第2章

第6話「海」

※此方をご了承の上お読みください。

この話には災害の事について書かれています。不愉快に感じる方等いらっしゃいましたら、次の話からお読みください。(次の話の内容は、この話を読まずに読み進めることが出来るようになっておりますので、ご安心ください。)






翌日、私は学校から帰って直ぐにそらの散歩に出かけた。

今日も彩に部活体験に誘われるのかと思っていたが、何故か誘いには来なかった。


「彩、今日は行かなくていいの?部活体験」

「うん。なんか美海が楽しそうだから」

「え…?」


正直、優陽と話すのを楽しみにしている。優陽に聞きたいことが山程あり、早く放課後にならないかと心待ちにしていたのだ。

その事が顔に出てしまっていたのだろうか…

そう考えると、少し恥ずかしくなり腕に顔を埋めた。


軽い足取りで優陽がいつも居る場所に着くと、優陽は浜辺ではなく道路側にある消波ブロックの上に座っていた。

声をかけるようかを躊躇っていると、優陽が私に気が付き、先に声をかけてくれた。


「美海!そら!」


優陽は立ち上がり駆け寄ってくる。


「ひ、優陽早いね」

「うん、学校出るの早いからね」


笑いながら言った。確かに優陽は直ぐに学校を出てしまう。


「優陽は、何で帰ってるの?バス?電車?」

「ん?歩きだよ」

「え!?遠くない?」

「海見ながら歩いてるからすぐ着くよ」


頭に疑問が生まれた。


「そういえば、優陽はなんで海が好きなの?」


優陽は、少し考えてから答えた。


「うーん、隠してくれるからかな?」

「何を…?」

「じゃあ、美海。なんで灰になった遺骨を海に撒くんだと思う?」

「それは、ずっと海で見守っているよってことじゃないの?」

「それも勿論あると思う。でも、こんな意味だったらどうだろう。『俺は皆に忘れられたいんだ。お墓があったら誰かが俺を覚えているかもしれない。だから自分の存在を消したいんだ』って」

「確かに…あるかも知れない」

「海はなんでも隠せるんだ。お宝だって、魚だって、骨だって、ゴミだって。他にも沢山の物を隠している。

でも、海は優しいからたまに人間に知らせるんだ。台風とか、津波とか災害を起こしてね…

災害によって、人が亡くなってしまうこともある。でも、それ以上に動物や自然が失われているんだ。

例えば、シロクマは北極の氷が溶けてしまい住む場所が無くなり、野生のシロクマがどんどん減って来ている。

だから、海は何度も伝えるんだ。『自然を大切にして欲しい』『ゴミを捨てないで欲しい』って」

「うん…確かにそうだよね…」


私は何も返せなかった。本当の事だと思ったから。


「ごめんね、暗い話して…

でもね、そう思うんだ。だから僕は、隠して守ってくれている海が好きなんだ。いつもいつも感謝を伝える。ありがとうって」

「そうだね、ありがとう海」

「うん、ありがとう海」


二人で手を合わせ感謝を伝えた。


「そういえば、美海も『海』って漢字入ってるよね!」

「あ、うん…でも、美しくもないし海のように優しくもないよ」

「美海は十分優しいと思うよ」


そう言って、優陽は優しく私の頭にぽんっと手を乗せた。



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