2話 私は関係ない

 あれは、私が10歳の頃でした。私はマルス帝国のコルバート辺境伯爵家の次女として生まれ、6歳上の兄と4歳上の姉がおりました。

 次女で金髪に青い目の人族にはよくある色合いです。辺境の田舎娘でしたので、貴族のマナー等は姉に任せて、やりたいことに没頭する毎日でした。


 魔物を近寄らせない電気柵とか、魔物を遠距離連続狙撃するガトリングガンとか・・・はい。実はこの世界ではない記憶を持っていたりします。

 この世界には魔導式というものが存在し、高純度の魔石さえあれば、子供の落書きでも簡単に再現することができるのです。

 魔石などはその辺の魔物を倒せば手に入るので、試し撃ちがてら魔物を倒し魔石を獲ることができるのです。


 そんな日々を過ごしている中、帝都の帝国立アールミア学園に行っているはずの兄がいきなり屋敷に駆け込んで来て助けを求めて来たのです。

 なんでも、ワイバーンの襲撃を受けたというではありませんか、そのことを聞いた父上や辺境を守る兵士達が各武器を持ち出して辺境都市の外へ飛び出していきました。なぜ、学園にいる兄がここにいるのか疑問を持たずに。


 私は皆が出ていった後、こそこそと裏口から立ち去ろうとしていた兄を魔獣用の網で捕らえ理由を問いただしたところ、ワイバーンを騎獣にするために、ワイバーンの卵を盗んだというではありませんか。

 それも3つも。

 それはさすがにワイバーンも住みかの山脈から降りてきてまで、卵を取り返えそうするでしょう。そして、その3つは兄と、ウォルス侯爵の嫡男と第2王子の分まであるというではないですか。


 他の二人は帝都へ向かう街道沿いを戻っているらしい。バカですか。卵を持ったまま街道沿いを駆け抜ければ他の人が巻き添えをくらう可能性があるではないですか。


 私は兄を網で簀巻きにしたまま、そこにいた家令に父に報告するようにいい。兄は地下牢にでもぶちこむように言いました。

 そして、私は移動のために開発した、タイヤの無いスクーターに乗り、地上1メルメートルの高さで飛びながら帝都に向かって爆走しました。


 スクーターに乗り半刻間1時間、上空にワイバーンの姿を捉えました。逃亡者が近いことが分かり速度を上げます。


 逃亡者に追い付いたときには上空からワイバーンの襲撃を受けていました。


「ギャァァァァァ」


「どこか行け!俺を誰だと思っている。」


 卵泥棒ですね。

 うるさいので背後から近づきスタンガン擬きで気絶させておきます。卵が入っている袋をワイバーンが持って行ってくれることを願いながら、魔獣用の網で簀巻きにしスクーターの後ろに網の端をくくりつけ辺境都市へ連れて帰りました。少々地面に接触して擦れてしまいましたが、命あっての物種です。

 父に事を説明し帝都ウランザールまで、強制送還してもらいましたが、送って行った父が戻って来たのが5日後のことでした。疲れた顔の父に事情を聞くと何でもあの三人は色々やらかしている問題児だったようです。私としてはこっちに火の粉が飛んでこなければ別に構いませんけどね。


 あれから5年が経ちました。その間も兄は色々やらかしたようで、父は姉の夫に家督を譲ることに決めたようです。まあ、コルバート辺境伯爵家に生まれながら剣も使えなければ、魔術もからっきしダメな兄に当主は勤まりませんけどね。


 しかし、この5年程、世界情勢が変わって来ており、魔物の凶暴化から始まり、異次元から出てくる悪魔と呼ばれるモノがこの大陸を蹂躙し始め、魔王なる存在も出てきたというではないですか。

 私も皆さんのお手伝いをすべく武器の開発に勤しみ励んでいたところです。


 ところが、こんなご時世の時にくだんのバカ兄+αがやらかしてしまったのです。

 サウザール公爵家の令嬢、エルフィーア様に言葉にすることがはばかれる事をやらかしやがったのです。

 エルフィーア様にはつがいとなられる御方がおりまして、隣国の外交官の御方に今年嫁ぐ予定でした。もう、サウザール公爵家もエルフィーア様の番の方もそれはもうお怒りで、こんなご時世ではなければ、隣国と戦争になっていたかもしれません。

 話し合いの結果、第二王子は前線送り、ウォルス侯爵の嫡男は極刑、兄も極刑のはずでしたが、コルバート辺境伯爵家から様々な魔道具や魔武器を開発・提供をしているということで極刑ではなく、前線送りとなったのです。いやそれは、私の功績だから!


 それを聞いて慌てたのがウォルス侯爵様でした。跡継ぎが問題児の彼しかおらず、皇帝陛下と父にどうにかならないかと頼みに行ったそうです。

 そして、出された結論は開発した本人である、次女の私を娶ることで恩情を貰おうということでした。いや、私は関係ないから!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る