第34話
秋葉純一郎の記者会見終了後、俺たちは緊急作戦会議を開いていた。
要点は以下のとおり。
・バイオハザードは政府主導によるもの
・《
・《エデン》には政府、秋葉純一郎が出す七つの試練を達成しなければいけない
・一つ目の試練は二週間生き延びること、それ以降の試練等はそのあと発表する
・ただし俺、秋葉瑛太を生け捕りにすると無条件で安全地帯に招聘される
・一部の行政、インフラ、企業が提供するサービスは継続し、内閣官房のHP等で随時、情報を更新していく
「……どう思いますか村雨先生」
まずは何より彼女の意見が聞きたかった。
色々と決断を迫られた会見だったことは間違いない。
特に生け捕りの話が出た瞬間は心臓を握られている気分だった。
「そうだね……ひとまず霧島くんと瀬奈くんに言っておくことがあるんじゃないのかね? 家庭環境のことを」
たしかにその通りだ。まずはそこから説明しないと彼女たちの謎は深まるばかりだろう。
「隠していてすまなかった。現内閣総理大臣、秋葉純一郎は俺の実父なんだ」
その告白を皮切りに俺は家庭環境を話し出す。
兄、傑との関係。腹違いの兄弟であること。俺は純一郎の愛人の子であること。
それが原因で最後まで関係の修復ができなかったこと。
そして――父親との確執。その全てを打ち明けた。
俺の過去を知った二人の第一声は、
「大変だったね秋葉くん」「大変だったな秋葉」
なんと労いだった。
瀬奈と霧島先輩は包み込むような優しい表情を浮かべている。
秘密を隠していたことを厳しく追及されると思っていた俺は面食らってしまう。
「……怒っていないんですか?」
「怒る? 何にだね」「人間なんだから過去に色々あって当然でしょう。私だってそうじゃない」
「そう言ってもらえて嬉しいよ。けど――」
――チーム秋葉は解散した方がいい
そう告げる俺。
記者会見では秋葉瑛太の写真だけでなく、パネルや動画で特徴をこと細かく報道していた。今後俺と一緒に行動することは彼女たちの危険度も増すということ。
なにせ俺たちが相手にしなければいけないのは感染者だけでなく、奴らの恐怖から逃れたい生存者たちが加わったわけだ。
全国民が敵に回った――と言っても何ら極端じゃないだろう。
彼女たちが男の性を刺激する、容姿の整った才女だからこそ暴漢の手に捕まってしまったら――最悪の妄想を拭い切れない。
さらに俺が別行動を取ることになったとしても彼女たちの頭脳として遠隔から指示を出すこともできる。
純一郎の話だと電気通信事業者のサービス・機能は継続されるとのこと。
スマホ一台あれば、彼女たち――チーム村雨とのサポートは十分可能だ。
と言ったことを説明したのだが、
「霧島先輩。秋葉くんを拘束してもらえるかしら」と瀬奈。
言われるまでもないと俺の背後に回り込む先輩は豊満な胸を押し潰すように密着・拘束してくる。
「おっ、おい……どういうことだよこれは?」
「ふふっ。エデンに行きましょうか秋葉くん」
☆
キャンピングカーのリビング。
俺は変わり果てた自分の姿に驚きを隠せないでいた。
姿見に映り出されていたのは見事なメイクで別人に生まれ変わった人間。
俺は――女装をさせられていた。
「うっ、けしからん……実にけしからんぞこれは」
膝をついた霧島先輩は溢れ出す鼻血を手で抑えながら興奮している。
……ん? 興奮⁉︎ 何に⁉︎ 何に興奮しているんですか?
「ヤバッ……秋葉くんあなた――美少年だったのね。どこからどう見ても美少女よ? ……はぁ、はぁ」
瀬奈さん? 言っていることがよくわかりませんが? とりあえず鼻息が荒いんで落ち着いてもらえますか?
助け舟を求めて村雨先生に首を振る。
彼女は親指を立てながら言う。
「よく似合っているよ瑛子」
「瑛子⁉︎ 誰ですかエイコって!」
瀬奈の言うエデンというのはなんと女装のことだった。
ブラックなシリアスシーンが始まるかと思ったらこれである。勘弁して欲しい。
一向に口を閉ざす気配がない女子一同。
騒ぐ彼女たちに玲ちゃんの目が醒める。
眠気まなこをこすりながら俺をジッと凝視したかと思うと、
「……お姉ちゃんって呼ぼうか?」
幼女にまでイジられる俺だった。
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