第6話 本名

 両親不明。生まれたときから施設で、それもさくっと抜け出して、ひとりで戸籍とか一人っ子支援とか、そういうのを駆使して生きてきたというのを説明した。

「本当に、そんなことが」

「ちょっと難しいところは老人ホームにいる見知らぬおじいちゃんとかおばあちゃんに手伝ってもらって、後見人的な感じでごまかしましたけど、何か?」

「違法じゃないのか?」

「子供が生きたいように生きることのどこが違法なんですか。弁護士の先生にも聞いたけど大丈夫だって」

「ああ、さっきのマネージャか」

「そう。弁護士でマネージャの先生」

 最初に歌う人。なんか読みにくい顔。

「おまえ。いや、ちょっと手を貸せ」

「やですよ。感情読むんでしょ」

「だからだ。いいから貸せ」

 手を触られる。

「もしかして、あなた、へんたいですか?」

「そうか。嘘言ってないんだな。それに、目の前の宿題のほうに気が行っている」

「はい。休んでるので宿題の量が多くて」

「わかった。手伝ってやる」

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