第7話 ライバルよ死ね
武神ジャイアントはその城を真っ直ぐに見つめている。
ベランダに悠然と構える1人の男性。
そいつこそが武神が生前ライバルと認めていた奴であった。
しかし彼は武神のように冒険に出るのではなく、国を良くする為に働いていたはずだ。
その結果国王として認められた。
しかし武神は理解出来ない。
「お前はあれ程の卑怯な事をした報いを受ける覚悟はあるな? この国など滅びてしまえば良いのだ自分の事しか考えない自己中心的な人類等滅びてしまえ」
「なぜ、俺達がお前達を処刑したか知っているか?」
「心臓だろう? 胸の中に何かがないのだ。それが心臓だろう」
「その通り、その心臓は新しい大陸にあります。返して欲しいですか?」
「もちろんだ。心臓があれば人間に戻れる気がする。なぜだろうそんな気がするんだ」
「なら条件ですこの城を見逃してくれれば新しい大陸の神融合の大陸に連れて行きましょう」
するとジャイアントはげらげらと心の底から爆笑していた。
「お前はそうやって言葉巧みにおいらを騙して来た。だがなぁ、地獄にはお前よりすごい嘘つきがいるし、天界にはお前よりすごい理想主義者もいる。そんな奴等にもまれたら、同じ手は通用しない、ここでお前も死ぬし、この国は今日で滅びる」
ライバルと認められた男は額から冷や汗を流しながら。
何かないかと考えているようだった。
ジャイアントはそれを面白そうに眺めている。
そしてそのライバルは腹をくくったようだ。
「なら、俺と戦え武神ドッデム。俺を殺したらこの国から出て行け」
「ナンセンスだ。お前とは嫌でも戦うし、全てを奪う。それだけだ。何自己犠牲なんか出している。そう言うのをおいらが生きている時にやって欲しかった。いっぱしの国王になったってか?」
するとライバルの男である国王は真っ直ぐに武神を見ていた。
そして彼は両手を包帯でぐるぐるに巻き始める。
ベランダの手すりにバランスで立ち上がると。
「いざ、尋常に」
「しょーーーーーぶ」
ジャイアントの拳がベランダの手すりに命中する。
その動作はほぼ人の眼では認識出来ない程のスピードであった。
だが巨大な城のベランダから手を突っ込み、中をかき乱して手を引っこ抜く。
その右手から腕にかけて走る姿がある。
そいつはライバルの国王であり、奴は頭の部位まで到達すると。
拳で耳を拳打した。
頭がくらっとしてくる。
これは眩暈が起きている。耳に攻撃させる事により頭の中のバランス感覚が一時的に崩れたのだろう。
ジャイアントはぐらりと地面に尻餅をついてしまう。
その時に沢山の建物を粉砕する。
【生命の岩】のおかげで、体は傷つく事は無い。
ちゃんと生命の岩を変形さえて短パンを装備している。
「うらららららら」
ライバルの国王は連打の拳をジャイアントの頭に命中させ続けた。
その結果ジャイアントは気絶に追い込まれる形になりそうだと認識した。
咆哮を上げる事により自分自身の感覚器官を整える。
右手と左手を構えて、ライバルだった男を弾く。
そいつは城の壁に激突して、血反吐を吐いている。
それでも気合を上げて。こちらに突っ込んでくる。
たかが1人の人間、たかが1人の国王。
それを守ってくれる兵士も民も全てが破壊され。
あるのは数名の配下と家族、彼等は城にいる。
ライバルの国王が死ぬ事は、彼等も死ぬ事になる。
国王は退く事が出来ない。
「神融合の大陸が無ければ、沢山の餓死者が出た。だからお前を生贄にした」
「それだけなら説得出来ただろう、だがあの子を殺したのはなぜだ」
「そ、それは、あの子達はお前を助けようと目論んだから」
「だから皆殺しにしたのだろう、ならおいらも同じ事をするのみ」
武神は右腕と左腕を組んだ。
まるで上から目線そのものだが。武神ジャイアントの全身から多種多様なオーラが噴出する。
その色は虹色を通り越して無限に輝いている。
その輝きに圧倒されてライバルだった国王は動けない。
「そ、そが伝説の」
「そうだ神話級拳法だ」
神話級拳法とは失われた拳法とされる。だが武神は自らの修行の成果で見出す事が出来た。
それは一瞬で終わった。
何が起きたのか誰にも理解出来ないほどのスピード。
まさしく神の如くの拳であった。
ライバルだった国王の体は1つではなく、無数の肉片になり、四散した。
そのまま、神話級拳法を発動させ続ける。
拳が一瞬で飛来した。
それは1秒よりも短い秒数。
風がふわりと浮いた時。
城はまるでドミノのように崩れ去っていく。
ばらばらと崩れ去り、中にいた人々は訳が分からない顔をしながら潰されていく。
そこにはライバルの国王の家族がいた。
彼等は真っ青な顔をして城に押し潰された。
沢山の赤い脳味噌がぶちまけられる。
内臓がぐちゃぐちゃになる。両手両足がばらばらになる。
それは凄惨を極めていた。
【両手の王国】とはあらゆる部族が揃って建国した。
しかし今1人の最強者により滅びの道を辿る。
その原因は自分の事しか考えなかったからと言うシンプルなもの。
自分達が良ければ1人の人間を生贄に捧げる。
それはやってはいけない事だと。
武神ジャイアントは思う。
「人間に戻れるのなら」
希望を見出している。それは新しい大陸とされる神融合の大陸。
そこに武神ドッデムの心臓がある。
それを使えば人間に戻れるのだろう。
最後に武神ジャイアントは空を見上げる。
そこには7つの星空が輝き続けていた。
そこに向かって咆哮を発する。
愛を誓い合ったあの子は既にこの世界にはいない。
だがあの世の地獄と天界であの子を探す事は出来ない。
それだけの激痛が伴う場所だから。
ならどうするか。
「新しい人生を歩もう」
それが武神ジャイアントの出した結論。
だがやらねばならぬ事がある。
「人間を滅ぼすか」
それはおやつを拾うかのようにただ呟いた。
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