どう見ても夫婦にしか見えない二人はお互いをカップルとすら思っていない。

吉城ムラ

プロローグ

「おい、きたぞ。あいつらだよ」

「例の夫婦カップルか」


 彼らが噂する『夫婦カップル』とは、如何なる者達だと皆様思われるだろうか?


 それは、ここ河原木かわらぎ高校の文化祭にて行われる——


 【校内ベストカップルコンテスト】


 ――にて、各学年部門において一位を獲得したカップルたちの事である。


 毎年開催されるそのコンテストは、学内行事の豊富な河原木高校でも特に人気を集めるイベントである。

 毎年盛り上がるイベントであるが、今年はとりわけ盛り上がった。

 それは、史上最高得点で一位を獲得した一年生カップルが誕生したからである。

 その二人は、しかしながら自分達は付き合っていないと言い張っていた。


 ――だが。


「ねぇ、今日は何食べたい?」

「バイトが夜まであるから、軽くでいいよ」

「わかった。パスタとサラダにしとくね」

「10時までには帰れると思うから」

「うん」


 こんなやり取りを毎度交わしているのである。

 

 これは、天文部所属の眼鏡の似合うイケメン『大村おおむらかける』と、登山部所属のオーストラリア人の父を持つハーフ『大西おおにしメイ』の、本人たちにとっては何気ない日常風景を切り取った——


 ——少し特殊な夫婦物語である。




 おっと、一つ忘れていた。

 紹介が遅れたが、私はこの話でナレーションを務める、『ナレーター』と言う者。

 気軽にナレちゃんとでも呼んで欲しい。


 では、次話で会おう。

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