第7話 干し錦玉

 今度は和菓子、いきましょうか。「干し錦玉」。

 「錦玉かん」というのは簡単に言えば寒天ゼリーで、干し錦玉は文字通りそれを干したものです。「琥珀糖」とも呼びますね。


 ちょっと高級な和菓子屋さんや古都のお土産屋さんで、10センチ角くらいの小さな箱に入った半透明のカラフルな飴のようなものをみかけたことはありませんか?

 鮎やあやめなどの形のものもありますね。

 厚みが均一で切り口が垂直なら、たぶんそれが干し錦玉。

 昔はクチナシで色を染めていて、その透き通った黄色が琥珀に似ていたので、琥珀糖の名がついたようです。

 あ、でも最近宝石のようなランダムな形かつカラフルな干し錦玉もたくさん見るようになりましたね。「食べる宝石」なんて呼ばれて、ちょっとしたブームになっているようです。干し錦玉だけでレシピ本が出るまでに……。

 


 作り方は至ってシンプル。

 材料は、砂糖と砂糖と砂糖と砂糖と砂糖と砂糖と水と寒天です。


 【材料】

 寒天 棒寒天1本 or 糸寒天5g or 粉寒天4g

 砂糖 300g

 水  200ml


 色付けするなら、食用色粉少々。



 ふやかした寒天と水を鍋に入れ、寒天を煮溶かします。完全に溶けたらいったん火を止め、茶こしなどで濾して別の鍋に移します。

 そのあともう一度火にかけ、もーこれでもか! ってほど砂糖を入れます。

 ヘラでかき混ぜながら煮詰めていき、砂糖が完全に溶けたら灰汁を取ります。さらに煮詰めると、ヘラを持ち上げたとき鍋の液体が糸状に垂れるように。もしくはスプーンなどの先端を液につけ、引き上げたらビローンと糸を引くくらい。ここまできたら火から下ろします。

 それを適当な入れ物に流し込んで固めてます。私は100均バットにオーブンシートを敷いて流し込みましたが、サラダ油をクッキングペーパーに染み込ませて型に薄く塗るのもアリ。

 寒天なので常温でも固まりますが、そんなの待てない! なら粗熱が取れたら冷蔵庫に1時間以上ぶち込んでください。


 固まったら好きな形に切り分けて、薄くサラダ油を塗った網の上などで何度かひっくり返しながら、一週間くらい放置するだけ。ランダムな形にするなら、固まったものを手でちぎって乾燥ですね。


 あ、色付けの話を忘れてましたね。

 一色に色づけするなら少量の色粉を水で溶いて、火からおろした時点でその色液をさっさと混ぜます。

 何色も使ってグラデーションを楽しむなら、色液をいくつも用意して、それぞれを爪楊枝の先に。バットに流し込んだ液の好きな場所に爪楊枝の先を入れて振り広げる。これを熱いうちに好きなだけ繰り返します。

 広範囲ならスプーンやスポイトなどで色液をバットの液体に先に落として、菜箸などでかき混ぜて広げるのもいいかも。

 ま、とにかく色付けは液体が熱々のうち、固まり始める前に終わらせてください。寒天って固めている最中に揺り動かすと固まらなくなる性質があるので⋯⋯固まらなくなったら再加熱して、もう一度液体に戻せばOKではあるのですが、いろんな色を混在させた場合は凄まじい色に……。



 ね、簡単でしょ。



 小学生の頃、理科の実験でやりませんでした? 水に塩や砂糖やホウ酸を溶かしていくと、いずれ溶け切らなくなる(飽和)けれど、加熱すればそれ以上でも溶けちゃう。

 それを放置して温度が下がってくると、溶けていられなくなったものがまた現れて(再結晶)、核になるものがあるとその結晶が大きく育っていく。水が蒸発しても同じことが起こるというやつ。


 干し錦玉はまさにそれの応用で、温度の下降と乾燥により表面に薄い砂糖の層ができてサクッとシャリっと、中はその層に守られてプリッとした歯ごたえが楽しいお菓子です。

 シンプル故にごまかしのきかない、素材の良さを求められるものでもあります。

 これもやっぱり、寒天は糸寒天か棒寒天がおすすめ。これを作る場合は砂糖に雑味のないほうが良いので、グラニュー糖か白ザラ糖、もしくは氷砂糖がいいかな。我が家は水道水がそんなに美味しい地域ではないので、これを作るときは市販の美味しい水か、自分でんできた名水を使っています。


 作りたてのもの。まだ透明感と弾力たっぷりのプリプリです。

 試しに小さなかけらを食べてみたら、食感美味! ちょっと柔らかめの長野名物みすず飴(贈答用)のような食感でした♪ ま、味は砂糖ですけどね。


 表面に薄氷を思わせる砂糖の層ができたら、中に水分が集中するためか食感がだいぶ変化します。みすず飴(贈答用)のような全体的にしっかりとした固さではなく、

外側シャリっと中は瑞々しくプリッと柔らかゼリーの感触。これまた食感美味。


 表面に砂糖の層ができたら、常温でも1~2か月保存OKです。



 私がよく作っていた頃は、こんな感じで砂糖だけで味付けしていましたが、今は色液の代わりにかき氷シロップを使っている人も多いようですね。これなら香りづけもできるし、いいかも。ちなみに上記の量で全体に色付けするなら、かき氷シロップは小さじ半分くらいでいいようです。



 この干し錦玉が大好きな後輩さんに「今度酸味も入った味付きを作ってくださいよぉ!」とリクエストをされているのですが、下手なものを入れると砂糖の層ができなくなるので実験待ちをお願いしています。梅雨から夏は乾燥する前にカビる危険性が高いので、冬にやりたいなー。

 単に味付けするだけでいいなら、果汁入りピールを作って中に閉じ込めるのもひとつの手かな。それでOKが出れば簡単な話なのだけれど。

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