運命の行く末を、海碧の煌めきと共に

ロマンスから始まる、満ち引き豊かな物語。
期待を裏切らない扇情的な展開の中、少女の覚悟と、男の情愛が見て取れます。

誰しもを魅了して止まない、美しき娘・ユーリ。
硬骨な船乗り・ジェイクもまた、彼女の花のような可憐さに引き込まれ、その心に触れていく内に想いを滾らせる。
そして、曰く付きの島へ彼女を送り届けること、囚われの運命を切り開く為に、共に船路を進むことを決意するーー


水平線を境界として描かれる海原の壮大さ、厳しさ。読者の心を小波の如くさらう美しき語りは、潮風が頬を撫でていくかのよう。

そして、何と言っても魅力に溢れる登場人物の面々が楽しい。
したたかに飛び交うジョークで笑顔になり、時に悲しみ、寄り添ってあげたくなるほどの切なさが、夕空へ棚引く雲のように伴います。
気付けば甲板で、舵を握る青年を愛ある眼差しで見守り、船室でワインを煽りながら、少年の巻き起こす風に噴き出していることでしょう。


読者をも船旅へと誘なう「海の王と風の娘」の世界。単眼鏡で見据える運命の島を目標に、いかりを上げて、追い風に帆をはらませよ!

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