第14話 甲子園初勝利!走っただけで点を入れた凍夜

早朝、凍夜は一人ホテルを出て近くを歩いていた。少しして戻り、全員を起こす。

準備をして、球場に向かう。今から約二週間、最後まで勝ち続ければ

この甲子園で試合をする。どの学校もそれを見越してくるが、何が起こるか

わからないのが甲子園だ。


凍夜達は一日目の第一試合に登場する。なのでスタンドは満員だ。それも

今までにないぐらいに球場の外でも見たがるファン達がいる。


どの年でも注目選手はいるが今年の凍夜程世界中から注目される選手は

おそらくもう出てこない。なので野球の球団を持っている所は全て

凍夜を見に来ていた。


その凍夜は控室で待っている。他の部員達も初めての甲子園での試合に

緊張している。そこに洋子が話しかけて来た。


「皆、これからが本番だよ。楽しんでいきなさい」

「楽しめるかな」

「ああ、長峰が投げるから守備はいいかもしれないけど」

「打つ方でうまくできるか?」

「やっぱり一回は打ちたいよな。そうすれば甲子園の記録に残るし」


洋子に言われても緊張の方がまさっている。そこに凍夜が割り込む。


「最初からお前らにやらせてやろうか?俺は記録なんかどうでもいいからな」

「そんな事したら生きて帰れん」

「ああ。絶対ミスなんかできなよな。この雰囲気じゃ」


超満員なのはわかっているのでそれがプレッシャーにもなっていた。


「じゃぁ俺がお前らに魔法をかけてやる」

「ま、魔法?」


凍夜は清貴達に何かを言った。それで清貴達はやる気を出した。緊張は

しているが。そうして時間にいよいよ甲子園の第一試合が始まる。

スタンドでは碧陽の生徒達が応援をしている。当然、部員達の家族も

来ていたり、地区大会で戦った学校の奴らも来ていた。


その応援の中、碧陽とその相手が整列をし、あのサイレンが鳴り響く。


試合は全国放送される。いや、凍夜のおかげで他の国からもテレビ局が

来ていた。そうして試合が始まる。碧陽は後攻なので凍夜がマウンドに

向かう。それだけで球場がわく。そして、審判の合図で試合が始まった。


遙が構えるのはど真ん中だ。そう、見に来てる人達はそれを知っているので

それだけで拍手が起こる。

凍夜が振りかぶり、そして、体を捻り、いきなりトルネードの超速球を

投げた。今回はちゃんと遙や監督にも話しているので投げてもよかった。


そして、超速球が遙のミットに入る。打者はまったく動けない。そこに

スピードが表示され、出たスピードは170だった。たった一球で

凍夜は日本記録、そして世界記録を出した。元から出していたが、甲子園で

出したのは初めてなので一球で出した事になる。

テレビでアナウンサー達も驚き、どうしたらこんなスピードを出せるのかと

話していた。


凍夜は以前、フォームについて話していた事があり、体を捻り反動を

つける事で早くしていると話していた。もちろん、それだけではなく

バカみたいに鍛えたからというのもあった。

遙が凍夜にボールを返すが拍手が鳴りやまない。


それを凍夜は気にせず二球目を投げる。次は普通だが、それでも簡単に160

を出している。そうして一人目を三振に取り、その後も打たれる事なく

三者三振にした。


ベンチに戻り、帽子からメットに変える。そのメットをめぐみが

持ってきた。


「はい凍夜君」

「サンキュー先輩」

「凍夜君。一発キメてきてね」

「できるならな」


凍夜がバッターボックスに向かう。いつまでもやまない拍手。しかし

それを止めたのは相手のチームだった。

審判が合図をすると同時に相手の捕手が立ち上がり凍夜を歩かせる

作戦に出たのだ。

当然、それに客からブーイングが起こるが、相手も勝つ為にやる事なので

それを覚悟のうえでしたのだろう。


そして、凍夜はそれをわかっていた。だから、今回は何もせず相手の

思惑通り歩かせてもらい、一塁に向かった。


怒り続ける客達に凍夜がタイムを取り、まさかのスタンドに向かい

人差し指を上げて一点取ると言い、黙らせた。本来はしてはいけない

が、ブーイングがすごかったためそれを止めた凍夜に審判達は何も

言わず、むしろ感謝をした。


凍夜が一塁に戻り、試合が再開される。凍夜はリードを取り、そして

相手が投げたと同時に走った。凍夜が走塁するのは初めてだ。

しかもあっさりセーフになり、その速さに客達はブーイングから

歓声にかわった。


さらに、凍夜は三塁にも走り、成功する。その行動に客達は気づき

始めた。そう、凍夜が一点取ると言ったのは盗塁で点を取ると

言う事などではと思い始めた。しかし、三塁からホームに盗塁なんて

普通は無理だ。打者が打ったりバントしたりするなどをしてから

走るので相手は当然それを警戒する。


そして、凍夜はなんと三塁からのリードをギリギリまで出た。それに

相手投手が気づき、三塁に投げる。でも、その投げた球が三塁の

後ろにそれた。凍夜はそのまま走り、なんと一点を取った。

打者が何もせず点が入ったのも甲子園史上初の事だ。凍夜は相手が

暴投するのをわかったうえで三塁まで行ったのだ。


ホームラン以外でも客をわかせた凍夜。今回はいつもと違い狙って

やったので凍夜も成功して安心していた。


その後、相手チームは投手がくずれ、清貴や遙、他の部員達も全員が

ヒットを打った。点も6点ほど入り、いきなり大量リードをし凍夜は

そのまま投げた。そうして最終回までで行き、凍夜は甲子園初めての

舞台で完全試合を成立させた。しかも、記録尽くめの試合にもなった。


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