第1章 川鵜中隊

「シムナやい」

集会所の外からドワーフが声をかけた。

「おめぇ、まぁた射撃か?」

「ちょすんでねえ」

それだけ返すと、2階の窓際に立つハーフリングの手の中から轟音が響く。

ドワーフが振り返ると、まさに飛び立とうとする鴨が哀れ墜落していくところであった。

「よぐやるなおめぇも」

やれやれとため息をついてドワーフは枕がわりの丸太をゴロゴロと転がす。

「銃ばりやって何になんだが」

そう言ってドワーフはシムナの持つ魔導小銃を見た。この村では猟師たち生業のためには欠かせない小銃であったが、それを朝から晩まで触り続けているのはこの村ではシムナくらいだった。

そもそもドワーフの多いこの村ではシムナのようなハーフリングは稀な存在だ。

その特性を生かし、シムナの家では代々鳥撃ちの猟師を生業としていた。

「ダジル、あとでこれ直してぐれ」

シムナがそう言うと、ダジルと呼ばれたドワーフは身を起こす。

「まぁたやってが」

そうぼやきながらもダジルは少し嬉しげだった。

ドワーフにとって金属道具を触るのは至上の喜びなのだ。

ダジルがウキウキと集会所に入るのを眺めながら、シムナは小さく笑った。

シムナ───のちの英雄、シモ・ヘイへ29歳の秋の初めの日だった。

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