ギルドって響きがいいよね

「評価が欲しいですねぇ」


「あん♡ ぁぁ♡」


「なんでこういっつも気持ち悪い始まり方なの!?」


 ビクンビクンと体を震わせる土居さん。


 しかしマイキーらは彼を放置し、全く別の話に花を咲かせていた。


「つーか毎日定時更新は基本だろうが。アクセス数が欲しいならそれぐらいやっとけ」


「こんなクソ小説を毎日更新したところで……需要のないところに永遠と供給だけするようなものですよ? 地獄ですよね」


「たしかに」


「あぁん♡♡♡♡♡♡♡♡」


 土居さんの度重なる咆哮に、ついにサユキが耐えきれなくなった。


「うっせえなジj土居さん!」


「……今お前ジジイって言ったよな?」


 思わず心の声が漏れたサユキ。たまらずライデンは非難する。


「まーこんなところじゃなんなんだし、一旦移動して話を聞くか」


「そうだね。二人に任せて、私は家で寝てこようかな」


「逃がすかボケ」


 結局、彼らはギルドの酒場的なところで土居さんの話を聞くことになった。


 空は雲行きが怪しい。酒場近くに雨避けの場所はないから、彼らは雨が降らないように軽く願った。


「じゃあ、よろしくお願いしますね。土居さん」


 昼時とはいえ、酒場は比較的空いている。マイキーは安堵した。土居さんも、リラックスした状態でティンボコ山で迷った経緯を話してくれるだろう。


 席に着くなり、土居さんはマイキーの挨拶をガン無視し、店員を呼んだ。


「ここにある酒ありったけ持ってこい!!」


「まさかの酒豪!?」


「っていうか、なんて私まで来ることに……」


 なんだかんだで着いてきてしまったサユキ。土居さんから一番遠い端っこの席に座っている。


「そもそも土居さんはどうしてそんなに喘ぐのですか?」


 当然の如く上裸のマイキーが、読者全員の気持ちを代弁する。


 ハゲ散らかしていてボロボロの衣服を身にまとって喘ぐ四十歳過ぎの変態──仮にも乙女であるサユキは、とにかく生理的にこいつを受け付けない状態であった。


「喘ぐおじさんとかほんと無理なんですけど……」


「あぁ、嫌だったのか。それならやめるよ」


「……は?」


 サユキの文句に応じて、土居さんがついに重い口を開こうとしていた。


 そもそもなぜ嫌がっていない可能性を考慮したのか甚だ疑問だが、そんなことは気にせずオッサンは語り始める。


「事の顛末を語ろう──僕はいつものようにキノコ狩りに行こうと思い、妻によろしく言ってティンボコ山に旅立った。すると、山のふもとで見覚えのない魔物に追いかけ回された挙句、僕は三日も飯を食えずに彷徨っていた──あ、君のキノコは要らない」


「そうだったのですか。……普通に喋れる上に、なんともテンプレを脱せていないこの設定──僕のボケにもごく普通のおもんないツッコミで処理していきましたからねぇ。こいつはボツでしょう」


「担当編集的思考!?」


「つーか初対面の相手にマイキノコ(マイキーとキノコを掛けた高度なボケ)を見せつけてんじゃねえよ!! おっぱい」


「ん?」


「ひひひ、まぁこれもご愛嬌と言うことでひひひ」


「どんなご愛嬌だよ!! おっぱい」


「ひひひ、ツッコミが面白くないですよひひひ」


「無理やりキャラ付けすんな!! あ、そうだ! おい土居さん!」


 サユキが必死にシリアス路線へ持っていこうとするので、おっぱいライデンとひひひマイキーは焦りを隠せない。


 次なる一手をどう打つか──もはや土居さんの処遇などどうでも良かった。


「なんだい?」


「あの、土居さんが安全にキノコ狩りをできるように私たちに協力させてく「ところで乳首つねってくれませんか?」


「良いのか!? ありがとう!」


「いや待ってどっちに喜んでるのかわからない!! まさか地区日じゃないよね!?」


「ヒロインとしての矜持を漢字変換で保とうとすな」


 まぁなんやかんやで、三人は土居さんのキノコ狩りが安全に行えるよう、ティンボコ山を制圧することにしたのであった。サユキは帰りたかった。


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