第18話 凍夜ついに4番を打つ!

甲子園に来てから一週間以上が経った。碧陽はいよいよ準決勝までやってきた。

碧陽にとっては野球部創設以来初めての快挙で、学園では夏休みだが、他の

部活の生徒達が教室で甲子園を見るようになっている。


凍夜はホテル生活にも少し慣れたが、夜は必ず外に出る。もちろん、誰にも

気づかれずに動いている。

今日はいつもの公園じゃなく、女子アナの天音絵里に呼ばれて食事を

していた。今回は普通のファミレスだ。


「準決勝進出おめでとう」

「どうも。まぁこれぐらいは普通だからな」

「本当にあなたは簡単に成し遂げちゃうからすごいわ。普通はここまで来るのに

どれだけ大変な事か」

「大変なのは知らんが、俺に大変な事はない」

「でも、無茶はしないでね。絶対あなたを狙う人はいるんだから」

「誰が相手でも負けん」

「そうかもしれないけど。それと、長峰君って病院に通ってたりする?」

「通う?」

「ええ。とある病院でよくあなたを見るって情報があってね。あなたに

似た人なんていないと思うからもしかしてって思ったけど」

「あまり人の事は調べない方がいいぞ。知りすぎたがゆえに殺されるって

事はよくある事だからな」

「それは映画の中でしょ」

「いや、実際にある事だ。まぁさすがにあんたを消す事はしないがな。今の

俺なら」

「今の?」

「あんたにはいつか話すよ。今は甲子園の最中だからな。あと、誰にも言わないって

いうなら教えてやるよ。もし、この事を公表したらあんたは悪者になるからな」

「そ、そんなすごい秘密なの?」

「マイナスの方のな」

「マイナス?」


凍夜はそれ以上は言わなかった。一応食事をおごってくれてるのでそう言う事

があるという事までは教えた。それに、本当に今、この事が世間に知られたら

大事になるので、凍夜はまだ倒れるわけにはいかなかった。


なので準決勝前日は自分の部屋の病室に戻り、準決勝の当日の朝にまた

甲子園に向かう。試合は今日の最後なので時間はある。


そうして時間になり、ついに準決勝を迎える。ここまで凍夜は没収試合を

除いて全戦全勝、しかも、いまだにパーフェクトを継続中でスタンドでは

その完全試合の数を数えてる人までいた。


そんな中、碧陽ベンチでは驚く事が起きていた。それは、凍夜の打順を

洋子が動かしたのだ。しかも、今回は4番だ。


「4番ね」

「ええ。一番も驚く事だけど、もう慣れちゃったと思うからね。それに

やっぱりエースで4番は皆みたいと思ってるから」

「そういえば甲子園の定番だったな。でも、それだけか?あんたが俺を

4番にしたのは?」

「ま、元々の力は4番向きだしね。あとは、一番よりは打席が少ない

からね」

「まだ気にしてんのか?俺なら」

「凍夜君ダメ」

「まったく。先輩といい監督といい、ここに入ってよかったよ」


凍夜は冗談風に言ったが、本当に少しだけそう思っている自分もいた。


そうして時間になり、準決勝が始まった。当然、凍夜が一番だと誰もが

思ってたが、その掲示板を見て観客達は驚いた。4番の所に凍夜の

名前があったからだ。


そして、碧陽の一回裏の攻撃にその時が訪れた。前の三人がいきなり

ヒットを打ち、ノーアウト満塁という所でアナウンスで4番ピッチャー

長峰君と聞き、会場がわく。本当は誰もが見て見たかった事がここに

来て実現したからだ。もう誰もが凍夜ならどの打順でもなんでもできる

とわかっているのでこの4番は一番盛り上がる話題だった。


相手チームがマウンドに集まり、どうするか考えている。話がまとまり

プレイが再開し、相手投手がその一球を投げた。そのコースはアウト

コースの低目でしかも、変化球だ普通なら打つのも難しいが、凍夜は

当たり前の様にバットを振り、そして、ホームランにした。

そうして甲子園の公式で初めて凍夜は4番でのホームランを打った。

しかも、地区大会から今まで全ての打席でホームランも継続している。

さらにこのホームランは満塁でなのでより価値が増した。


それから試合は当然碧陽のペースになり、準決勝を7-0で勝ち

完全試合も継続した。


そうして凍夜達はついに決勝まで勝ち上がった。


その決勝を戦うのは明日のもう一つの準決勝で勝った方とだ。そこには

みなみのいる名城と今回初めて甲子園に来た学園だ。

夜、凍夜は公園にやってきた。今回はみなみに会う為だったがそこには

もう一人いた。


「ちゃんと買えたか?」

「あぁ長峰君」

「!?お前は碧陽の」


そこに居たのはどうやら名城の部員の様だ。みなみがそいつを紹介した。


「長峰君、この人はうちのキャプテンで4番を打ってる東条隼人とうじょうはやとよ」

「東条隼人だ。君の事は知っている。今世紀最大の怪物だの言われてる

からな。それと」

「それと」

「妹からも聞いていたが、本当に知り合いだったんだな」

「やっぱりこいつの兄か」

「まぁな。さて、ここで会ったのも何かの縁だ。お前の宣戦布告を

しておく。三日後、決勝で勝つのは俺達名城だ。そして夏大二連覇

を成し遂げる」

「ならそれを止めるのが俺の役目だが、先にお前らは明日の試合を

勝つ事だな。目の前の事を見てないようじゃ先になんていけないぞ」

「心配ない。しっかり対策はしている。もちろん油断もしない」

「そうか。じゃぁ決勝であんたを倒してやるよ」

「楽しみだな。行くぞみなみ」

「じゃぁ決勝でね凍夜君」


みなみは隼人に聞かれないぐらいの声で凍夜の言った。その名城は

隼人の活躍もあり、準決勝を見事勝ち上がり、甲子園夏の決勝戦が

碧陽対名城に決まった。

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