第17話 そして、父親は約束通り

 そして、父親は約束通り、ねだったものを娘たちに渡した。

 シンデレラは、父親から貰ったハシバミの小枝を持って、お母さんのお墓に行き、その小枝をお墓に挿して泣きました。

 シンデレラの涙が掛かったその小枝は、ぐんぐん大きくなって、すぐに大木になりました。

 シンデレラはその木の下で、毎日泣いていました。

 すると、その木に、真っ白な鳥がやって来るようになって、シンデレラが願ったものを投げ落とすようになったのです。


「ふーん。この鳥はお母さんの生まれ代わりか?」

「それは、最後までわからないの。それより達也、そろそろ準備しないと」

「そっか、もうそろそろか」

 達也と愛は、舞台そでから、舞台裏へと移動を開始する。


 舞台では、王が国中の娘を招いて三日間パーティを開くというお触れをだしたのだ。

 そして、その娘の中から、王子の花嫁を選ぶというのだ。

 国中の娘たちは色めきたった。それは、シンデレラの姉たちも一緒だった。

 シンデレラに手伝わせ、綺麗に着飾りお城へと出かけていくのだ。


「私も、お城に行きたい」

「なにをいっているの。あなたには着ていくドレスもないでしょ」

「でも、私にも招待状が来ている筈です」

「やかましいわね。だったら、この豆を拾ったら、行かせてあげる」

 そういうと、豆をかまどの灰の中に、投げ捨てました。

 そして、豆を拾おうとして、灰まみれになったシンデレラに言うのです。

「そんなきたない恰好で、お城に行くのかい? 門番に捕まって、牢屋に入れられてしまえばいいのよ」

 シンデレラは悲しくなりました。そして、ハシバミの木に行って泣きながら祈りました。

 そこに、やって来た一羽の白い鳥は、悲しそうに一声泣きます。

「やっぱり、この願いを叶えることは、鳥さんでも無理なんですね」

 シンデレラがそう言った瞬間、数羽の白い鳥たちが、シンデレラの元にやって来て、シンデレラのぼろぼろの服を引き千切ります。

 服を引き千切られたシンデレラにスポットライトが集中する。

 一瞬映し出されたシンデレラの姿は、一見、全裸。実は肌色のレオタードに、サランラップをぐるぐる巻きにして、下は、透明のごみ袋にやっぱり何重にもサランラップが巻きつけられているのだ。

 しかし、それも一瞬で、きちんと認識出来た観覧者が何人居ただろうか。

 そのサランラップは、スポットライトの光りを乱反射して、ダイヤモンドのように虹色に光輝くドレスに変身する。

 感極まったシンデレラは、「鳥さんありがとう」と叫んでいた。

 鳥は、まだまだ、終わりじゃないというように一泣きすると、木の根元に、ティアラとガラスの靴が落ちている。

 シンデレラが、ティアラを付け、ガラスの靴を履くと、今度は、鳥たちが木のつるを咥えてブランコにする。そうして、シンデレラをお城まで送り届けたのだ。


「上手く言ったわね。それにしても、この演出を考えた部長さん、なかなかやるわね」

「うん。うん」

 愛の言葉に、頷き返す達也、すでに目に涙を浮かべているのだ。


 そして、シンデレラを一目見た王子は、シンデレラのとりこになる。王子と踊るシンデレラは、ひと時の幸福に浸るのです。

 でも、この魔法が、真夜中の一二時になったら解けることを聞いていたシンデレラは、一日目と二日目までは、上手く姿を消したが、三日目は、さすがに、王子が離してくれない。

 一二時の鐘が鳴って、王子の手を振り切り、逃げ出したシンデレラは、階段の所まで走って来たのです。

 しかし、王子もシンデレラを引き留めるために必死だったのです。階段の一番下の所に、鳥もちの罠を張っていたのです。

 鳥もちにガラスの靴を取られるシンデレラ。すぐ、後ろには王子や衛兵たちが迫っている。シンデレラは決心して、鳥もちに取られた片方のガラスの靴を脱いで逃げ出しました。

 そうして、間一髪のところで、魔法が解けるのです。


「でも、魔法が解けたところで、白い鳥がボロボロの服をシンデレラに掛けるんだ。あの服はどこから?」

「破れた服を復元したんでしょ。魔法に突っ込むのはよくないと思う」

「そうだな。でも、鳥もちか? おかしいと思ってたんだ。ピッタリの靴が階段で脱げるなんて」

「そんな、些細な事、ストーリーに影響を与えないわ」

「いや、現実主義者を納得させる必要があるだろう。俺たちの間じゃ、王子様に見つけてもらおうとして、自分から落とした説が有力だったぞ」

「なに、その説?」

「まあ、後は、王子様がシンデレラを見つけて、めでたし、めでたしだな」

「でも、グリム童話じゃあそうは行かないのよ」

「えっ、そうなのか?」

「そうなのよ。黙って見てなさい」

 すっかり、達也と愛は解説係になったようだった。

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