かなり強火の苦境にもめげず立ち向かう少年の姿

 壮絶ないじめに遭っていた幼馴染みの女の子を見捨ててしまった少年が、勇気を振り絞って己の過ちを取り返すお話。
 オカルトもののホラーです。まつろわぬ〝あちら側〟の存在が出てきて、いろいろ人の世に仇なすそれを、どうにかしようと普通の人が頑張るお話。ただなにより印象深いのはそのハードコアさというか、彼らに立ちはだかる苦難のあまりの壮絶さです。
 もちろん怪異の存在そのものやその引き起こす惨禍については言うまでもなく、それらに限らない日常の部分さえも、っていうかだってもう冒頭の意味段落からして「いじめに対する復讐のシーン」なんですからまったく容赦がないです。開始早々顔を切りつけられてのたうつ女生徒を、『床の上で虫みたいに手足を暴れさせている』とさらっと虫けらに例えてしまう、この文章の毛羽立つような重たい黒さ。総じてどこか暴力的というか、漂う不吉さや不気味さにいつも危険な雰囲気の伴う、この火力の高い恐怖感がたまらないお話でした。
 普通の少年ひとりに負わせるにはあまりに強すぎる苦難、どう見ても玄人向けの難度設定を、でも臆することなく前へ前へと進んでいく主人公。その動機すら過去の過ちに対する贖罪だったりするので本当に筋金入りです。怪異の不気味さや恐怖感ももちろんあるのですが、それ以上に『そこに立ち向かう主人公』の姿が強く胸を打つ、ひとりの少年の青春と冒険の物語でした。