第15話 執務室

「ご機嫌ですね アジェ様」 

「ああ、リュース公ヴェントレ まあな」


執務室で報告書の類に目を通してる二人


「戦はこちら側が有利 

国境の街も 軍の増強で落ち着いてる」


「また白の国から 数千の民がこちらに避難して参りました」


「・・・白の国の宗主シューツオンは狂王と化してる

長年の敵国

黒の国の王 冷酷で残酷な私でも 避難民は構わないらしい


間者がいないか調べた後 仮の住まいと食料等の配布だ

それに病人たちも多くいるだろう  

ほとんどが飢餓状態に戦火での苦しみ」


「侵略しようとした 我が国の国境の民だけでなく

自国も地獄にしてる あらぬ罪を着せて 街の多くを焦土にした」


「白の国の守護者 ケンタウロス族や多くの種族が数を減らしている

力ある白の王族、貴族達」


「後は 慈悲深く 同じ白の血を引く リュース公家

当主のそなたに任せる 


資金もこちらで用意しよう 癒しの神殿の者達も 薬師達も派遣する

必要なあれば 遠慮なく申し出てくれ


私の多くの時間は戦地だ クインも頼んだぞ」アジェンダ


「はい ありがとうございます」


「承諾しております 御任せください 王」


「さて、そろそろ茶会の時間だ

アリシア姫の教育は 

かなりのハイ・ペースで進んでいるらしいな


黒の王妃として 王宮の女主となるのだから

いささか 荷は重いかも・・」


「やはり 側室でなく 正妃に?」


「ふふふ・・誰が何と言おうと

彼女は私のものだ」


「・・・黒の大貴族どもが何と言おうと

他の正室もいらぬ 重婚は可能だが

王族の血を持つはずの他の姫たちには 反応しない」


「・・・アジェさま 一つ困った事が」


「何だ?」 

「シューツオンがテイエスの花の産地である

白の国の古都を灰燼にしました」


「・・・・・」


「テイエスの花は 発情期を抑える効果だけでなく

疫病のビナスの治療薬だ

他にも幾つもの病や怪我の薬


あやつは本当に正気ではない」


「疫病のビナスが また猛威を振るってます」


「他の薬はない また多くの死者が出る

他の産地は・・


ああ、そうだ 他の産地も

シューツオンは灰燼にしたか」


「最近は 実はテイエスの花の薬湯の効果が

薄れてる

やがて手持ちの分も」アジェンダ


「・・・長年 飲まれてますから

そろそろ 何か対策を」


「後腐れの無い者達なら 幾らでも 王」


「別の薬は?」 「開発中です」


「・・・・・・・」

半開きの目で 肘をついて じっと二人を見る

アジェンダ


「アリシア姫様は まだ身体が・・・

せめて数年待っていただかないと


それに発情期では 相手に重い怪我を負わせたり

稀に殺してしまった例も


貴方様は 戦の為に生まれた火焔の世代

百年に一度 生まれるかどうかの 火焔の魔力の持ち主です」


「私は いや 火焔の者達は地獄から来た戦鬼という輩もいるな」

自虐的なアジェンダ


そして 頭を抱えるアジェンダ


「神にでも祈るか・・血で汚れ果てた罪深い

残酷な私が救われるとは 思わぬが」再び自虐的な表情をする





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