第4話 4半刻の時間

 クストが付いて来る?


「独り善がりで決定事項にしないでもらえますか?貴女の仕出かしたことに対する対応は、わたしには関係ないのですけど?時間の無駄程無意味なものはありません。」


 確かにその事は少女には関係がない。しかし、未だにマルス帝国に対して、サウザール公爵に対して恐怖心を持つ私にはこのようなことがなければ、マルス帝国の地に足を向けようとは思えなかった。


半刻1時間いいえ4半刻30分時間を下さい。すぐに準備をします。」


 少女は服のポケットから、懐中時計を取り出し


「今が8刻半と4半刻17時30分ですので、丁度9刻18時ですか。それぐらいなら良いですよ。わたしも準備がありますので、4半刻後にまた伺いましょう。そうそう、そこの団長さんの治療費はこの魔時計でいいですよ。これでもいいのですが、見馴れた24時間用の時計がいいですね。」


 少女は言いたいことを言って、その場から消えた。転移で準備をするために戻ったのでしょう。


「治療費とるのかよ。」


 隣でクストが突っ込んでいますが、24時間用の時計が見慣れているのですか、やはり彼女は・・・そんなことより、あと4半刻しかありません。急ぎませんと。


「私は準備をするために工房に籠ります。」


 そうクストに言って部屋を後にした。



クストside


「団長。まんまと彼女の術に捕まりましたよね。」


 ルジオーネが声を掛けてきた。あの問題児がユーフィアに用があるということで頭に血が昇ってしまい、あの少女の言うことを聞いてしまった。いくらなんでも普通あんな毒々しい物を口にしようとは思わない。


「ああ、すまん。」


「まあ、あの討伐戦経験者を連れて来て正解でした。そうでなければどうなっていたことか。はぁ。」


 ルジオーネにため息をつかれてしまった。


「マジやばかったっす。あんな幼いのに、あのオーウィルディア氏並みに凄かったっす。あれで無意識って本気を出されたら、対処できないっすよ。」


 そう言っている彼は遊撃隊で彼女と同じ能力を持つオーウィルディア氏と一緒に戦った隊員だ。確かに対処ができない。


「あれですよ。彼女の弟に手を出さなければ、こちらに矛先を向けることはないでしょう。」


「副師団長、知っている俺たちはルークちゃんに手は出しませんよ。しかしですね。どうみてもあのルークちゃんの美貌は癒しの聖女様と麗しの魔導師様の血「「「しー。それ以上いうな。」」」」


 いらないことを言ったヤツが他の者達に袋叩きにあっている。それ以上恐ろしいことを口にしないでほしい。


「お前達には手間をかけさせてすまなかった。俺はこれからユーフィアと共にマルス帝国へ行く。」


「団長自ら他国に行くのは勧められません。が、番のこととなると仕方がないのかもしれませんね。統括師団長閣下にはご自分で今から報告に行って来てくださいね。」


「そ、それは事後報告ではだめか?」


「ダメです。9刻18時までに戻ってこないと置いて行かれるかもしれませんね。」


 ルジオーネは意地悪だ。仕方がなく師団本部へ向かうことにした。



ユーフィアside


 早足で工房に向かい、マルス帝国で作った物の資料を隣接している倉庫から引っ張り出す。サウザール公爵に言われ作った物は厳重に封印をしています。それは、二度と目にしたくなかったからです。


 引っ張り出し、封印された箱を作業台の上に逆さにしてひっくり返した。バサバサと出された資料の中から病と薬に関する資料を取り出し、中を確認する。


 パラパラと中身を確認すれば、その時作らされた私の心情がそのまま写し出された内容になっていた。今、思い返せば私は全てのモノに対して否定的であり、その心を写したこの薬は呪いと化したのかもしれない。


 あのとき、使用した基盤を元に術式の解除を盛り込んだ物に描き直す。時間がないので失敗はゆるされないので慎重に、そして素早く一定の魔力を流しながら金属板に描き込んでいく。でき上がった物に粘土を押し当てて魔力を流せば出来上がりです。時間を確認すると、間に合った。


「ユーフィア様。」


 いつの間にかマリアがドアの横に控えていた。


「まだ、時間がごさいますので動きやすい服装に着替えましょう。」


 マリアは全て聞いて準備をしてくれていたようです。


「ユーフィア様、申し訳ございません。」


 マリアは着替えを手伝いながら謝ってきました。何を謝ることがあるのでしょう。


「あの少女からユーフィア様をお守りすること出来なくて申し訳ございませんでした。あの時、隣の部屋に控えていたのです。しかし、あの少女が恐ろしく、ドアを開けようとしたのですが、手が震えて開けることができませんでした。私にできたのは、ルジオーネ様に助けを求めることだけでした。」


「マリアはルジオーネさんを呼んで来てくれたではないですか。それだけで、助かりましたよ。さあ、時間になります。行きましょう。」


 そして、私は再びマルス帝国の地を足で踏むことになりました。

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