4.俺の知らない間に姉ができていた件


俺フェイ、3歳になりました。もう流石に完璧に話せるようになった。ていうか話せないとエルフとしてはまずい。あれから考える機会などいくらでもあったのだがやっぱりエルフの成長は早いようだ。俺が歩き出した時もやっとだーーーって感じで感動してたからなぁ。不出来な息子ですいません。


転生するにあたって肉体がエルフに変えられたのは、誰がどう見ても一目瞭然だった。

だが俺は、生まれた時から何故か両親が話している言語が分かった。

少なくとも俺は、この世界の言語を知らないはずだったのに。

まぁ、それも神の御業ということにしておいた。だって考えてもわからないもんは分からん。


そしてもう一つ重大なことがあった。それは――。


「フェイ―。あそぼー。」


「いいよー、お姉ちゃん。」


そうこの幼女である。かわいらしい狐耳に尻尾の生えた幼女だ。彼女のような種族を狐人族というらしい。絵本にはそう書いていた。


彼女は、俺が2歳ごろに森で拾ってきたそうだ。(俺が寝ていると思われていた時間に両親がそう話していた。)彼女の年齢は俺とそんなに変わりなさそうだったものの俺がハイハイしているのに対して当時から彼女は、普通に歩けていたので俺の姉ということなんだろう。名前はレイだそうだ。


名前だけあるというのもおかしな話で推論にはなるが何かしらのメッセージでも書かれてたのではないかと思う。基本的に俺たちエルフや狐人族は、総称して亜人種とも言われている。


亜人種は基本的にとても仲間意識が強いので子供をそのまま放り出すような真似はしなかったと思うんだ。多分、その際にレイと一緒に手紙でも忍ばせていたんだと思う。

最も俺は、まだまだ子供なのでそう言った話を聞かされたことがない。あくまでもただの推理だ。


レイはきっといつか自分が回りと違うことの気づく、いや今でも気付いているかもしれないが。そんな時に親から真実を話してくれるといいなと思う。





「フェイ!お着換えしよ。」


「う、うん。」


レイは、なぜか妙に俺にお姉ちゃん風を吹かせたがる。現に今だって俺の服を脱がせようとしてきているし、抵抗もできるがしたらうるさいのでおとなしくしておく。


「全く。フェイはまだまだ子供ね。」


どの口が言ってるんだ。どの口がと大声で叫びたかったがそれこそ子供なのでおとなしく呑み込んでおく。


「…お姉ちゃんありがと。」


「えへへー。どういたしましてー。」


ここでレイに感謝の念を伝えておく。彼女こそ真の子供なのでほめるだけで大喜びする。ちょろいぜ。


「フェイちゃんもレイちゃんも早くするのよ?」


「「はーい。」」


今日は、長老への挨拶に行く日だ。本当はもっと早くに行くはずなのだが。俺の成長が遅いのとレイの件でいろいろあったせいで遅れてしまったのだ。ひょっとすると俺の脳だけ人間仕様なのかもしれない。

ちょっとそれは嫌だなぁ。


◇◇◇


俺たちが住んでいる場所には、精霊樹と呼ばれる大樹が中央に位置している。それを中心に住処が広がっている。長老は、精霊樹付近に住んでいる。


「長老来たぞー。」


この里で一番の長い樹の長老相手にずいぶんの口の聞きようだと思う。でもお母さんが止めないあたり特に問題はないのだろう。お母さんが俺を抱えて、レイをお父さんが抱えてる形だ。お父さんは、レイを抱えて随分と表情をだらけさせている。俺とお母さんの視線が冷め切っていることに気が付いていない。


「ねぇねぇ、お父さんってロリコン?」


「どこでそんな言葉覚えたの!?。言っちゃだめだよ。」


小声でお母さんに素朴な疑問をぶつけてみたところ信じられないような顔でこっちを見られた。いやまぁ、ロリコンって3歳児が使ってたら俺でもビビるわ。でも否定しないところを見ると諦めないといけないようだ。


「おぅ、よく来たのう。」


しばらくすると長老が出てきた。エルフのみんなの見た目は若いイメージが強いが長老だけは違う。見た目からも壮年と言ってもいいほどでどこぞのサンタクロースよろしくひげも長い。


「こっちが娘のレイであっちが息子のフェイです。」


「この子がそうか…。」


長老は、レイを見て感慨深そうにつぶやいた。やっぱり訳ありのようだ。エルフの里の中で唯一狐耳のと尻尾を持つのだ。誰がどう見てもエルフではないことが分かる。


「よくぞ来てくれたのう。わしは、長老のアイズだ。おじいちゃんと呼んでくれてもいいんじゃぞ?」


先ほどまでの湿っぽい雰囲気などなかったかのように明るい声で自己紹介を始めた。俺たちも自己紹介をしないといけないのだろう。母さんが俺とレイを立たせて背中を押してくる。


「初めましてフェイです。よろしくお願いします。」


「レイです。フェイのお姉ちゃんやってます。」


ふふんと言いたげな表情で胸を張るレイ。だが残念ながらそこは幼女なので見事な絶壁である。そこには貫禄もへったくれもありゃしない。


「いい子たちじゃのう。やはりエルフには子供はなかなかおらんしのう。いつ見ても子供とはいいもんじゃのう。」


しみじみとした表情で長老はそう語った。エルフのみんなが子供にやけに優しい気がしたのには訳があったのか。確かにエルフは、人間と違って年中発情期みたいな種族じゃない。むしろ長寿がゆえに子孫を残す意識が低いそうだ。それだけに子供の数が少ない。今の里にも俺とレイ以外子供がいない。レイにいたっては、エルフですらないしな。


そこからは、普通にお話をした。今まで何をしてきたのかとかここでの生活は楽しいかどうかなど。話してみてわかったのは普通のおじいちゃんだった。でも年の功なのか知識量もすごく俺たちが知らないことをたくさん知れたのは良かった。また話を聞きたいな。

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