第17話 DQNとサッカーしたよ。お前ボールな
二宮家 近所
家まで1キロくらいの所で男の怒鳴り声を耳にする。女性を軽視するような酷い汚い言葉が住宅街に響き渡り罵声に意識を向ける。
興味を持った二宮は野次馬根性で声の発生源へとチャリを漕ぐ。
そこには何事かと窓から顔を出す主婦の方々や数名の大人が集まっていた。
その全ての視線はとある青年2人と女性1人に向けられていた。皆住宅街で問題を起こす者達へ開いた口が塞がらないみたいだ。
良く見ると男達が女性を罵倒している。
一人目は金髪に顔に髑髏の刺青を入れている男だ。
そして二人目はセンスのかけらもないゴテゴテしたピアスを付け、チャラい人を目指しましたと顔に書いてあるかのような風貌の青年。
今は更に聞くに堪えない言葉を平気で口にしている。
「クソビッチが!少し顔がいいからって調子に乗るなよ!誘ってるんだから、いいから付いて来いよ!」
「いいから俺らの家に来いよ!楽しい事しようぜ!」
近くで見るとよく分かる。こいつらは本物のクズだ。
俺達の言う事を聞くのは当たり前、そうではないと気が済まないかの様な振る舞い。
それに加えて女性を脅すような口調で話し続けている。
周りの視線に気付かないのか?
迷惑がっている女性はかなりの美人さんだ。
身長は160cmくらいだろうか。いやヒール履いているからわかんねえ。
ただ、体が小学生である俺でさえぞくっとするほど艶めかしい容姿。
褐色の肌が白色のワンピースによって強調されている。涼しく刺すような美しさと冷たい印象を与える瞳。遠目でも分かる程別格の美しさを放っている。
多分欧州のどこか、ラテン系の血が入っているのだろう。
前世ではブラック外資に勤めていた為、毎回海外出張をしていた。
ズーム電話で済むのに上司はそれでは礼儀が足りないだの何だの言い、泣く泣く荷物の準備をしていたな。
何が言いたいかというと外国人は俺らアジア人に比べ大人びた容姿に比較的早くなる。
あの子はまだ10代前半だろう。13歳か14歳じゃないかな。
しかし男達に対しては完全に無視を決め込んでいる。怖くて声が出ないのか分からないが二人には一瞥もくれていない。
よくあんな美人にお前達が声かけたなと言いたい。
そんな事を考えながら俺の地獄耳は野次馬たちから事の発端を聞く。
話を聞けば聞くほどいかに非常識な性格をしているか良く分かる。
なんでもお茶に誘った二人を断った彼女に逆ギレしているらしい。
「俺のバックには......」
「俺の親父は......」
髑髏男とピアスはそれぞれ自分たちのコネの自慢?みたいなことを言っている。
まあ、彼女を脅し怖がらせたいのだろう。
野次馬たちは最初、酔っ払いの揉め事かなと思ったらしいが直ぐに一方的に男達が迷惑をかけているだけと判断しみたいだ。
俺は面倒ごとに関わりたくない性格だ。
幼少期は技術習得で大事な時期だから自由に使える時間は全てサッカーに捧げたい。
しかしこういう胸糞悪い出来事は許容できない。
前世もそうだったが女性を軽視する奴は特に嫌いだ。お前ら全員誰が産んでくれたと思っているのだと問い質したい。
おっと、言い争いというか一方的に絡んでる状況が悪化したみたいだ。
全く男達を相手にしないことに堪忍袋の緒が切れたのか、男の一人が遂に詰め寄っていく。
「てめえいい加減にしろよ!」
手を振り上げている。
この状況を見て何で野次馬は見てるだけで助けないん?と不満に思う、がもういい。
ーー俺の方こそ我慢の限界だ。
謝罪もせず消えた受付に対するフラストレーション & 何もしない 野次馬に対する苛立ちをぶつけよう。
八つ当たりだけどしっかり受け止めてくれよな。
ピコン、
「えー今20代前半と見られる男2人が女性に暴力を振るおうとしているので証拠として録画しまーす」
今日の日付と現在に時刻を言い、今の状況を的確に説明する。俺のスマホが録画を始める。
後で彼女が警察に届け出を出したい場合に証拠として渡す為だ。
野次馬が囲んでいた輪に入り、じっくり撮影する。
彼らもそれに気付いたのだろう。振り上げていた手を下ろして俺の方を向く。
「おい、ガキ。今直ぐ携帯を渡せ。そしたらボコボコにはしないでやるよ。」
「やだね。さっきから聞いてれば何してんの?完全に迷惑行為じゃん。はぁ...あっ!お前らがあまりにもうざいから撮った動画ツイッパーに載せちゃったよ!タイトルは『ナンパに失敗した男達逆ギレするw』どのくらい拡散されるか楽しみだな。後はプロの人に住所特定して貰えれば完璧だね。」
これは嘘だ。実際まだカメラを回しているが、女性から意識を外しこちらに目を向けさせる為に挑発する。
子供に舐められた態度を取られたことが許せないのか髑髏顔が全身を使い苛立ちを露わにしている。
「....てめぇには関係ないだろクソガキ。さっさと消せ。今なら一発殴って許してやるよ!おい!お前ら野次馬もどっか行け!殺すぞ!」
もう1人がそう叫ぶと、面倒ごとに関わりたくないのか次々と自分の家に戻っていく。まぁいい。最初から期待していない。
数名は迷っているみたいでうろうろしている。情けないな。
「やれるもんならやってみろよ!どうせ口だけなんだろ。」
「今日帰れると思うなよ。ボコボコにしてやるよチビがっ!」
「い...今....何つったDQN」
「チビとりあえず顔出せや、サンドバッグにしてやるよ。」
プチン。
二宮には禁句がある。
一つ目は家族に対する侮辱。小学一年生の時授業参観に来てくれたお父さんをブサイクと言ってきた同級生を土下座させた話は有名だ。
そして次は最も言ってはいけない言葉。誰もが豹変する彼を怖がり、空気を読んで絶対に言わない単語。
それもそうだろう。幼少期からありとあらゆる最先端知識を使い身長を伸ばそうと試みるも失敗。
遺伝的に大丈夫だろうと、毎日不安に思いながら過ごしているのだ。まあ、そのお陰でフィジカルに頼り切らない、技術中心のスタイルが出来上がっているからいいのかも知れないが。
しかし図星を刺された二宮は完全にキレていた。目下をピクピクさせている。
「DQN。殴れるもんなら殴ってみやがれ!!!」
「クソガキ!!お前はこれから俺のサンドバッグな!オラよっ!」
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