第29話 熊本②

 俺達は阿蘇山の中岳周辺に着陸した。

 この辺りには、流石にこの状況の中では、人影も無いが、大規模な火災の影響で全体的な温度は随分高く感じる。


 俺は着陸すると、取り敢えず温度を下げたいから。そのままフェンリルへとトランスフォームを行った。

 アブソリュート0絶対零度を展開しながら、全員で進む。

 能力的には、みんな人外の能力を持っているので、中途半端に車で移動するよりも走った方が早いのが、なんか怖い……

 

 俺とミコは見た目も4足獣だから、不自然さは無いけど、里香たちはケモミミと尻尾があるだけの、人間だからな? 時速80㎞とかで走ると普通に怖い。


「勇気ぃい、ちょっと一回止まってぇえ」

「どうしたんだ?」


「あのね、私達が走るのは別にだ丈夫だったんだけど、靴が無理なの。ほら見てよこれ」


 そう言って里香達が見せて来た靴は、地面との摩擦に耐えれなかったようで、底から少し煙が上がってた。

「しょうがねえぇな。ミコ最大化してみんなを背中に乗せてやってくれ。愛美は飛べるんだから、走らずに飛んでついて来いよ? 大体バニーの格好に合わせた、ピンヒールの靴で良く走れたな?」

「そこは、この格好で居る以上は美学だよ。ハイレグ網タイツで、運動靴はありえないでしょ?」


「まぁ良く解らんけど、愛美がそれでいいなら別に何も言わないよ」


「ミコ、ちょっと聞きたいんだけど、ゴーレムって倒したら融合できるのか?」

「出来ないのじゃ」


「じゃぁここは倒しても、進化できないっていう事か?」

「既に融合を果たしている者は、スキルの入れ替えは出来るのじゃが、ここのゴーレムでは初期のギフトスキルが手に入らないから、進化は出来ないのじゃ」


「それって人はどうしようもないじゃん?」

「その替り、ただ破壊するだけであったり、焼き尽くすだけで有って、他のダンジョンの様な、人や動物を殺して吸収すると言う行為が無いのじゃ」


「うーん…… でも結局破壊をするんだよね? 人も物も」

「そうなのじゃ」


「俺はどうなの?」

「勇気は問題無く倒したゴーレムにトランスフォーム出来るのじゃ」


「つくづく俺チートだな。このダンジョンを攻略すると利点ってあるのか?」

「ここでは、下層まで行けば、魔法金属を手に入れる事が出来るのじゃ」


「それって、それを使ったらモンスターに有効な武器とか作れるって事?」

「そうなのじゃ、世界中のどこかのダンジョンに存在する、モンスター以外の精霊種族であれば、武器や魔道具の知識が有るのじゃ」


「え? それって今初めて聞いたけど……」

「知識レベルⅥ以上の情報じゃったのじゃ」


「とりあえず、ここも攻略してスタンピードを止めれば良いって事だな」

「そうなのじゃ」


「ミコ、その精霊種族の居るダンジョンは何処か解らないのか?」

「まだ知識レベルが足りないのじゃ」


 その後は里香と美里さんと香奈さんの3人はミコの上に乗って、熊本市内へ向けて進んだ。


「この状況じゃ、生存者を探す事は不可能だな。阿蘇市内にいた自衛隊の人達くらいしか、生き残りは居ないかも知れないな」

「それでも、人が生き残って居れば必ず復興出来る日は来るはずよ。私は人の力を信じるよ」


「美里さん。時々恰好良い事言うよね」

「そう? 惚れた?」


「まぁ嫌いじゃ無いですよ」

「私は勇気君が、人類の希望になるって信じてるからね。側にいて少しずつさせて貰うわよ」


「そこまではっきり言われると、逆に嫌な気はしないもんなんですね。なんか利用してやろう的な人には絶対協力する気は無かったのにな」


 そんな話をしながらも、俺はアブソリュート0を展開しながら、下通辺りにあるダンジョンの入口近辺まで、移動して来た。


 ゴーレム自体は、別に敵意を持って襲ってくるわけでなく、ぶつかれば破壊をしてくるという感じの動きだった。

 それも俺にとっては、絶対零度の範囲内に入ってくれば、美里や里香の爪攻撃で砕けてしまう程度の敵であり、脅威にはならなかった。


 ゴーレムを動かすためのコアのような物が、存在する様で、破壊をすればちゃんと光の粒子が、吸い込まれているので基礎的な攻撃力を上げる事は出来ているのだろう。


 ここまでに倒して来たゴーレムは。


 マッドゴーレム☆

 ラヴァゴーレム☆☆

 ロックゴーレム☆☆☆


 力強化Ⅲ パッシブ

 形状変化

 バーニング

 合体 

 

 興味深いのは、合体スキルだ。

 もしかして、里香や愛美と合体できるのか?

 里香は能力的に被りが多いから別として、愛美は転移や水系の俺の使えない能力を持っているからな。

 ミコは…… 里香の従魔だから無理かな?


 でも…… 合体とか絶対違う方向に勝手に勘違いして盛り上がりそうだよな。

 うちの女性陣は……


 3種類の敵の中で、質の悪いのはラヴァ溶岩ゴーレムだな。

 溶岩が1m程の高さの2足歩行の人型になっているようなモンスターで、歩き回ればその部分が燃え上がるし、アスファルトも解けてしまうほどの温度を持っている。


 一体だけであれば、何も問題無く消防車でも対処出来そうだが、毎分100体程度の勢いで、3種類のゴーレムが吐き出されている。


 ここで問題なのが、マッドゴーレムなんて泥なんだから弱そうなもんだが、ラヴァゴーレムと一緒に出て来る事でその泥で出来たボディは高熱でセラミック化されて、硬度が上がっている様だ。

 木造家屋などでは進行が止められない様で、まっすぐに突き抜けて、行進をしている。

 コンクリート製のビルなんかでも、ロックゴーレムの質量攻撃で破壊され、街全体が瓦礫の山となっていた。

 

 既にダンジョン発生から10日が経過している状態では一分100体として一日144000体。10日で140万以上のゴーレムが吐き出されているのであれば、南九州はほぼ壊滅していると考えるしか無さそうだ。


「このダンジョンは悠長にやってる暇は無いし、一気に片付けるからな」

 俺達は熊本ダンジョンに突入した。

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