最後の桜の花弁

 胸の辺りにあるグリップを両手で握り腕を前後に動かすと

 隣にあるプレートが連動して上下に動く。

 前に押すときは早く、引くときはゆっくりと動かす。

 

 ジム内には最近のEDMが流れている。

 マシンが並んでいる奥にウエイトトレーニングエリアがあり

 そこにいる人は全員ゴリゴリのマッチョで気が引ける

 いずれあの中に入れるように今は自分の限界値を上げることに専念する。


 ジムにいる女性は運動用のストッキング

 その上からベリーショートのパンツをはき髪の毛はポニーテールにしている。

 健康に関心がある人が多いからなのか見る人見る人綺麗な肉付きをしている

 

 チェストプレスを終えた時にはすでに体は悲鳴を上げていた。

 少しランニングマシーンで走り初日は帰った。

 

 1時間も運動していないのに筋肉は硬直している。

 寄り道をし薬局でプロテインを購入する。

 

 その晩は著しく食欲が湧いた。

 いつもの倍の量は食べただろう。

 

 満腹感がお腹を威圧する。


 これから毎日ジムに通っていけば

 いずれ自信がつくと思うと単調な平面に石ころが散らばり始めたようだった。

 

 それから僕は、毎日週7でジムに通い詰めた。

 しかし、なかなか体に変化は訪れない。

 

 体質的に肉が付きにくいのだ。

 それでも体を毎日追い込んでいく。


 ベッドに転がり込んではジムにいた人の体を思い出し処理をする。


 いつも通り大学の講義を終えジムに行く

 

 会員カードをかざし自動ドアが開くと

 目の前のフロントにはたくさんの人がいた。

 立ち止まっていると、月火金曜日にいるバイトのスポーツウェアを着た

 ポニーテールの女性が話しかけてくれた。

  

 「今日はですね、メインフロアにてヨガ教室がある日なんです。

  ヨガをされますか?」と聞かれ首を横に振ると女性は


 「わかりました。ヨガなどの教室は参加者は人数確認の為

  記入していただくものがございますのでお声をかけさせていただきました」 

 「そうだったんですね。それにしても凄い人数ですね」と言うと女性は


 「このヨガ教室はかなり人気がありまして、、、

  テレビに出演されたことがある有名なトレーナーさんがいらっしゃるので

  主婦の方などを筆頭に大変人気を集めている教室です」

 「わざわざありがとうございます」


 「最近よくいらっしゃっていますよね」と女性は思い出したかのように言う。

 「最近入会したもので」

 「そうだったんですね。マシンを拭いていると最近よくお見掛けしましたので

  社会人さんですか?」と女性に問われる。

 

 「違います、大学生です」と言う

 「あっそうだったんですね。ちなみにどこ大です?」

 「南大です」

 「南大ってそこの国公立大学ですよね」

 「はい」

 「私、来年南大に受験しようと考えていて、、、」女性は少し辺りの流し見た。

  大方、勤務中のため私語をしていると注意されることに心配をしたのだろう


 「じゃあもしかしたら一緒に通うことになるかもしれないですね」と言うと

 「そうですね」と笑顔で言った。

 

 「頑張ってください」と笑顔でいい別れようとするとバイト女性が

 「あっあの。お名前を教えてください」と言われる

 

 「田中マサヤって言います、なんて言う名前なんですか」と同じ質問を返すと

 「田口ミクです」

 「田口ミクさん、ありがとうございます。勉強頑張ってください」

 と言い田口ミクとは別れた。


 恋愛経験のない僕は声を掛けられただけで

 ついつい自分に気があるのではないかと考えてしまう。

 悪いところだ。

 

 高ぶる気持ちが筋トレに作用しいつもより多くの回数をこなすことができた。


 桜の木はすでに緑色一色に染まり、もうじき長い長い雨が降り始める。

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