007話 竜の巫女との死戦

―― それは突然起きた。


カイハーンの身体が、凄まじい勢いで音を立てて変形していく。


とげが並ぶ太い竜尾が切り口から一気に再生し、一回り以上に太くなる。


左手も再生し手足は倍以上に太くなった。


皮膚は全身が鱗状になり、肘や膝には刺が生える。


爪先つまさきと指先には鉤爪かぎつめが生え、口は裂けて鋭い牙を覗かせた。


体躯が倍以上に膨れ上がり、背中には新たに刺が生え頭上の角がせり出す。


急激な変化のためか、全身から湯気が登っている。


「ゴオォォォオオオ!!」

鋭い眼光がまたたき、闇夜の月に吠えた。


その姿は化け物…いや、竜か。


ナルは竜を前に、本能的にバックステップで退避した。


"ドガッ"


しかし、瞬間的に背後に現れた竜の豪腕が、ナルの背中を襲った。


その勢いでナルは地を滑る。

「…つぅ」


《アマテラス》を構え直しナルは竜を睨み付ける。



―― 「…ありがとう」


イマリが稀に見せる飛びきり可愛い笑顔で礼を言った。


カイハーンの竜化りゅうかに気を取られているうちに、治癒は終えていたようだ。


「イマリ、だいぶ、血を流してるから無理はしないで」

笑顔が消えたイマリに向かって私は呟く。


「…ありがとう…行ってくる」

イマリは覚悟の表情で応えた。


イマリは《漆黒しっこくのカタル》を握りしめ、闇に溶けた。

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