第9話 大人の汚いやり方
埼玉県 二宮家
ふううぅぅ〜〜極楽ぅう〜。
お風呂に入ると疲れが抜けていく気がするよ〜この炭酸入り柚子の香りが俺のお気に入りだ。
肩こり、疲労、筋肉痛に効くという最高の発明だと思うぜ。
もちろんお風呂場でもインナーマッスルを鍛える為に足をバタバタしているよ。へへへ〜偉いでしょ..........すみませんまた調子に乗りました。ただのストイック変態です。
冗談はさておき、お風呂に浸かりながら今日の出来事を考えている。
あの後泣き止まない園長先生を他の先生達がはい、はい、またですね、と言いながら雑に引きずられてどっかに連れ去られた。癇癪持ちの情緒不安定かよ..........汚いものには蓋をしましょう作戦で行こう。忘れよう....
何回か未練がましくチラチラこっちを見ながら引きずられて行く姿に流石の園児達もドン引きよ、俺含めて。
その後先生達が俺たちの前に現れて、園長先生はお腹が痛くて、泣いちゃったみたいなの〜でも今日の事はお母さん、お父さんには内緒だよ?と一方的に言い終わると園児たちにうまい棒を配っていった。格式高い幼稚園の顔はどこにも無いな笑 その言い訳流石に無理があるだろ......
まあ結局うまい棒と聞き、群がる子供達は先程のカオスなんて微塵たりとも覚えていない。見事だが先生セコいな。
幼稚園の闇を見た気がする...
まぁしっかり頂きました。チーズ味って美味しいですよね。コンソメもなかなか
今度はストレッチをしながら今後の事を考える。んー正直J2だが元プロと練習するのはとても貴重な経験になるんだよなぁ。
他の練習時間を削って毎日1時間くらい練習するのも悪くない。
だが流石にサッカークラブに入るのは無理だな。贅沢な悩みだが考えれば考えるほど答えが出ない。どうすればいいんだか。
あーーーー、はいやめやめ。
いくら考えても優柔不断な俺じゃ答え出ません。クラブには入らない。終わり!
あ〜それにしてもお風呂最高〜
◆◆◆◆◆◆◆◆
次の日とある幼稚園では
「ケイくぅーん! 俺と一緒にサッカークラブ作らないかい?」
「ケイくぅーん!一緒に汗を流そうじゃないか!」
「ケイくぅーん!幼稚園終わったら一緒にサッカークラブのポスター作らないかい?」
っと、嫌がらせみたいに園長先生があれから毎日クラブに誘ってくるのだ。
なんでも俺のリフティングを見て、自分のやりたい事、情熱を取り戻したらしい。
ちなみに他の先生達は俺たちに関わらないようにしているみたいだ。マイフェイバリットの谷沢先生さえ俺から距離をとっている。なんか園長先生とセットで厄介者みたいな。腫れ物を扱う感じの。
何回か、目で助けを求めても申し訳なさそうに目を逸らされる。
このままでは俺の青春幼稚園ライフが!(練習しかしてません・友達いません)
根負けした俺は無視するのを諦めて、なぜクラブに入らないかを説明したよ。これで諦めてくれるといいなと思った俺のバカ野郎....
なんか俺の話を聞いた園長先生が感動しすぎてうっとり顔からもう恋する乙女なの?!って感じで更に大変に、
これがあの元大宮アルディーで10番を背負ってたエースストライカーかよ。
まあ最終的に落ち着いてくれて、肩をがくりと落として帰っていったよ。
あれから園長先生はちょくちょく俺の『ひとりで行う基礎技術向上メニュー』を見に来ているが、話しかけては来ないみたいだ。諦めてくれたらしい。
それから1週間平和な幼稚園ライフに戻り、誰にも邪魔されず今日も、コツコツ鍛錬に勤しんでいます。
んっ?あれは何だ......? バンから頭にタオルを巻き作業服を着た厳つい人たちが降りてきた。
なんだろうと先生達に目を向けると先生達全員目が死んでいる。というか全てを諦めた目をしている。ど、どういうことだ。
これは明らかに異常事態だ。平日の園児達がいるのに工事を強行するのか。
はっ、ま、まさかと、ある人物に目を向ける。ニヤニヤと笑みを浮かべながら勝ち誇った顔を向けてくる園長先生。
こいつまさか.....
はい、そのまさかでした。大工さん一味はデカデカと東宝建築と書かれた作業服を着て胸を張り自信を持って作業をしている。
あれが伝説に聞く高学歴を集めた大工さんたちか。なんでも「良い物を建築するには頭が良い奴を雇わないといけない」という会長の信念で東大卒や京大卒を雇い集めているという。
そんなエリート達はテキパキと簡易的なベンチを設置すると、芝生をしき、子供用ゴールまで設置した。また用具入れの倉庫まで建てていきやがった。なんていうか早業。
くっ、これが大人のやり方かぁー!
園長先生が俺に向かって近付いて来やがる。どうせサッカークラブ入らないと使わせないとか言ってくるんだろ、くそっ。
ど、どうしよう、芝生.....新品の...本物、偶になら試合出ても、
思考にふけっていると園長先生が頭を下げて
「ケイ君、試合は出なくていい。毎日1時間でいいから俺と一緒に練習しないか。1週間見てきたがメニューもしっかり組んでいる。見たことない物もあったがちゃんとした意味があるんだろ?俺にその才能を開花させる手伝いをさせてくれ。」
「へっ?」
お、おお?あれなんか予想と違うぞ。変な声を上げてしまったな。
「俺は元々大宮アルディーでサッカーしていたんだが、若手にあっさり自分のポジションを取られて喧嘩退団したんだ。腐っている所を叔父さんがここを紹介してくれた。だが俺が泣き崩れた日、本当の才能を見て、魅了された。将来お前は絶対世界へ行くだろう。その活躍の一助に俺はなりたい。」
なんて身勝手な.......でも不思議と悪い気がしないな。く、これが元エースのカリスマ性というやつか。いつも二日酔いからかやつれていた顔も今は面影もない。真っ直ぐ俺を見つめてる。
「はぁ、分かりました。ですが1 試合には出さないこと。2 俺の練習方法を広めないこと。3 メニューは絶対俺が決める。これを守ってください。」
「守る守るっ!おぉーーーー!!!やったぞー!!!」
このボンボンおじさんめ、お調子者か全く。しかし紹介でここの園長になれるって何者だよあんたの叔父さん。
あまりの喜びように俺もつられて笑ってしまったよ。
他の先生方もここまで清々しいと笑うでしょ、これが愛されキャラかと目を向けると、
さらにドン引きしてましたーーーー!園児に本気で頭を下げる、それを見て笑う園児。うんこれはドン引きものだ、、
くそおおおおおおー!谷沢先生まで目を逸らしてるよおおお!
こうして幼稚園で人権をなくした二宮ケイは師匠?練習相手を獲得したのだった。
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