第5話 触手村の守護者

「落ち着きましたかな?」

「落ち着きましたかな? じゃ、ねーよ! 今の現状を見れば分かる、ここの何処に落ち着いていられる時間、場所なんてあるんだ!?」

「深呼吸しましょうか、スーハ―、スーハ―。リピートあふたみー」

「スーハ―、スーハ―」

 目前に控えるオッサンの指示に従った結果、頭は冷静になるものの余計に、この現状のヤバさが滲み出ていた。

 特にR18がこの世界に蔓延り、村の住人でさえ疑わず赤面する者すら一人もいない現状が見えてくる。

 ……全く、貞操観念すら存在しないとか、どうなっていやがる。

「冷静になった途端、余計にこの世界が何処まで酷いのか分かったよ。ありがとな、おっさん」

「礼なんて不要です、必要なのは精力ですよ。若いお客様」

「おいおい頭のネジが吹っ飛んでやがるぜ、このおっさんはよ」

「そうへぇ、さしゅがにわしゃしが出てきたのはまじゅか……ったひゃも、しれないわね」

「は?」

「どうしましたかな?」

 オッサンの後ろ、胸元がざっくり開かれた紫の服を着用したカーマが見えたが。

 ……見えたけれど。

「おいおいおい! これはエ〇ゲの世界か? ヤバイって、いくら何でもよォ!」

 R18を連想させるウネウネと四方八方へ動く紫の紐状――触手がカーマの全身を抑えつけ、口腔内へ侵入していたのだ。

 ……ど、どうする? 倒せるのか? いやいや俺はさっきまで一般人だったし。

「ひゃぁあ。中が……熱イッ……たしゅケッ……はぅっ! もう……」

「おい、オッサン! コイツは何なんだ? 倒せるのか?」

「倒せるも何も……」

「時間がねーんだ、倒せるか倒せないかって聞いているんだ、コッチは!」

「いや。そう言われましても……」

「これだとR18展開になりかねないぞ! 止める方法を教えてくれよ、オッサン」

 ……じゃないと、俺は童貞を捨ててしまう。

「カーマとの約束を果たさないと……男として腐る気がする。それだけは嫌なんだよッ!」

 ……何だかんだ、カーマはうるさくて下ネタど変態女神だが良い奴だ、と思いたい。

「お前達がやらないなら、俺が……この気持ち悪い触手野郎を、叩きのめす!」

「いやいやお客様、待って下さい! この触手様は、その……非常に申し上げにくいのですが……」

「なんだ、オッサン。まだ何かあるってのか?」

「この村を2000年間守ってきた守護者なのです」




「……は?」


「ワシがこの村の守護者じゃ、よろしくな、そこのニンゲンよ!」


「……は?」

 夢なら覚めてくれ。








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