第22話 待ち合わせなはるか

 デートの約束をした翌日。待ち合わせ場所の駅前に到着したのは、約束の一時間前。

 カップルっぽくデートがしたいというはるかの要望もあって、二人で待ち合わせをすることにしたのだ。


(やっぱりあれは、はるかだよな)


 モニュメントの前に、じっと彼女が立っていた。当日の朝、はるかがえらく早く家に出たので、もしかしたらと思って僕も早く家を出た。そしたら案の定だったと言うわけだ。


「はる──」


 呼びかけようとして、思わず立ち止まってしまった。遠目でも、周囲の女生徒は一線を画すほどに可愛いはるか。その彼女が手鏡で零れる前髪を気にしてソワソワしたり。服の裾を気にしたり。ずっと、落ち着なさげにしているのだ。


「っっ……!」


 そんな彼女を見てるだけで、思わず胸が高鳴ってしまった。だって、あんなきれいな子なのに……髪型は大丈夫かしら、服はおかしなとこないかなって、一時間も前から僕のことを待ってくれていたから。これで、グッとこない男性はいないだろう。


「ごめんね、お待たせ」

「あっ……やっぱり来てくれた」


 僕の顔をみて、はるかは驚いていた。


「どうして……まだ、一時間も早い……?」

「彼氏だからかな? これでも、彼女の考えてることくらいはね」

「嬉しい……実は私も隆弘なら来てくれるかなって……」 


 そう言って、幸せそうな顔を見てると、言わずにはいられなかった。


「好きだ……」

「えっ!? 不意打ち!」 


 顔を真っ赤にしたはるかに文句を言われてしまった。だけど、こんな表情も見れるならまた言ってもいいのかもしれないなんて思ってしまった。


「そ、それよりも! 今日はデートよね?」

「僕はそのつもりだけど」

「私だってそのつもりよ! 恋人のあなたと遊びに出ているんだからっ!」


 そう言った瞬間、はるかは紅潮する。


「っ~~!」


 自分で言っててはずかしくなったみたいだ。 


「それで、どうしたの?」


 そんな姿の思わず胸が高鳴ったけど、できるだけ僕は平静を装って尋ねる。


「だから、私の格好見て言うことないの……?」


 上目遣いになりながら僕のことを見るはるか。


 今日のはるかの格好はネイビーのフリルブラウスに淡いクリーム色のロングカート。それと、麦わらのハンドバッグにスポーティーなスニーカー。


 ただ、これだけのシンプルな格好なのに、すごい似合っていた。キメつけすぎないけど、オシャレしてきたのが分かる格好。そういうことができるっていうのは、それだけはるかのセンスが良いっていうことだろう。


「うん、すごく似合ってて可愛いよ。ちょっとびっくりした」

「っ~~! ……ありがと。すごく嬉しい」


 僕の言葉に照れて真っ赤になっている。それから僕の耳元に口を寄せ、


「……私もね、隆弘のこと大好き」


 ボソッと、抱きしめたくなるようなことを言ってくれた。

 その瞬間、思わずフラッとしてしまう。


「ちょっと、どうしたのよ!」

「ごめん、はるかが可愛すぎて思わずクラッってした」

「ば、バカッ! と、とりあえず行くわよ……」


 恥ずかしさを誤魔化すように、僕の前を歩くはるか。


「それでさ、まずどこに行くの?」


 今日のデートプランは、はるかが自分で決めたいと言っててから任せてある。


「まずは食事から行きましょうか。予定よりだいぶ早いけど」


 そう言いながら苦笑するはるかを見て、僕も笑ってしまった。今日は楽しい一日になりそうだ。

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