仁義なき・・・

第14話 そういう事だから、決定ね

 今日は火曜日。当然だがバイトの無い日である。

 バイトが無い日の僕の日課は決まっている。BUTTONの優先権があるからアツマチの続きをやりたいし、たまには戦国無敵もやってみたい。どちらにせよ6時半頃には普津美が帰ってくるけど、その時点で僕が帰ってなかったら「いなかった人が悪い」とばかりに寝るまでBUTTONを放さないのは確実だ。

 そんな訳だから、今日は帰りのショートホームルームが終わったら真っすぐ家に帰る!


「・・・おーい、並野、ちょっといいかあ?」

 僕は帰ろうとして席を立ったけど、その直後に論寄ろんより君がいきなり声を掛けてきた。その論寄君はもう一人の男子と共に僕を手招きしている。

「・・・ん?何かあった?」

「何かあったから呼んでいるんだぞ」

 そう言って論寄君はニコニコ顔で僕を手招きしてるけど、僕には何を言ってるのかピンと来ない。でも、何らかの意図を持って僕を呼んでるのだから、ここは行った方が無難だろう。

 そう思って僕は論寄君のところへ行ったのだが・・・

「・・・並野、お前さあ、これから何かやる事ある?」

 論寄君はそう言ってるけど、BUTTONをやるという事はあるけど、それ以外には無い。だいたい、BUTTONをやるのが用事かどうかと言われたら、返事に困るのも事実だよなあ・・・

「・・・うーん、有ると言えばあるけど、無いといえば無いよー」

「並野、お前、麻雀マージャン知ってる?」

「へ?・・・ルール程度なら知ってるけどー」

「よし決まった。今日、俺のうちに来い」

「はあ!?」

 僕は何の事か全然意味が分からなかったけど、二人ともニヤニヤしているから、ますます意味不明である。

「おいおいー、折角、我が家自慢の全自動ぜんじどう麻雀マージャンたくを使わせてやろうという、ありがたーい話に対して『はあ!?』は無いだろ?」

「あー、ゴメンゴメン。でもさあ、論寄君の家に全自動麻雀卓があるの?」

「ん?うちの爺ちゃんの知り合いが譲ってくれた」

「まじ!?」

「うん。正確には倒産した雀荘じゃんそうで使ってた物だけど、引き取り手がなかったから爺ちゃん経由で俺の父さんが引き取った」

「あらまあ」

「うちのリビングに置いてあるけど、賭け事を一切しないという条件でなら俺も使えるし、週末は『雀荘じゃんそう・論寄』として父さんの職場の人が押し寄せてくるけど、平日なら全然問題ない」

「ふーん。で、まさかとは思うけど、人数が足りないから僕にやれと」

「さすが並野!お前はエスパーかあ?」

「そんな事は話の流れで分かります!」

「そういう訳だから、お前、今日は8時まで俺の家で麻雀決定」

「ちょ、ちょっと、待ってくれ!本気で言ってるのかよ!?」

「当たり前だ。本当なら大三おおみつ はじめを呼ぶつもりだったけど、あいつ、体調不良で午後から早退したから、その代わりに並野を入れる事にした」

「でもさあ」

「固い事を言うなよー。折角クラスのアイドル、あさ 雀愛すずめちゃんが乗り気なんだからさあ」

「うっそー!麻さん、麻雀が出来るの?」

「あれっ?お前、知らなかったのか?」

「何を?」

「雀愛ちゃんの父親と従姉いとこ、プロ雀士だぞ」

「マジ!?」

「そういう事だから、決定ね」

「おい、ちょっと待て!僕はまだ行くと言ってないぞ」

「お前さあ、俺じゃあなくて雀愛ちゃんの御指名だというのを理解しろよー」

 そう言って論寄君は親指で『ツンツン』とばかりに後ろを指してるけど、その指の先には麻さんが同じクラスの女子3人と話をしてたけど僕の視線に気付いたのか、右手を軽く振っている!つまり、論寄君が言ってるのは本当だ・・・

「はあああーーー・・・分かりましたよ、行きます、行きます」

「サンクス!」

 僕は思わずため息をついてしまったけど、そんな僕の肩を論寄君と国士くにつかさ 無双むそう君がニヤニヤしながらバシバシ叩いてるから勘弁して欲しいぞ、ったくー。

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