第19話 特殊超級職の《覚醒》

 でかなり遅れてのことだが本題となる座学やこの世界での一般常識に入った。

 まあ俺の経験とほぼ差異がない。やはりアイツらの推測通りに世界は繋がっているのだろう。地球とすらそんなに差がなかった。

 月は12で30日の計360日。曜日は惑星の代わりに主要魔法属性を充ていた。月曜日から火・水・土・風・無・闇・光。つまりは闇、光がお休みである。ちなみに草案そのものは先輩【勇者】らしいが計測したら普通にこうなったらしい。

 まあおかげでこの世界が球体である事が分かったと言えば朗報なのだろうか。少なくともドローンの物量による世界地図製作が可能だと判明したくらい。認識遮断の結界を張られていると流石に不可能なんだけどね。



 さてまずは魔物。

 体内に魔力を内包する器官である〈魔核〉を有しておりその身体はあらゆる素材へと変化する。

 そして様々な能力を有しており職を持たない一般人ではどんなに弱かろうと太刀打ちできない。

 またその中でも幻魔種と呼ばれる他とは逸脱した魔物も存在する。ソレらは死してなおその直前の戦闘で最も活躍した者になんらかの形で生前の能力を模した上で適格者に必要となるものに変化するという変わった特性がある。無論、適格者以外にはソレを使用する権利を持たないらしい。


 ジョブ。上級・中級・下級は必ずしも成れる訳ではなくそのレベルの上限まで上げる事も出来ない場合も多い。

 例外は存在する。【勇者】や【英雄】そして【天職】持ちの場合である。その2つの特殊超級職としての特性は器の拡張。就ける職の数もそうだがソレらがカンストした際の相互影響は絶大なモノである。

 【天職】の場合は〈個人素質パーソナル〉に起因するものであり【天職】のみに関して果てなき成長が可能でありその副産物として【聖騎士】や【闇騎士】と言った複合系統【天職】の元となる職に関してカンストが可能である。


「ところでお主……特殊超級職の覚醒とはなんじゃ?」

「いつの間に先生?」

 参考書を向かい合いで3人で見ていたらいつの間にか隣に【大賢者】が居てそう聞いてきた。

「ついさっきじゃ。で答えろ」

 まあいいか。普通は知らなくても良いが全く知らないは後々に差し支えが出るだろうし。それに少なくとももう既に【魔帝】サイドが動いているとするならば前線に出なくとも良い特殊超級職は覚醒してもらっていた方が良いかもしれない。まだ1人たりとも見つかっていないけど。

「じゃあ逆に聞く。そもそも特殊超級職とは?」

「私自身は【先導者】だけど考えたことないわね」

「姉さまは……。でも良く考えればどっちも超級職でしかないね」

 皇女姉妹が互いに顔を見合わせてそう言い合う中【大賢者】は1人ごちる。

「生まれながらの超級職。星々や神々に祝福されし人類の希望」

「ああ。その利点は分かるよな?」

「そうじゃない……リソースかのう?」

「そうだ。特殊超級職は出生時から全ての出来事をリソースとして【天職】とその特殊超級職に完全利用できる」

 コレは絶大なまでな有利だ。何せ少なくとも言語を理解して応用できるくらいには成長しないと職は得られないが特殊超級職にでもなればそのリソースを絶えず供給し続ける。故に普通の子供が職を得る頃にはもう既に下級職を1つカンストしたのと同じくらいのステータスを持ちうる。

「ただそれだけじゃあない」

 あくまで特殊超級職とは星と神に必要とされ生み出せれたモノ。それは【魔帝】にも言えることでもある。世界に干渉し得る運命力というその存在が世界そのものに与える影響力のようなものをある意味振り切ったのが特殊超級職である。

「それが覚醒だ。覚醒は本人のパーソナルに起因するが大方は似たようなものだ。ユニークジョブ化して元の特殊超級職が空位になる」

「……なるほどのう」

「分かるのか?」

「お主の特殊超級職の【救世主】と同じモノか」

「えっ……とでも新一さんの【救世主】は私の【先導者】と同じモノでは?」

 確かに。表面的に見れば全く同じ特殊超級職だ。【救世主】も【勇者】と同じ後天性のものではあるものも戦力が揃いさえすれば超強力だ。

「ひょっとして……いやでも……だとすれば」

「ミリア?」

 これは気付いたか。

「いえなんでもありませんわ。でもならなんで名乗り出ないのですか?」

「色々とあるんだよ。それに【魔帝】サイドに何千年それこそ初代の頃からの生き続ける存在が居たらそんな異分子は確実に殺すか利用するだろ?既に《武魔鋼将》が来てるんだぞ?」

 俺の手札で数枚は明かしていない。それこそこの【救世主】くらいしかこの世界では使っていない。

「もし【勇者】が死に【英雄】がおらずでどう戦うつもりなんだ?」

「【救世主】にも似たことができると」

「ああ。性質としてはほぼ同じだ」

 人類の希望か世界そのものの希望かはさておき。共に人類を滅ぼす存在を討つことは可能である。ただ違う点があるとすれば【救世主】は敵と認識したのならば例え同族であろうと神であろうと討つことができるようになるのだ。そして【魔帝】や【魔王】は大抵の場合は世界に敵対するので討てるのだ。

「なら良い。お主のアレも実戦配備を考えておるのだろう?」

「ああ。【先導者】に代表される速度型の超級職には不要なものだが堅さを求められる職や中級職以下なら便利になるだろ。あと行軍時も」

「疲れを知らぬ機鋼の魔馬か。この草案では“原子核融合炉”とは?」

「簡単に言うとソレ1つで大国の首都1月程度のエネルギーを軽く賄えるトンデモ火力だ」

 勿論相応のデメリットもあるが俺の想定していた使い手であるならばほぼ関係ないのだが魔力で賄う方はこの世界では良い気がしたので本来の製作方法を渡した。

「ほう。まあ良い。それでしばらくは此処におれ」

「分かった。クラス連中とも距離を置いておいた方が良いだろうしな」

 俺の成長速度が異常でありその正体が【大賢者】にすら割れかれないのは正直困る。この提案は魅力的だった。




 そして2ヶ月が経った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る