第21話 転移で戻った防府基地

 俺は『トランスフォームエンシェントドラゴン』と念じて、ドラゴン形態になると愛美に声を掛けた。


「えーと、脚に捕まって貰う事になるけど大丈夫か?」

「え? 足限定なの? 竜騎士みたいに背中に乗っかるとか駄目?」


「まぁそれでもいいけど、里香は小指に捕まってたよ」

「それ何だかやだよ、手綱になるようなのって無いかな?」


「肌触り的に縄とか付けられたら何か嫌だしな、これでいいか?」


 そう言って取り出したのは、肌触りの良さそうなパンティーストッキングだ。

 これなら、何枚か結べば強度もありそうだし、肌触りは保証付きだ!


「えぇ、大丈夫なのかな?」

「まぁバニーガールのスタイルで、堂々と出歩くよりは大丈夫だと思うよ?」


「でもこのスタイルって凄い動き易いし、結構快適だよ?」

「愛美が良いなら別に構わないけど……」


 そういいながら、愛美はストッキングを結んで手綱を作って、首の付け根の辺りに跨った。

「何だか、首太いから大股開きになっちゃうよ」


 激しく見たいけど、首の後ろの付け根部分を自分で見る事って出来ねぇよ。

 と思って、大空に飛び立った。


 防府までは、一時間もかからずに到着した。

 相変わらずウルフの姿は結構見かける。


 自衛隊基地の側にある、市民球場のグランドに着陸して、トランスフォームを解いた。

 素っ裸の俺の上に肩車された、バニーガール。

 中々シュールな絵面えづらだ。


「勇気君は、変身解けるたびに裸なのは趣味なの?」

「趣味では決して無い」


「えーとここを記憶して、一度松江に戻ったらいいんだよね」

「ちょっと服は着させてくれ、このまま戻ると色々誤解されそうだし」


「誤解されてもいいんだけど、誤解じゃ無い様に既成事実にしちゃう?」

「いや、それはまだ遠慮しとく。馬男たちと同じになるし」


「へぇ、まじめなんだね。でもちょっと安心したかな。勇気君も男だしそう言うの求めてるんだろうな? って勝手に想像しちゃってたよ」

「求めて無いと言えば嘘になるけど、それはやっぱり責任を取って面倒を見る覚悟が無いといけないと思う」


「そっか。でも本気で来てくれるなら、ウエルカムだからね!」

「理性が保てなくなるから、早く戻ろうよ」


「了解」


 愛美が転移を発動すると、無事に里香たちが待っていたビルの屋上へと、到着した。

「お帰り、勇気。愛美さんに襲われたりしなかった?」

「気になるか?」


「え、まさか…… しちゃった?」

「大丈夫だよ、誘惑してみたけど相手にしてくれなかったよ」


「そうなんだ。良かった。って愛美さん誘惑したんですか? 駄目ですからね絶対」

「それは取り敢えず良いから、防府に移動するぞ。うさ耳先輩達もみんな手を繋いで下さい」


「「「はーい」」」


 俺達は、再度愛美の転移により、防府市民球場へと転移をした。

 そこから父さんに念話を繋げ、迎えの車が出せるか聞いてみた。


「父さん、今市民球場にさっき言っていた女の子達連れて来たけど、車って自衛隊の人に出して貰えるのかな?」

「ああ、勇気に話を聞いてから既に許可を取ってあるから、俺も一緒に乗って行く」


「ありがとう父さん」


 それから30分程で、自衛隊の随分ごつい感じの兵員輸送車が迎えに来てくれた。

「勇気、久しぶりだな。随分かわいい子達が揃ってるな」

「父さん、エロい目で見たらダメだからね。そう言う被害を間近で見てしまった子達だから、その辺りは頼むね」


「そうか、一応自衛隊の隊員さん達は女性に来て貰ってるから、大丈夫だ」

「ありがとう。夢は元気?」


「ああ、何とかな。状況が状況だけに強がってる部分も多いと思うけど、小学生たちの面倒を見たり頑張ってるぞ」

「そうなんだね」


「子供も多いの?」

「今、基地内に1万人弱くらいの人数が居るけど、3割程が未成年だな」


「そうなんだね。後でお菓子類とか多めに出しておくね」

「それはきっと喜んでもらえるな。だがどうやって運んでるんだ?」


「その辺りは、内緒と言いたいけど父さんには後で伝えるよ」



 ◇◆◇◆ 



 俺達は、防府の航空自衛隊基地に到着した。

 こういう状況だから、間違いが起こりにくいように、家族区画、男性区画、女性区画に分かれていて、愛美の学校で起こった様な、状況にならない様に配慮して有った。


 まだ、この基地内に居る人で自衛隊員以外の人では、獣人化している人はいないようだ。

 逆に、自衛隊員の人は一部の女性隊員と、事務職以外の人はみんな狼獣人へと変異していた。


 俺は、一度父さんに連れられて、母さんと夢の居る区画へと案内された。

「お兄ちゃん、大丈夫なの?」

「ああ、なんとかな」


「だって、お兄ちゃんがあんな一杯、物資とか持って来たんだったら、どんな怪獣みたいな姿になってるんだろ? ってマジで心配したんだからね」

「あ……ああ、それはまぁその、色々だ」


「勇気、こんな世界になっちゃって、この先どうなるか分からないけど、後悔はしない様に行動しなさいね」

「母さん、ありがとう。何をしたらいいかも分かんないけど出来る事を見つけて頑張るよ」


「で? どの子が本命なの? お母さん的にはバニーはまだちょっと勇気には刺激が強すぎると思うよ? 里香ちゃんの方が純情そうよね」

「母さん? 後悔しないようにって、そっち系?」


「当り前じゃないの、お母さんの様ないい女を選びなさいよ?」

「まぁ頑張る」



 久しぶりの親子の対面をした後は、父さんと自衛隊の基地司令の東さんと言う人と、空自のエースパイロットであららぎ一尉という、赤い髪と狼耳、レッドウルフの尻尾を生やした女性が同席していた。


「初めまして正木君、お父さんが一緒に居るから勇気君と呼ばせて貰って良いかな?」

「はい、構いません」


「もうこんな状態だ、日本も国として機能はしていない。それでも我々は自衛隊員として、この国の人々を守ると決めた。勇気君がもし私達残された者にとって、有益な力や知識を持っているなら、ぜひ協力して欲しい」

「凄いですね、尊敬します。こんな状態になったら人より少し力がある事を、ひけらかすような人ばかりになるかと思っていました」


「君はそうなのかい?」

「解りません。でも自分なりに答えを見つけたいとは思っています」


「勇気君の能力は、ラノベで出て来るようなアイテムボックスを使えるのかい?」

「はい、その能力は持っています。だからと言ってその能力で荷物運びの仕事をしようとは思っていません。ただ、手に入れた品物を、ここに、僕の父さんや母さんがいるこの基地には、持ってきたいと思ってます。それを父さんたちがどのように活用するのかは、任せます」


「そうか、今はそれだけでも助かる。航空機も既に燃料に余裕がなくなってきているので、格納庫を一つ正木さんの管轄で開けておこう。そこに支援できる品物があれば、補給して置いて欲しい」

「解りました。特別必要な物があれば、父さんに伝えて貰えれば、定期的に僕が父さんから聞いて、入手出来れば持ってきます」


 東さんとの話が一段落ついたところで、今度は蘭さんが口を開いた。

「勇気君。単刀直入に聞くね。君はドラゴンとは関係があるの? そして広島ダンジョンの消滅とも関係があるよね?」

「隠してもしょうがないから、言いますね。ドラゴンは僕です。そして広島と松江のダンジョンは僕が潰しました」


「松江ももう無くなったの?」

「はい」


「君は今は何で人の姿なの? 君と一緒の女の子もそうだけど、モンスターを倒すと融合して、獣人形態になるんだよね?」

「僕は、とある事情で、最初に倒した敵が防府ダンジョンのボスでした。それによって、恐らく最強の能力を身に付けたと思います。その能力の名は『トランスフォーム』自分が戦って倒した、あらゆる形態の敵に変身が可能です」


「なんですって……」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る