駄だって言ってんでしょ! そいつはあたしの実験動物なのよ!」


 アナベルが魔術式を展開する前に、僕は素早くアナベルの腕を魔術で切り落とした。

 両腕とも床に落ちたアナベルは叫び声も上げずにズリズリと壁にへたり込んだ。

 ラブラドライトは暴れていたのが止む。術式が解かれたのだろう。

 僕はすぐさまアナベルに掴みかかる。


「リサはどこにいる?」

「はっ……リサなんてどうするつもり? 完全に壊れてるのよ」

「いいから言え!」


 研究室で燃えていた炎を呼び寄せ、炎を槍の形状に変えてアナベルに近づけた。彼女の皮膚がじりじりと焼け始める。

 アナベルは死体が置いてあった部屋ではなく、その反対側の部屋をちらっと見た。


「あの部屋か」


 僕はアナベルから離れ、指さされた方の部屋へ向かおうと立ち上がる。

 ガーネットは弟を抱き上げて懸命に呼びかけ続けている。

 僕は見るに堪えないその状況から目を離し、リサのいる部屋の扉を掴んだ。

 その部屋は厳重に鍵がかけられている。


「ふふ、馬鹿ね」


 アナベルの声が聞こえたと同時に、僕は後ろから腹部を貫かれた。


 僕の右腹部から剣のようなものが突き刺さっているのを確認する前に、意識が一瞬遠のいて僕は倒れる。

 倒れながら扉の鍵を壊し、開けた。

 同時に僕は開けた扉の部屋に身体の半分が倒れ込む。

 後ろにいた僕を刺した魔女のゾンビに向かって懸命に手をかざすと、粉々に粉砕させた。

 死肉がちらばり、吐きそうな匂いがした。吐きそうになって腹部に力が入ると剣が食い込んで激痛が走る。

 ご主人様は僕の方に走ってくるのが見えた。


 ――駄目だ、来ちゃいけない!


 僕は厚い水の膜を形成し、ご主人様を包み込んだ。

 彼はその水の膜を壊そうとするが、柔軟に変形して壊すことはできない。何か言っているようだったが音も遮断されて聞こえなかった。


「あぁ……くっ……」

「ノエル!」


 ガーネットも腹部に傷を負い、抱えていた弟を手放した。

 弟はゆっくりと立ち上がり、ガーネットの首を掴んだ。


「がはぁっ……やめろ……ラブラ……ドライ……ト……!」


 倒れた拍子に、床に転がっていたアナベルの腕が見えた。切断されているにも関わらずその腕は奇妙に動いていた。

 僕はズルズルと引きずられて扉の前に出され、ゾンビたちは扉を閉め、鎖をたどたどしい動きだが、着実にしっかりと巻き付けた。扉は再び固く閉ざされる。


 ――まだ魔術は続いていたのか……


「シャーロット、その魔術をやめなさい。やめないと全員ぶち殺すわよ」


 そう言われたシャーロットは目をギュッとつむり、涙を流しながら術式を解いた。

 アナベルは自分の腕を自分の口で拾い上げ、腕を台の上に置いて元の腕の場所とくっつけた。口で器用に縫い針を使って腕を縫って行く。


「う……うぅ……あぁ……ッ……」


 腹部の痛みと、首の圧迫感で声を出すこともろくにできない。僕は腹部に刺さった剣を抜いた。抜いた部分からドクドクと僕の血液があふれ出す。


「はぁ……はぁ……」

「こんなところまでノコノコやってきて、生きて帰れると思っているの? 下手に抵抗しなければこのまま苦しまず殺してあげる」


 首を絞められているガーネットの窒息感で僕も意識が遠くなってきた。剣を抜いた部分は徐々に塞がり始めていたが、傷が塞がり切るまで持ちこたえられない。


「ノエル…………!」


 ガーネットは弟の手を何とか引き離した。その瞬間絞まっていた気道が確保され呼吸がまともにできるようになる。

 僕はやっとの思いで思い切り息を吸い込む。


「っはぁッ……はぁはぁ……ゴホッ……ゴホッ」


 咳き込み、息をしている間にもガーネットとラブラドライトは激戦をしている。見なくてもそれは体感できた。

 僕の身体に無数の裂き傷ができてはゆっくりと塞がって行く。

 僕はアナベルに手を向けたが、僕の身体を何人もの魔女のゾンビが取り押さえる。

 堅く閉ざされたリサの部屋に背中を打ち付けられた状態で僕はしっかりと抑えられている。


「大人しくしていないと駄目じゃない」


 アナベルは自分の腕を縫い終わったらしく、その手の動きを確認している。


「放せ!」

「黙っていて。抵抗したらあの水泡の中の人間を殺すわよ」


 そう言われてしまうと僕は何もできなくなってしまう。

 何もしなくても僕らは殺されると解っていても、ご主人様に危険が及ぶことだけはどうしても怖気づいてできなくなる。

 すると僕の背後から声が聞こえた。


「ノエル……? ノエルなの?」


 扉ごしだったからよくは聞こえなかったけれど、か細い声が真っ暗な部屋の奥から聞こえた。その声にはどことなく聞き覚えがある。

 そうでなくても、この扉の中にいるのは彼女しかいない。


「今、『ノエル』と聞こえたわ……」


 ジャラジャラと暗闇の奥から音が聞こえる。


「リサ?」

「はぁっ……本当? 本当にノエルなの?」


 息を大きく吸い込む音が聞こえた後に、はっきりと僕の名前を呼ぶ声が聞こえる。少ししわがれていたけれど、その声は間違いなくリサの声だった。

 鎖の音であろうが、ジャラジャラという音はやがてガシャン! ガシャン!! という激しい音に変わっていった。


 ガキン!


 と何かが奥で外れた音が聞こえた。

 その音への注意をかき消すように僕の腕を屍が再び食いちぎる。


「あぁあああああぁッ!!!」


 スパンッ!

 ……バタン。


 ゾンビの頭が床に転がった。同時に僕の背後の扉が後ろへ倒れた。何が起きたのか解らない僕は目の前の光景をただ見ていた。

 ゾンビの口には僕の血の滴る肉が口の中に入っていて、それが見えた。

 他のゾンビも数秒後に細切れになって床に散らばった。


「なにっ!?」


 アナベルは何かを恐れているように硬直した。ガーネットの相手をしていたラブラドライトは僕の前に立ちふさがる。

 ズリズリと部屋の奥から何かを引きずる音が聞こえて、僕は腹部を押さえながらゆっくり身体を起こした。

 アナベルが恐怖にひきつっている表情を見て、僕はリサの話をしていたときのアナベルの様子を思い出す。


 ――アナベルはリサが怖い……?


 暗闇から僕の両脇からズルリと血色の悪い細い腕が伸びてきて、僕を後ろから抱きしめた。

 やけに冷たい腕だった。

 僕はヒヤリと動きが止まる。


「本当……? 嘘じゃない?」


 僕の肩にリサの頭が乗せられる。

 金髪でボサボサの長い髪が僕の肩にかかった。

 僕に絡みついているその腕は注射の痕と思われる痕が沢山あった。

 僕をしっかりと掴んで抱きしめ続ける。


「あたしね、ずっとあなたと暮らしていたのよ。あなたに毎日ご飯を作って、あなたは毎日あたしを愛してくれて、ずっと……ずっと一緒なの。ずっとよ……ふふふふふふふ…………どうしたの? 腕、傷ついているわ……解った。アナベルにいじめられたのね……」


 屍共がザワザワと集まってくる。

 アナベルはリサに注視している間に、シャーロットに目配せして魔術を続けるように伝える。

 アナベルはそれに気づかない程リサを注視していた。


 ――なんだ? リサはそんなに強い魔女じゃなかったはず……何をそんな恐れている?


「り……リサ、違うわ。わ……私がイジメたわけじゃない」

「アナベル……ダメよ。こんなことしちゃ……」


 ズルズルズルズルズル……


 闇の奥から音が聞こえる。

 何故だろう。リサではない何かがまだ部屋にいるのか?


 ――誰か別にいる?


「ねぇ、ノエル……」

「なに?」


 変な汗が出てくる。背後の何かの気配が何か解らない。先ほどまでずっと余裕そうな様子だったアナベルがあんなに怯えている。

 僕を抱きしめていた腕が急に強くなり、僕の身体に強く爪を立てた。

 それは明らかに魔女の力の強さではない。鋭い爪が僕の鎖骨の下あたりの肉を切り裂いて胸に食い込む。


「あなたはノエルじゃないわ。だって……ノエルは……――――」


 暗闇の中から大蛇のような胴がズルズルと見えた。

 リサは僕を掴み上げたまま、狭い部屋から出てきた。


 それは魔女の姿ではなかった。


 腰から下が鱗で覆われていて、そこから蛇のような長い胴体がズルズルと動いている。

 リサが下を向いていた顔をゆっくりと上げると、目は太く赤い糸で縫われていて開いていない。

 口は左右に裂けた分は太い糸で縫われていた。


「昨日私が殺して食べたもの」



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