第14話 わし、ギルドのボスになる

「「「弟子にしてください!!!」」」


「あ………?」


Aは戦慄した。目を左右に動かしながらその場で立つ。自分がこんな風に尊敬される日がこようとは夢にも思わない。ましてや、PKに尊敬されるだなんて。Aは1度落ち着くために深呼吸をする。そして返答。


「ふぅ………。んじゃ、断る。わしはめんどくさいことに関わる気はない。じゃあの」


背を向けて森の出口へ歩き始める。今は1秒でも早く次の街へ向かう必要があるのだ。急な出来事で軽く忘れていた。


「あ………あ、ちょっと待ってくれよ!」


(なんじゃ、まだ要件があるのか。早く行きたいのう……………)


少しダルそうにして後ろを振り向く。振り向いた先には真剣な表情で頭を下げてくるキース。


「お願いします!俺は強くないたいんです!さっきのあんたを見て一瞬で理解した。あんたは只者ではない。だからそんなあんたに鍛えて欲しい。あんたにならついて行ける!」


「……………………………」


「どうかわたし達からも頼みます!」


リカ……………。


「お願いします!俺達、これでも真剣に目的を達成したいと思っているんです!」


マックス吉田…………いや、マチス………。


こう頼まれてはわしも引き下がるに下がれんぞい……。Aは眉間に皺を寄せながら下へ俯く。弟子にするということは要するにAがこの3人のギルドのボスになるということ。

今までも1人でなんとかなってきたし、逆に1人でなければ乗り越えられないこともあった気もする。だが、この先には今までよりもキツいものが立ちはだかるかもしれない。


(うむ………)


「「「お願いします!!」」」


少々悩んだが決めた。Aは下を向いていた顔を3人のいる正面へと向ける。


「いいぞ、なってやる。お主らのボスに」


目の前の3人はお互いに目を見合わせる。みんな目が点になっている。だが驚いた顔はすぐに喜びの顔になり―――――――――


「よっしゃぁぁぁぁぁぁ!!ありがてぇ!」


「あなたに一生ついていくわ!」


「ウェイ!」


飛び跳ねたり腕をぐるぐる回して3人ともはしゃいでいる。最初はめんどくさいとか思っていたが、別にボスになったことは後悔していない。むしろ逆だ。Aはこう考える。


(いざとなればこいつらを盾にでも使ってくれるわ。すまんな、わしの命は1つだけだから大切なんじゃよ)


もしヤバいやつが出てきてもなんとかなる。この3人は死んでも何度でも復活出来るから実質耐久度無限の盾。他でも何度も働いてもらうとしよう。


「えー、もういいかのう?」


こんなはしゃいでいる場合ではない。早く進まなければならない。当初の2つ先の街へ行くというのが困難になってしまう。走るのは疲れるんじゃい。


「あ………ごめんな……いや、すみません」


「いや、タメ口でいいぞ。わしはそういった下った態度は好きじゃない」


「じゃあなんて呼べばいいかな?Aさん?」


今までAとしか呼ばれたことなかったが、Aさんと呼ばれると怪しい人物のように聞こえないこともない。いや、実際怪しい人物よ。覆面の忍とかいかにもって感じである。


「呼び方はなんでもいい。それぞれ好きによんでくれや」


すると3人がそれぞれ言う。


「なら俺はAさんでいくぜ。一応は師弟のような関係だからさ」


Aさん………いいだろう。


「私はリーダーで。理由はAさんがここのリーダーだから。以上」


「んじゃ、俺はボスって呼ぶぞ。こっちの方が言いやすいんだ」


リーダーにボス…………どっちも同じ意味だが大丈夫だ。マチスなら自身の名前のように変な呼び名をつけてくると思っていたがいらぬ心配だったようだ。マックス吉田ってなんぞや。自身の呼び名を決めてもらったのでそろそろこっちの話にも入らせてもらうとしようか。


「呼び名は把握した。今後はそれぞれそう呼んでくれていいぞ。では、本題に入ろうか」


Aの真剣な表情に3人は喉を鳴らす。


「わしは魔王を倒したいと思っておる。その理由はまた後に話すとして、問題は魔王までの道のりじゃ。わしらには時間がない。すぐにでも行きたい」


「確かここからだと10個はあるよな?本来ならもうゆっくり行くべきだが、その時間がないというのはどういうことだ?」


わしの細かいことを今教えても時間を取ってしまうだけだ。これもまたいずれ話すとしよう。


「その理由はまた教える。わしらが魔王を倒すまでにある猶予期間はあと13日だ。意外と時間がないぞ」


「そうね。道中にはあの六天王と呼ばれるトップクラスのモンスターが待ち構えているだろうし、雑魚敵ですら厄介になるからレベル上げを考えると少ないわね……………」


「俺、前に耳にしたんだがもう六天王は1人倒されたらしいんだ。Dナイトだったか?結構最近倒されたとのこと。しかも前線プレイヤーではなく無名のプレイヤーに」


(それわしじゃね?)


少しここで強キャラ感を出しておくことにする。これで力の差ってのを見せつけるのよ。


「あ、そいつ倒したのわしじゃ」


「「「!?」」」


さりげなく言うことによって余裕を出しておく。実際は〔あ〕がいなければ終わっていたかもしれない。3人は唖然としていた。ここまでで何度驚いているのだろうか。まだわしは途中までしか話していないんじゃが……。


「とりあえず今日は2個先の街へ進みたいと思っておる。続きは向こうの宿に着いてからにしようや」


「2個先って……………割とここからだと遠いぜ?今からだと夜になっちまうよ」


最低でも着くことが出来ればいいのだが、少しは時間に余裕を持っておくのがよいだろう。Aは手を頭の上に置き考える。


(……これしかないのかね?疲れるからあまりやりたくはないんじゃが…………)


口を開き、提案。


「お主らは[加速]を使えるかのう?」


「え、みんな使えるはずだけど…………」


マチスが返答し、他の2人を見る。するとみんなは頷いてくれた。


多分行ける。相当疲れるだろうけど。


「[加速]でかっ飛ばすぞ。凄く疲れるだろうが覚悟しておけ」


こういった使い方は初めてだったか。日常でも活用できるスキルとはなんと頼もしいものだろうか。


「ま、マジかよ…………」


「わたし全然鍛えてないんだけど…………」


「知らん。気合いで乗り切れ!では行くぞ」


「「「「[加速]!!」」」」


4人揃って最初は走ることが出来たのだが、途中でリカがぶっ倒れそうになって休憩を挟んでいたら夜になってしまったことは言うまでもない―――――――――――――




















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