みはるとなつめ つづき

 みはるの電話で、無事に帰り着いたこと、両親には思ったより責められなかったこと。姉も少し、態度が柔らかくなったことが分かった。家族から拒絶されなかったことに、私も少しほっとする。


 「よかったね」


 「はい、・・・・・うーん、でもまだあんまり実感がわかないんですよねえ。態度が急に変わりすぎだというか、宿縁の怨敵みたいな関係が急に子を甘やかす親みたいに優しくなって気味が悪いというか」


 「そう・・・かもね。でも、実は最初からあんまり、変わってなかったんじゃないかな」


 「・・・どうして、そう思うんですかー?」


 「意外とさ、誰もかれもが相手のためを思って動いているのに、すれ違うってのはよくあることなんだよ」


 「・・・」


 「相手を敵になんてみたくない、でも、自分にも余裕がない、そのくせ、相手に勝手に期待して、期待されて。それで裏切ったとか、裏切られたとかいうんだよ。根っこのところで敵なんて本当はいないのにさ」


 「むーん、ちゅうしょーてきなおはなし」


 「あはは、ごめん。うまいたとえが出てこなかった」


 「うーむ、まあ、2・3年後の私がばっちり理解しているでしょう!いえーい!!」


 「あはは。あ、話変わるけれど、今日、ちょっと楽しかったよ?」


 「む?なんですか?浮気の話ですか?私、独占欲強いので、愛人は一人たりとも許容しない主義なのですが」


 「・・・何の話してんの。それが仕事場でみはるのお弁当がねーーーーーー」


 3時間ほどの長電話の後、私達はおやすみといって電話を切った。途中、話に出てきた根岸とかいう同僚男性に浮気レーダーが反応しかけたが、なつめさんの態度から脈なしということで捨て置いた、あはれ顔も知らぬ根岸さん。しかし、私が離れている間、どこの馬の骨ともしらぬ輩がなつめさんに近づくともしれぬ。可及的、速やかに私の計画を達成せねばならなかった。なんか、過去一、頭が良くなっている気がするぞ、私。多分、気のせいだけど。でも、楽しいのは確かなので、なつめさんの迷惑にならない程度にこれからも電話しようと心に誓って、私は床に就いた。


 さあ、本当の闘いはこれからだ。

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