おまけ

「というわけで、脈なしよ。どきっした根岸くん」


「げ、やっぱりそうですか、なんとなくそんな気は…」


「まあ、そもそも心を解きほぐした張本人と、解きほぐされたあとに惚れたやつじゃ勝負にならんわ」


「ですよねー。しかし、…毎度思いますけど、石田さんって察する力半端ないですよね」


「ふっふっふ、もっと褒めなさい」


「でも、相手は年下の女の子っすよ。そういった関係になりづらいから僕にもワンチャン…」


「今の色々と自由なご時世で本気でそんなこと言ってんの?」


「言ってみただけです…」


「やーやー、やっと仕事終わったよ」


「あ、部長お疲れ様です」


「あら部長、仕事受け持ってくれてありがとうございました」


「え、押し付けてたんですか」


「石田くんが、坂上さんと飲みに行って話を聞きたいっていうからどうしてもねえ」


「助かりましたー、肝心の坂上さんはもう抜けちゃいましたけど」


「で、何があったんだい?」


「部長も好きですね…」


「他人の幸せな変化は心の栄養よ?ちゃんと摂取しといたほうがいいわ」


「僕は今、不幸まっただ中なんすけど」


「んー?なんかややこしいことになってるね?」


「まあまあ、気長にきいてください。きっと楽しいですから」


「うん、そうしよう」


「ま、僕が不幸で残り3人幸福なら総合で見たら幸福の方が多いんすかねー」


「はは胸を貸そうか?根岸くん」


「いいねえ、人が幸せなのはいいことだ」


 夜は更けていく。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る