第3話 光芒

 好きなアーティストは誰ですかと聞かれたら、B'zと答えます。


 でもライブに行ったことはありません。CDはアルバムを買ったり、レンタルしたりしています。「好きなアーティストは誰ですか」という質問者が、ライブに行ったりシングルやアルバムを全部追っかけてるほどの熱量を期待しているのなら、なかなかそこまでは行きません。かといって他にそれくらいの熱量で追いかけているアーティストはいません。会社の後輩にナオト・インティライミが大好きな子がいますが、その子はライブツアーで遠征をガンガンしていました。好きなアーティストって言うとそれくらいを期待されてしまうんでしょうか。


 確かに、ライブに行くくらい好きなアーティストと言うのなら、Sound Horizonのライブは行ったことがあります。アルバムもメジャーデビュー後のものは一通り買いました。インディーズ時代のものは一部持っていました。それくらい言うと質問者が期待する「好き」に近いのかもしれないけど、でもサンホラって言って認知される気がしないから言わないでいます。紅蓮の弓矢でリンホラは有名になったけど、あの独特の世界観とかを一般人に伝えても変な空気になるだけです。


 はじめて買ったB'zのアルバムはACTIONでした。B'zと言えば名探偵コナンの主題歌を担当するバンド、というイメージが強かったので、ギリギリchopとか耳馴染みがあります。時代ですね。

 それで、アルバムとかを買えるくらいおこづかいがもらえる歳になってから買ったのがそれです。おこづかいは貴重なものだから、そのアルバムもすごく大切にして、毎日のように聴いていました。


 アルバムの中に、光芒という楽曲があります。

 いわゆるアルバム限定の曲で、タイアップやシングルカットされたものではなかったと思います。間違ってたらごめんよ。普通の楽曲よりも長くて六分くらいあった気がする。「普通の」楽曲というのは、サンホラ基準に考えると六分は長くもなんともないからです。その辺感覚がおかしいのはわかっています。


 光芒のラストの大サビを聴いたとき、学生ながらに震えました。それまで人生の虚無感というか挫折というか、そんな悩ましく苦しい部分を歌ってきたのに、最後の最後に一筋の光が射すんです。それでものすごく励まされたというか、活力をもらったというか、とにかく大好きな曲になったんです。

 それ以来、私のなかで他にも好きなB'zの曲はたくさんあるけれど(反骨精神の塊みたいなザ・マイスターとかも好きです)、光芒が一番好きなのは変わりません。


 なんで今光芒の話をするかというと、最近また光芒を聴くことができたからです。今はオーディオプレーヤーを持ち歩かないので音楽を聴く機会が減っていて、音楽から疎遠になっていたのですが。

 四月からの自粛期間中、B'zの公式YouTubeチャンネルでリリースされたライブDVDをすべて無料で配信するという、大盤振る舞いどころじゃねえぞという事態が起こりました。ライブに行ったことのない私は、この機を逃してはなるまいぞとライブ映像を漁りまくったわけです。私の四月、五月はそんな感じでした。


 HINOTORIという、周年ライブがあったのですが、そこで光芒が歌われたわけです。びっくりですよ。だってシングルカットされてない、ACTIONにしか(たぶん)入ってない曲ですよ? 周年ライブは投票で人気のあった楽曲が多く演奏されるので、光芒は多くの人に愛された曲なんだと思います。私と同じように感じた……わけではないだろうけど、私のようにこの曲が好きな人がたくさんいるんだって、それはとても嬉しかった。

 このときの稲葉さんの喉の調子はすこぶる悪かったみたいで、ツアーの中でも負荷のかかる光芒はセットリストからカットされることもあったようです。それでもツアーファイナルで、高音のロングトーンがきついこの曲を、当時できる最大限のパフォーマンスで歌ってくださったことがすごく嬉しかったです。


 もちろん、LOVE PHANTOM→HINOTORIの流れは神がかっているので、興味があったら人生で一回は聴いて欲しい見て欲しい。

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