第1話 僕のやり方

どうやって個性を作るべきか…


偏差値50.0、容姿は可もなく不可もなく、身長170.6cm。

全てが平均値の僕、山田太郎は考えた。

髪型を変えてみる?授業中に勇気を出して発表?


…だめだ、それは個性じゃない。

それに、そもそもビジョンが見えてこない。


言っておくけど、

別にクラスに不満があるわけでも、いじめられてるわけでもないよ。

ただ、僕だって健全な高校2年生。

多少目立ちたいし、恋愛だってしてみたい。


自分の力では個性を編み出せない。

無駄だと悟った僕は、本を頼った。

早速書店に赴き、手当たり次第に物色する。


そして、一冊の本にたどり着く。



『人間をひとつひとつわかりやすく。』


これだ。

僕の本能がこれだと叫んでいる。


まず、一般的な人間というものを完全に理解する。そうすることで、その「一般的な人間」に多少の差異、つまり個性を付け加えることができるはずだ。


今日の僕はなんて冴えているのだろう。


僕は無心で読み進めた。

全ては個性を身に付けるため。


今の僕を周りから見たらだいぶヤバいやつだろう。

大人しかいない哲学書コーナーで、高校生が鬼気迫る表情で本を読んでいるのである。


ちなみに本は買った。



残る問題は個性の付け方。

家に帰り着いてすぐ、僕はYah◯o!知◯袋を頼った。


Q,僕には個性がありません。もっと目立ってみたいです。どうすればよいでしょうか。


ほとんどの回答が「誰にでも個性は既にある」とか「気づけていないだけだ」とかだったが、僕は慰めを求めて質問したんじゃない。


…お前たちは知らないんだ。

僕がどれだけ普通、平均というものに呪われているかを。

僕が求めているのは解決策・・・なんだ。


そんな中、一つだけ、ちゃんと解決策を答えてくれているものがあった。


A,目立つ人を観察して、真似してみてはどうでしょう。


…なるほど。

目立つ人にはそれだけの個性がある。

つまり、真似をすれば、その個性を吸収できるに違いない。そういうことだろう。


一筋の光が見えた気がした。

準備は整った。やっとスタートラインに立てたのだ。


全ては個性を手に入れるため。


僕、動きます。







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