第31話 家族写真

 僕は病院を後にして、また丘の上に来た。さっきまでと何も変わることなく横たわる三人。誰にも邪魔されることのない、僕らだけの空間だ。

 父は真波の手を掴み、もう片方の腕はその上を通って母の方に伸ばされていた。真波の横に寝転ぶ母は二人の方を向いている。まるで微笑むかのように。僕はカバンからあの写真達とあれを取り出す。写真は手に持ち、あれはポッケにしまう。カバンをその辺に投げて捨て、母と真波の間に入り込む。僕の部屋にあった写真を真波と父の手に握らす。ポケットの中身は右手に握った。そして真波の写真を僕が左手に持ち、母と共に握る。上から見たらまるで家族写真のようだ。


 空を見上げるとこの写真のように星が綺麗に輝いていた。一つが強い光を放つ。


 真波。最後まで君は僕を見守ってくれるんだね。これでいいのかな?君はこんな僕を許してくれるかい?もし生まれかわれたら君はだけは幸せにならなきゃ。余計なものなんかいらない。ただ共に笑い合い、支え合える人の元に生まれてくれれば。互いに愛し合える存在がいることがこの世で一番の幸せなんだから。神様、もし貴方が本当にいるのなら真波だけは幸せにしてあげてください。彼女はもう十分な程の重荷を背負ったから。それでもまだ足りないと言うのなら、今度は僕だけにその重荷を与えてください。父さんにも母さんにも背負わせないで。あの人達も十分に傷ついたから。僕だけで大丈夫です。

 ただもしも僕達四人が来世でも出会えるなら、またこの星をみんなで観られるといいな。それは行き過ぎた願いでしょうか?


 そして右手を真っ直ぐに振り落とす。手を放し、右手で真波の手を強く握る。横を向くと僕の方に向かって微笑んでいるようだ。




 見上げた空には星が輝く。中でも強い光を放つものが四つあった。そしてそれは夜空に消えていった。


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